AIで競う自動運転のF1、roborace(ロボレース)情報
ロボレースを競う “ロボカー” 。写真は、今回の会見で発表されたほぼ最終形のマシン。超高性能コンピュータとAIを搭載する無人爆走レーシングカーだ。ちなみに、開発段階ではドライバーシートもあったのだという……
F1の電気自動車版ともいえる新時代の「フォーミュラE」の人気が上昇するなか、さらに未来を見据えたモータースポーツのチャンピオンシップが始まる。今度は、無人の完全自動運転車による国際選手権「ROBORACE(ロボレース)」だ。
ロボレースは、2016~17年に行われるフォーミュラEのシーズン3で、前座として始まる予定。フォーミュラEと同じ市街地コースで、10チーム10台の無人電気レーシングカー「Robocar(ロボカー)」が速さを競い合う。各チームのロボカーの車体は、駆動系、電気系、タイヤ類から自動運転用のセンサ類、コンピュータまで含めて完全に共通なワンメイクだ。各チームは、この共通の車体に独自に開発する自動運転(レース)用ソフトウェアを搭載し、チャンピオンを目指す。いわば、ソフトウェアのチャンピオンシップである。
8月3日、このロボレースを支える英キネティック社のファウンダ、CEOのデニス・スフェルドロフ氏らが来日し、都内で会見を行った。同社は先端技術系への投資を中心としたベンチャーキャピタルで、自動運転にも力を入れている。
同氏によれば、ロボレースの目的は、自動運転技術の開発加速と、その安全性を実証し、多くのユーザーに見てもらうことであり、将来の自動車が完全運転に向かうことは間違いないと信じているという。
共通車体のロボカーに搭載される自動運転用のセンサは、フロントにカメラを2つ、フロントにレーダ1つ、車体全周をカバーする赤外線センサのライダーと、やはり全周をカバーする超音波センサを備え、車車間通信、車とチーム間の通信機能も備える。自動運転車としてはフル装備状態といっていい。また搭載されるコンピュータの処理能力は24兆Flopsで、MacBook PRO150台分という。
レーシングカーとしての性能は、まだ発表できないということであったが、「めちゃくちゃ速い」、「従来のレーシングカーよりは速い」と明言し、相当な性能を持っているようだ。ただし、フォーミュラEのレースは市街地で行われるため、現実的な最高速度は限られそうである。また、意図的にライバル車にアタックするような走り方が認められるかは、まだ決まっていない。ただ同氏によると「個人的には自動運転の安全性を証明するためにも、アタックやディフェンドも取り入れた方がよいと考えている」という。
人工知能による自動運転レーシングカーとなると、人間ドライバーとの勝負も気になるところだが、今のところは考えていないという。「どう考えても人工知能によるロボカーの方が速く走れるのでフェアじゃない」というのが理由という。
現在、ロボレースには100チーム以上が参加希望を表明しているという。実際のレースに参加できないチームには、シミュレータ上でレースを行うオンライン・チャンピオンシップも準備されるらしい。
ドライバーがいないという前代未聞のモータースポーツ「ロボレース」が、どのような人気を呼ぶか、注目したい。
2016年8月3日(JAFメディアワークス IT Media部 鳥塚 俊洋)