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最終更新日:2017.10.06 公開日:2017.10.06

次期モデル「N700S」開発中! 東海道新幹線の最新車両にディープにたっぷりと迫る!!

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JR東海が開発中の東海道・山陽新幹線用の次期モデル「N700S」の試験車両。先頭車両の形状は、新開発の「デュアル スプリーム ウィング形」。今回、車両開発工場での報道公開が行われた。

 2018年9月16日(日)に開催される、JR東海の入場無料イベント「浜松工場 新幹線なるほど発見デー」で、「N700S」の確認試験車が一般に初公開されます。この記事は2017年10月6日に公開しましたが、「N700S」の情報は2018年8月31日現在も変更がないことをJR東海に確認済みです。


 現在、東海道新幹線は東京~大阪間を2時間22分で結んでいる。それを実現しているのが、2007年7月にデビューした「N700系」の改良型である「N700A」だ。そして、フルモデルチェンジして2020年に営業運転を開始する次期モデルとして発表されたのが「N700S」である。

 「N700S」は徹底的な小型・軽量化を追求しているのが大きな特徴だ。2016年6月に試験車両の1編成16両が製作されることが発表され、現在は2018年3月の完成に向けて開発が進められている。

 「N700S」の名称は、東海道・山陽新幹線用として定着している「N700」の名称を踏襲し、そこに”最高の新幹線車両”を意味する「Supreme(最高の)」を意味する「S」がつけられている。

 ここでは、これまでに発表されている「N700S」の特徴や採用が決定している新技術についてお伝えする。

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JR有楽町駅付近を走行する現行車両の新幹線「N700A」。

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先頭車両の空力・環境性能をさらに向上させた!

先頭車両形状は新開発の「デュアル スプリーム ウィング形」

 新幹線の先頭車両の形状は空力特性と環境性能を求めて鼻先が延びた形状になってきたのだが、「N700S」ではその性能がさらに磨き上げられた。

 「N700S」用に新開発された先頭車両の形状は、双対の翼を広げたかのようなイメージにちなんで「デュアル スプリーム ウィング形」と呼ばれる。これにより、トンネル突入時の騒音を「N700A」以上に低減させた。

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左が「N700A」(エアロ ダブル ウィング形)で、右が「N700S」(デュアル スプリーム ウィング形)。シミュレーション技術を活用して形状を進化させたことで、トンネル突入時の騒音を低減した。なお、「N700S」は車両の平滑化や形状見直しも行われ、走行抵抗の低減も図る計画だ。なお、この「N700S」のイメージ図が描かれた時点で標識灯については検討中で描かれていない。

多彩な新幹線の編成に適用可能な「標準車両」を実現

 新幹線の1編成は最大で16両で構成されるが、「N700A」では中間車両の種類が意外と多い。変圧器ありとなしで大別され、さらに床下機器の関係でそれぞれが3種類ずつある。2種類の先頭車両と合わせて8種類もあったのだ。

 それを機器の小型軽量化を徹底することで、最適な車両床下の機器配置を実現し、中間車両は変圧器ありとなしそれぞれ1種類ずつとし、合計4種類に減らす計画だ。この「標準車両」化により16両編成以外の、12両編成や8両編成なども車体の基本設計まで変更することなく容易に対応できるようになる。

 さらには、その編成のしやすさは今後の新幹線の海外展開にも有利になるとしている。

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「従来」とあるのが、現行の「N700A」の車両構成。車両は8種類もあった。その下が「N700S」で実現する予定の「標準車両」。車両が4種類しかないので、短い編成も容易に構成できる。

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最新エレクトロニクスも駆使した小型軽量化!

台車は構造とモーターの改良で大幅な軽量化を実現

 台車は基本的な性能として、乗り心地、信頼性、省メンテナンス性が求められているが、新型台車ではそれらを高めつつ、同時に軽量化も達成。さらに、走行時の騒音の低減も実現したとする。

 軽量化を実現するべく工夫がまず図られたのが、台車のフレーム構造。下板の厚みを最適化し、それにより補強部材と溶接箇所を削減。その結果として信頼性の向上が実現し、また台車1台当たり約75kgの軽量化が成し遂げられたのである。

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左が台車フレームで、右はそのフレーム断面。フレーム断面は補強部材がなくなっているのがわかる。

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台車のイメージCG。緑色に塗られているのは、モーター。紫がモーターの駆動力を車輪に伝えるための歯車装置。オレンジ色は、乗り心地を向上させるための「フルアクティブ制振装置」。なお、「N700S」の台車には機能を向上させた「振動検知システム」(加速度センサーからの情報を活用する仕組み)が備えられる予定で、重大事故を防止し、また乗り心地の常時監視による品質の維持向上に資するとしている。

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iモーターの小型化でC素子とは? JR東海の取り組み

電磁石を6極化するなどしてモーターをより小型化

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モーターの電磁石の配置イメージ。左が「N700S」用に開発された6極モーターで、右が「N700A」など従来のもの。6極モーターは新幹線初となる。

 さらに軽量化は駆動用モーターでも徹底して追求された。新幹線ではこれまでモーターの電磁石が4極だったのだが、「SiC素子」を駆動システムに採用することで電磁石を小型化して6極に増やすことに成功。それによりモーターそのものも小型軽量化することができ、1台車当たり「N700A」と比較して約140kgの軽量化に結びついたのである。

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左が「N700A」に搭載されているもので、右が今回開発された新型モーター。小型化された電磁石が6極に配置され、モーターの本体自体も小型軽量化を達成した。

 ちなみに軽量化に関しては、バッテリーも改良点のひとつ。「N700A」は鉛蓄電池だが、「N700S」ではリチウムイオンバッテリーに変更される予定だ。同一容量の場合、重量で70%、体積で50%の削減ができるとしている。

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左が「N700A」に搭載されている鉛蓄電池。右が「N700S」に搭載予定のリチウムイオンバッテリー。なお、画像の縮尺は同一ではない。

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SiC素子とは? JR東海の取り組み

高速鉄道では新幹線が世界初! SiC素子の性能は?

