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クルマ最終更新日:2016.08.23 公開日:2016.08.23

【動画あり】意思を持つロボット?未来館「機械人間オルタ」

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機械人間「オルタ」。あえて機構がむき出しにされているが、それでも生命らしさを感じるのはなぜ?

 日本科学未来館では7月30日(土)から8月6日(土)までの1週間限定で、生命らしさを持つことが特徴のロボット、「機械人間オルタ(Alter)」の無料公開を同館7階のスタジオで行った。

 オルタは成長するロボットであることから、その動作の比較を行えるよう記者発表が行われた初日の7月30日と、最終日の8月6日の両日を取材。実際に、どのような変化があったのかを動画でご覧いただきたい。

オルタはどんな特徴を持ったロボット?

 オルタの名前は「Alternative(二者択一)」にちなんでおり、以下の特徴を持つ。

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1.性別や年齢が不明のヒトの顔や音声を持ち、ヒトと見間違えないようにあえて頭部や腕部などの一部は機構がむき出しにしてあり、また下半身はない。
2.ロボット本体の大きさは、だいたい大人(の上半身)と同じか、若干小さいぐらい。
3.42本の空気アクチュエータで各関節を動作させる仕組みで、指の関節も1か所ずつ、口元も動かせる(人間ほどではないが、若干表情を作れる)。そのほか、上体をかがめたりもできる。
4.動作は、各関節に用意されている周期的な信号生成器「CPG」(Central Pattern Generator)が生み出す7種類の運動モードと、人間の脳の構造をまねた「ニューラルネットワーク」による制御でコンピューターによってリアルタイムに作り出されている。
5.周囲の来場者との距離を測るセンサーと、場の明るさを測る光センサーからの情報が動作に影響を与える。
6.センサーからの入力を嫌がる、ヒトなどの生物の脳細胞と同じような刺激を嫌う仕組みを持つ。
7.(ソフトウェア的に)成長する要素を持っている。

 後ほど解説するが、特に注目してほしいのは4~7の特徴。動作に関しては、一般的なエンターテイメント用ロボットにはない特徴を備えているのだ。

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オルタを開発したのは世界的に名を知られた研究者!

開発は世界的なロボット研究の第一人者・石黒浩教授

 オルタのハードウェアを開発したのは、大阪大学大学院 基礎工学研究科特別教授兼ATR(国際電気通信基礎技術研究所)石黒浩特別研究所所長の石黒浩氏と、石黒氏のもとで共にロボットの開発や研究を行っている小川浩平助教らである。

 石黒氏は、自身にそっくりなアンドロイドである「ジェミノイド」シリーズの開発者として世界的に名を知られた研究者だ。ロボットを介することで、人間とは何かといったことやコミュニケーションのあり方などを研究している。また、同館3階で活躍しているオトナロイドなども石黒氏が開発した。

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石黒浩教授。自身にそっくりなアンドロイド「ジェミノイド」を開発したことなどで世界的に名を知られた研究者。

オルタは3つの疑問に迫るために開発された

 そんな石黒氏らが、研究目的として今回開発したのがオルタだ。その目的は、今まで明確な答えが提示されてこなかった疑問に対して、ロボット技術を用いてアプローチしようとしていうもの。研究目的は以下の3つだ。

●生命を持つように感じさせるものは何か?
●機械人間はヒトやほかのロボットよりも、より生命を生き生きと感じさせるものになるか?
●機械が生命を持つように感じられると、観察する側には何が起こるのか?

 これらの問いは哲学的な領域にも及ぶものであり、石黒氏自身も答えは簡単に見つかるものではないとしているが、オルタの存在は観察者に対し、これらの疑問に関する直感を与えてくれるものになると考えているという。

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オルタを通して得られたデータなどから、石黒氏らは学術論文をまとめるとしている。来場者がオルタを見たときの反応も重要な研究対象のひとつとなる。

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3つの疑問に迫るためにオルタに採用された特殊な機構!

