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公式練習でいきなりトップタイムをもぎ取ってみせた野村勇斗選手。自身のスピードとHRC PRELUDE-GTの可能性を証明した1ラップが、次戦への期待を抱かせる結果となった。
Cars

公開日:2026.08.25

GWの富士3時間で見えた課題——リアルのリアル Vol.3<スーパーGT 2026 第2戦 富士スピードウェイ>

Astemo REAL RACING|2026 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJI GT 3Hours RACE GW SPECIAL

スーパーGTのゴールデンウィークといえば富士。岡山でスタートを切ったシリーズは、ラウンド2で早くもシーズン前半の大一番を迎える。新車を投入し、熟成を進めるAstemo REAL RACINGの戦いに着目する。

文=吉田拓生

写真=河野マルオ(maruo kono)

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トップタイム奪取からはじまった週末

ゴールデンウィーク(GW)の富士スピードウェイといえば、スーパーGTを象徴するおなじみの一戦。独特の熱気に包まれていた。初夏を思わせる強い陽射しの下、グランドスタンドを揺らす大歓声に包まれて、2026年スーパーGT第2戦は幕を開けた。

3時間という長丁場の決戦に挑む14台のGT500マシーンの中に、ひときわ目を引く鮮烈な赤と銀のカラーリングが混じっている。Astemo REAL RACING(アステモ・リアル・レーシング)が走らせる17号車、Astemo HRC PRELUDE-GTである。

リアに張り出した巨大なウイングが、GTマシーンの強大なグリップを想起させる。助手席側(右側)のドアの中央に映える排気管にも注目!
リアに張り出した巨大なウイングが、GTマシーンの強大なグリップを想起させる。助手席側(右側)のドアの中央に映える排気管にも注目!

今季、ホンダ陣営が満を持して投入したニューマシーン、HRC PRELUDE-GT。そのポテンシャルの片鱗は、公式練習の段階で確かに証明されていた。GT500ルーキーとしてチームに加入した野村勇斗選手が、GT500専有走行で並み居るベテラン勢を抑え、堂々のトップタイムを記録したのである。

ベテランの塚越広大選手と、勢いのあるルーキーの野村選手という組み合わせ。チームを率いる金石勝智監督の表情にも、ニューマシーンに対する手応えと、富士決戦への期待が滲み出ているように見えた。

コクピットに収まり、出走を待つ野村選手。GTマシーンはカーボン製のモノコックシェルを持っており、ドライバーは一般的なクルマよりも後ろの位置に座っている。
コクピットに収まり、出走を待つ野村選手。GTマシーンはカーボン製のモノコックシェルを持っており、ドライバーは一般的なクルマよりも後ろの位置に座っている。
予選の最中、大駅俊臣エンジニアと話し込むドライバー2人。予選Q1では野村選手が10位で通過し、Q2では塚越選手のアタックで9番手グリッドを確保した。
予選の最中、大駅俊臣エンジニアと話し込むドライバー2人。予選Q1では野村選手が10位で通過し、Q2では塚越選手のアタックで9番手グリッドを確保した。
ライバルであるGR Supra、Zを従えて予選のアタックラップに入るAstemo HRC PRELUDE-GT。アドバンテージがどこにあるのか、まだ模索している段階だ。

だが自動車レースの世界は、ひとつのセッションの好調さがそのまま結果に結びつくほど甘くはない。午後のノックアウト予選が始まる頃には空を厚い雲が覆い、同時に路面コンディションも刻一刻と変化していた。

予選Q1を担当した野村選手は、残り8分でのタイムアタック。タイヤのグリップがなかなか高まらないなか、なんとかタイムをまとめて10位でQ1を突破。一方、Q2を担当したエースドライバーの塚越選手もミスなくアタックを展開したが、やはり思ったよりもタイヤに熱が入らず、結果は9番手。

Astemo REAL RACINGは公式練習で見せた輝きを思えば、やや不完全燃焼とも言えるグリッドからのスタートとなってしまった。

 