 なお「SiC」とは「シリコンカーバイド(炭化ケイ素)」のことで、シリコン(Si)と炭素(C)が1対1で共有結合した化合物のことをいう。

 発熱量が少ない、熱伝導率が高い、耐熱性・耐酸化性に優れるなど、従来のシリコンよりも優れた半導体特性を持っている。そのため、SiCを用いた次世代素子はさまざまな機器の小型軽量化と省エネルギー性の向上を実現するとして、開発が本格化してきている。

 ちなみにJR東海では、2012年から新幹線の車両駆動用システムを小型軽量化するためのSiC素子の研究を行ってきた。

 2015年からはSiC素子を採用したを試作システムを試験車両に搭載して走行試験を開始し、現在に至る。高速鉄道の駆動システムにSiC素子を採用しての走行はこれが世界初だそうだ(国内の鉄道では、JR東日本が山手線の新型車両E235系で採用している)。

 また新幹線用駆動システムの開発では、モーターだけでなく変圧器やコンバータ・インバータ(CI)にもSiC素子を採用していることが2015年6月にJR東海から発表されている。

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CIの比較。左が2世代前の「N700系」のもので、右が「N700S」用に新開発されたCI。大幅な小型化が達成されているのがわかる。

 それらのシステムは、「N700系」と駆動システムと比較した場合、変圧器は1器当たり約100kg、CIは1器当たり約500kg、そしてモーターは1台当たり約50kgも軽量化できたという。1編成にすると、変圧器が4台、CIが14台、モーターが56台搭載されていることから、合計で約11tの軽量化を図れると計算になるという。

 またSiC素子により、約7%の消費電力の削減を見込んでいるとしている。

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駆動システムの概要。前ページで紹介したモーターと、上で紹介したCI、そして変圧器もSiC素子によって小型軽量化が可能となる。

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低騒音化と乗り心地の向上

低騒音化と高信頼性を実現した歯車を搭載

 鉄道ではさまざま部分で騒音が発生するわけだが、駆動システムではモーターの回転力を車輪に伝達するための歯車装置も要因のひとつ。

 そこで「N700S」では、より歯車同士のかみ合いが安定していることから走行時の騒音を低減できるヤマバ歯車を採用。新幹線の営業車としては初採用となる(従来の歯車はハスバ歯車だった)。

 さらに軸受の信頼性も向上し省メンテナンス性を実現したとしている。

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左が歯車装置のイメージ図。右側の歯車装置の仕組みを表した図は、左が今回のヤマバ歯車のもので、右が従来のハスバ歯車のもの。

乗り心地をさらに向上させる「フルアクティブ制振装置」

 台車と車体の間に設けられるのが、車体の揺れを大きく抑制する「フルアクティブ制振装置」だ。特にトンネル区間での制振は顕著で、揺れを半減させるという。

 「N700A」に使われている「セミアクティブダンパ」に小型モーターとポンプを取り付けた構造となっており、小型なのが特徴だ。なお、全車両に搭載するわけではなく、「N700S」ではグリーン車に搭載する予定。

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フルアクティブ制御装置の取り付け位置と、装置のイメージ図。

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「N700A」に採用されているセミアクティブ制御と、「N700S」で採用されるフルアクティブ制振制御の違い。

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パンタグラフも新型を開発!

新型パンタグラフは高集電性能と長寿命化と軽量化を実現!

 鉄道が高速化していくと、難しいのがパンタグラフからの集電。新幹線は最初の0系からさまざまな工夫をしてきたが、「N700S」でも新たな技術が取り入れられる。

 今回は、すり板がたわむようにすることで、架線の追従性能を高めることに成功した。また長寿命化することで省メンテナンス性も実現している。

 さらには、車両の天井との支持部を3本から2本にすることで、「N700A」と比較してパンタグラフ1台当たり約50kgの軽量化に成功している。

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「N700S」のパンタグラフ。たわみ式すり板部分の拡大が右上のイメージ図。下はたわみ式すり板が実際に架線と接触してたわんでいる状態をイメージしたもので、従来のものがその右。

安全性や利便性も向上!

 「N700S」は危機の状態監視機能を強化し、運転状況、機器の動作状況、乗り心地レベルなど、現状よりもさらに大量のデータを車両データ分析センターに送信し、車両の状態を詳細に分析し、正常の範囲内にあるかどうかを監視するという。

 また、車内防犯カメラのリアルタイム画像を、異常時に総合指令所に送信する仕組みも採用する予定で、すぐに総合指令所から乗務員の対応支援を行うようになる。

 そして利便性の面では、グリーン車だけでなく、普通車の全座席にもノートPCなどに利用できるACコンセントを設置する予定だ。

 試験車両1編成の完成は2018年3月。そして、営業開始は2020年。先頭車両形状は先代「N700A」を継承しながらも、フルモデルチェンジが行われる東海道新幹線の最新車両「N700S」が、鉄道ファンならずとも注目だ。

2017年10月6日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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