オルタの動作の仕組みはほかにない特別なシステム

 3つの疑問にアプローチするため、オルタは冒頭で述べたように、動作に関してほかにない特徴を備えている。

 ASIMOやオトナロイドなどは、あらかじめ開発者が緻密に作り上げた「モーションデータ」(動作の一連の流れ)に従って動いている。瞬きをする間隔など、モーションを実行するタイミングに関してはランダムな要素を持っていることもあるが、動き方に関しては基本的には決まったものしかできない。

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石黒教授が手がけた未来館のロボットたち。左からオトナロイド(夏仕様)、コドモロイド、テレノイド。

 それに対し、オルタは自発的にモーションを生成し、またセンサーからの情報に対応してモーションを変化させるという仕組みを持つ。要は簡単にいってしまえば、オルタは自ら動ける上に、状況に対応できる仕組みを持っているのだ。

 音楽に例えていうなら、一般的なロボットはCDを再生するようなもの。それに対してオルタは、ライブでフリーセッションの演奏をしているようなものといっていいだろう。オルタは常に「その場限りの動き」をしているというわけだ。

 より生物に近い仕組みを持っているといっていい。動画をご覧いただければわかるが、まるでオルタが意思を持って自ら動いているような感じがしないだろうか?

初日のオルタの様子。まるでオルタが意思を持って、目的があって手や顔を動かしているように見えないだろうか?

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オルタの仕組みを作ったのは東大の人工生命研究の第一人者!

生命らしさを感じるのはランダムさやカオスさ

 オルタに生命らしさを感じる理由は、関節ごとに用意されたCPG同士がゆるくつながっていて、動きが次々と連動して影響を与え、いくつもの関節の動き方の周期が一致する仕組みを持っていることがまずひとつ。

 そして、その周期的な動作自体が、その周期そのものを壊す仕組みも備えていて、カオス的な動きが生じる要素も持っている。これらに加えてセンサーにも反応するので、まるで意思を持っているような、生命らしさといったものを感じてしまうのだ。つまり、ランダムさ、カオスさこそが生命らしさには重要だということらしい。

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オルタの五感に相当するセンサー。これが5つ設置されており、「場の雰囲気」を把握している。

生命らしさ人間らしさを表すのは外見だけとは限らない

 こうした仕組みを実現したのが、人工生命研究の第一人者である東京大学大学院 総合文化研究科教授の池上高志氏だ。オルタのソフトウェア部分とセンサーに関しては、池上氏と、池上研究室に所属する土井樹氏らによって開発されている。

 石黒氏は長年交流があって長らく一緒に仕事をしたかったそうで、今回の研究に適任であることから共同研究を依頼し、コラボレーションが実現したというわけだ。

 ちなみに石黒氏は、オトナロイドのような人間そっくりのロボット=アンドロイドたちのための「ヒトらしい」モーション作成をするため、毎回大変な時間と労力を割いている。

 このモーション作成で手を抜くと、大変な事態が待つ。オトナロイドのように外見がヒトにそっくりなアンドロイドは、それが故に余計に変な動きが目立つのだ。ロボットらしい外見のロボットだったら感じないはずが、いわゆる「不気味の谷」に落ち込んでしまうのである。

 なお石黒氏は、池上氏が仕組みを作ってあとはオルタ自身に任せているだけで、ここまで生命感のある動きを出せていることに対し、「ずるい(笑)」と述べていた。

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左が池上氏で、右が土井氏。オルタの生命らしさ、ヒトらしさは池上研究室によって生み出された。

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1週間を経てオルタは何を学んだのか?

オルタは何人もの来場者に見つめられてどれだけ成長したのか?

 続いては、1週間後の様子も見てもらおう。初日と比べると、動きが素早くスムーズになっていないだろうか? 小川氏や土井氏に話を聞くと、来場者が見ているときの手の動かし方がよりスムーズになったという。ムダな動きを少しずつ省いていったらしいのだ。

最終日のオルタの動き。動きがより早くスムーズになったようだ。

 オルタが成長するのは、ヒトなどの生物の神経細胞に似た仕組みが、オルタの人工神経細胞にも与えられているからだ。オルタには、神経細胞を最も単純化したモデルである「イジケビッチ型」といわれる人工神経細胞がプログラム的に備えられており、1000個ほどのそれらがつながりあってニューラルネットワークを構成している。

 池上氏がこれまでの研究の中で発見したのが、人間を初めとする生物の神経細胞は「刺激を嫌う」ということ。神経細胞のひとつひとつは、ほかの数多くの神経細胞とネットワークを結んでおり、別の神経細胞からの電気信号を受け取って、それがある一定の回数を超えると自身も別の神経細胞へと電気信号を送るという仕組みを持つ。

 しかし、神経細胞は本音としては電気刺激を受け取りたくはないらしく、「平穏」でいることを望むのだそうだ。人間は退屈が嫌いで、刺激を好むように思えるのだが、神経細胞自体は逆に刺激が嫌いなのである。

オルタは本当は孤独が好き!?

