KDDI、自転車用ヘルメットの着用に関するアンケートを実施
たかが自転車とは甘く見ず、大人も子どももヘルメットを被ろう。
5月1日は「自転車ヘルメットの日」だ。
自転車用のヘルメットの着用は安全だとはわかっていても、大人はまず「面倒くさい」などの理由で大多数の人が着用していない。また未成年者の場合、近年は小学生位までなら着用する子が増えてきたが、中学生以降は大人と同じような理由で、着用率がどんどん下がっていってしまう。
しかし、自転車の死亡事故をみると、その大部分は頭部損傷が原因であり、もしヘルメットをかぶっていれば命が助かった可能性も相当に高いのである。
自転車死亡事故の部位では頭部損傷が6割強!
若干古いデータになるのだが、交通事故総合分析センター(ITARDA:イタルダ)が2012年11月に発行した「ITARDA インフォメーション Vol.97 特集 自転車事故 被害軽減にヘルメット」によれば、2009~2011年の自転車の死亡事故1981人の損傷種部位の割合を見てみると、なんと頭部が64%でダントツの1位。2位の胸部(13%)を大きく引き離しているのだ。
そして、あごひもを締めて事故時に吹き飛ばないようヘルメットを正しく着用すれば、死亡率が4分の1にまで低減するというデータも公表している。
自転車のヘルメット着用はどのぐらい意識されているのか?
こうした事実を受けて、「au自転車向けほけん」を取り扱うKDDIは、週に1日以上、日常的に自転車を利用する1000名(内561名が保護者)を対象に、「自転車のヘルメット着用に関する意識調査」をインターネットで実施し、その結果を4月27日に公表した。
ヘルメットを被っているか否か?
まずひとつめの質問が、本人がヘルメットを被っているか否か、そして子どもがいる方に関してはヘルメットを被らせているか否かの質問がなされた。回答は、画像1の通り。ヘルメット着用に関して、非常に意識が低いことが判明した。
画像1。大人の着用者は8%=1000人中の80人、子どもに被らせている親は25.5%=561人中の143人。着用の意識はとても低いといえ、街中で特に大人が着用しているのをなかなか見かけないという経験則的なものを裏打ちする結果となった。
子どもの年代別の着用率は?
保護者を対象に、子どもの年代別の着用率は、以下の通りの結果となった(高校・高専生までの子どもがいる保護者281人が対象)。年齢が上がれば上がるほど着用率が下がっている。
未就学児(6歳以下):着用率57.7%
小学生:48.9%
中学生:32.8%
高校生・高専生:18.2%
そして画像2にある通り、ITARDAインフォメーションVol.97によれば、年齢層別で自転車死傷者数を見た場合、高校生がトップで次に中学生であることを発表しており、それもこの年齢層がほかより抜きん出ている。
画像2。ITARDAインフォメーション Vol.97より抜粋。自転車運転中と歩行中の死傷者数を比較したグラフ。中高生の年代はまだクルマに乗れないため、もっぱら移動手段として自転車を利用することが多いことも理由のひとつとして考えられる。2007年から11年までの集計。
多くの方が多かれ少なかれ身に覚えがあるのではないかと思うが、この年頃は乱暴だったり危険だったりするような無謀な行為をあえてしたくなってしまうような時期。自転車で、交通ルールを守らないような、危険な運転をすることも多いだろう。死亡率が高くなるのも頷けるところで、だからこそこの年代の着用率をなんとかして上げることが重要なのである。
やはりヘルメットは着用の面倒さがネックに!
続いて、ヘルメットを着用していない920人に対してその理由を質問。そして、画像3の結果となった。
画像3。半数以上の52.8%が「着用が面倒」と回答。特に朝のような時間的に余裕のないときは、あごひもをしっかり締めて、などとやっている余裕は持ちにくい。
また年代別、そして性別で見た、ヘルメットを着用したくない理由では、男女問わずどの年代も総じて「着用が面倒」が高いのだが、中でも20代および60代女性が60%前後という高い結果となっている。これは、特に女性の場合は「ヘアースタイルが乱れるから」なども含まれるのではないかと思われる。
義務化されてないから? 子どもが嫌がるから?
そして最後は、子どもにヘルメットを着用させないと回答した74.5%に対し、その理由が訪ねられた。
なお、このアンケートでは「義務化されていないから」ということになっているが、道交法63条11において、保護者は子どもに対してヘルメットを着用させるよう努める必要がある。まだ罰則規定が設けられているわけではないが、いわゆる「努力義務」があり、厳密には「義務化されていない」というのは正しい表現ではない(鹿児島県では、条例で着用義務化されている)。
画像4。義務化はされているので、今後は罰則化がポイントとなる。罰則化されれば、少なくとも親としては小学校の中学年ぐらいまでなら、「お巡りさんに捕まっちゃうよ!」などと説得しやすく(?)なり、子どもが嫌がったとしても無理矢理にでも着用させられるはずだ。
着用率をアップさせる方法はあるのか?
今回のアンケートを通じて明らかになったことは、まずヘルメットの着用が大人も子どもも面倒と感じている点だ。着用がまったく面倒でないヘルメットを作るには革新的な技術が必要となりそうだが、少しでも着用の面倒さを取り除くというのは、今後のヘルメット開発の指針となるものと思われる。
同時に、「義務化されていないから」と捉えられていることもわかった。これは、先ほども述べたように厳密には保護者には努力が義務づけられているのだが、バイクやスクーターをヘルメットなしで乗れば減点、罰金となるような罰則規定がない、という意味でアンケートの回答者の多くが認識しているものと思われる。
そのバイクやスクーターも最初からヘルメット着用が義務づけられていたわけではない。1970~80年代に罰則規定が設けられたことで、今では誰もが着用は当たり前と認識しているわけで、それを考えれば自転車も罰則化すれば着用率をアップさせるきっかけとなることは間違いないだろう。
ただし、現実的に取り締まりなどを行えるかというと、国内には7000~8000万台の自転車があるといわれ、免許制度もなく、警察のマンパワーなども考えると簡単ではない。
ヘルメットを着用しやすい雰囲気の社会を
また、中高生がヘルメットを被りたがらない理由として、「見た目が格好悪い」ということがあることも予想される(大人もも見た目を気にする人はいるだろう)。それに、友人が誰も着用していなかったら、なかなか自分だけするのは難しいはずだ。よって、幼少時より学校などでヘルメットの着用が大事であることなどの啓蒙活動も必要となってくるはずだ。
ヘルメットの着用率を上げるには、着用することは格好の悪いことでも面倒なことでもなく、事故から自分を守るための当たり前のことという雰囲気を、社会に醸成していくことが大事なのではないだろうか。
2017年4月28日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)