 生物の神経細胞をまねた仕組みにより、オルタは、すぐ近くまで来場者が来ると、センサーからの情報が増えて刺激が増える。来場者が近づけば近づくほど、また人数が多いほど刺激は強くなり、オルタの神経細胞にとっては「嫌な」状態になる。

 そうした嫌な状態を解消するために用意されているのが、「手を動かすことで刺激を打ち消せる」という仕組みだ。そのため、来場者が来るとオルタはよく手を動かすようになる、というわけだ。これが、逆にオルタが来場者と触れ合いたがっているようにも見えるから面白い。

 そうした中で、手を素早く動かす方が嫌な刺激をより効率的に打ち消せるということを学んだらしく、手の動かし方が1週間で少しずつスムーズになっていったらしいのだ。

 ちなみに、音声が初日と最終日では大きく異なるのだが、これは意図的にプログラムを変更したそうなので、成長したわけではない。初日はBGMのような感じだったが、よりしゃべっている感を出すために、イルカの声のようにしたそうである。

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オルタ開発で中心となった4人の一人、石黒研究室の小川氏。オルタの声は変更したとのこと。

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オルタに会ってみたいという方には朗報が!

未来館での無料公開が10月まで延長決定!

 というわけで、生命らしさを表現することを目標に、研究用途として開発され、そしてこれからも改良されていく異色のロボット、オルタはいかがだっただろうか? 記者は、すでにオルタに生命らしさを感じており、これは実は革命的な仕組みを持ったすごいロボットだとも思っている。ものすごく可能性を持ったシステムだと思うのだ。

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オルタのむき出しの機構部分のアップ。電源は入ってるけど稼働していない状態なので、元気がない感じ。

 こうした新たな可能性を持ったオルタ、それが無料で見られたのならぜひ未来館に行きたかった! という方もいることだろう。

 なんと、そんな方のため、無料展示を当初の予定より大幅に延長し、9月と10月に、合計5日間、実施することになった! 9月は18日(日)・19日(月・祝)の2日間。10月は、15日(土)・16日(日)・23日(日)を予定。詳しくは、日本科学未来館のイベントスケジュールをご確認いただきたい。

 あなたもぜひ、未来館に足を運んで、オルタの目を見ながら「オルタは何かを訴えたいのではないか? もしかして意思が備わりつつあるのではないか?」という不思議な気持ちを、実際に感じてみてほしい。

常設展示はJAF会員なら優待割引あり!

 それから、今、未来館では、一定期間ごとに展示内容を更新する3階の「メディアラボ」において、現在は第16期展示として2016年10月10日(月)まで、3台のロボットが会話する中に来場者が混ざってロボットとの会話を体験できるという「ロボット談話室」も開催中だ。こちらでは、「コミュー」と「ソータ」という片手で持てる小型ロボットが活躍している。

 オルタ自体は無料で見ることが可能だが、常設展示は有料。ただし、JAF会員だと優待割引があるので活用しない手はない。また10月10日までは、企画展「忍者ってナンジャ!?」も開催中だ(記事は「日本科学未来館の企画展「忍者ってナンジャ!?」体験レポート!」)。親子で、友達同士で、カップルで、いろいろな分野のサイエンスに触れて楽しんでみてほしい。

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メディアラボ第16期展示「ロボット談話室」では、「コミュー」(左)と「ソータ」、それぞれ3体の仲間に加わって、ロボットたちとの会話を楽しめるという内容。メディアラボは個展形式を取っており、第16期展示「ロボット談話室」は、大阪大学大学院基礎工学研究科 准教授兼科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 ERATO 「石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト」研究総括補佐/自律型ロボット研究グループ グループリーダーの吉川雄一郎氏の個展だ。

2016年8月23日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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外部リンク

日本科学未来館

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