<写真右>
ライバルであるGR Supra、Zを従えて予選のアタックラップに入るAstemo HRC PRELUDE-GT。アドバンテージがどこにあるのか、まだ模索している段階だ。

グリッドに着いたマシーンの前でポーズをとるAstemoアンバサダーのふたり。富士のストレートは圧巻の景色だ。
グリッドに着いたマシーンの前でポーズをとるAstemoアンバサダーのふたり。富士のストレートは圧巻の景色だ。

3時間の長丁場、忍耐のレース展開

5月4日、決勝。富士スピードウェイのスタンドを埋め尽くした観客が見守る中、午後1時30分にローリングスタートで3時間レースがはじまった。決勝に向けて若干セッティングをアジャストしたマシーンでスタートを担当するのは野村勇斗選手だった。クリーンなスタートを決めた赤いプレリュードは、激しい争いを繰り広げながら周回を重ねる。

スタート直後はライバルとなるGT500マシーンたちと抜きつ抜かれつのレースを展開した野村選手。8周目あたりからはGT300が周回遅れとして現れ、ペースの維持を難しくさせる。

富士スピードウェイの1コーナーは絶好のオーバーテイクポイントだが、実力が拮抗するスーパーGTでは、一つのコーナーだけで抜ききれない場合が多い。これは、アウトから並びかけた12号車が、次のコーナーでインを取ろうとしているところ。
富士スピードウェイの1コーナーは絶好のオーバーテイクポイントだが、実力が拮抗するスーパーGTでは、一つのコーナーだけで抜ききれない場合が多い。これは、アウトから並びかけた12号車が、次のコーナーでインを取ろうとしているところ。

トヨタGR Supra勢、そして着実に熟練度を上げてきた日産Z陣営に対し、デビュー2戦目となるHRC PRELUDE-GTは、ロングランではスピードのキレが今ひとつのように見える。セッティングの引き出しという点でまだ発展途上にあるということなのかもしれない。

富士のセクター3のようなテクニカルセクションでは力強いコーナリングを見せるものの、ダウンフォースを削ってストレートスピードを稼ぐセッティングとの兼ね合いでは、まだアドバンテージを見いだせていないのかもしれない。果敢に前を追った野村選手だったが、オーバーテイクを仕掛けるまでには至らなかったのである。

レースラップが30周を越え、ピットインがはじまったことで徐々に順位を上げはじめたAstemo HRC PRELUDE-GT。レース中に2回のピットインが義務付けられている今回のレースで、40周目に1回目のピットイン。だがドライバー交代はせず野村選手が引き続きドライブを続けた。

富士スピードウェイ! を象徴する霊峰富士山とGTマシーンの3ワイド。この最終コーナーからこのサーキットの名物、全長1.5km弱のストレートがはじまる。

ヘルメットを被り、準備が整った塚越選手の目の前にマシーンが滑り込んできたのは、3時間レースも残り1時間となった73周目だった。全車がピットを終え順位が安定した時、Astemo HRC PRELUDE-GTはスタート時と同じ9位を走っていた。

前を走るのは同じくHRC PRELUDE-GTの100号車だったが、ペースはほぼ同等であり、オーバーテイクまでには至らず9位でフィニッシュとなった。

それでも、この9位という結果を単なる2ポイント獲得と片付けるのは早計だろう。公式練習で野村選手が見せた一閃の速さは、HRC PRELUDE-GTというポテンシャルの塊が正しく研ぎ澄まされたとき、どれほどの速さを見せるのかをライバルに予感させた。

Astemo REAL RACINGのピットで出番を待つドライバーのヘルメット。右が野村選手、左が塚越選手のものだ。
Astemo REAL RACINGのピットで出番を待つドライバーのヘルメット。右が野村選手、左が塚越選手のものだ。

一方で、ロングランにおけるタイヤマネジメントや、富士特有の超高速域と低速セクションのセットアップバランスなど、クリアすべき明確な課題も見えてきた。今回のレースは、それらを大量のデータとして持ち帰る基調な機会にもなったのだ。

2026年のスーパーGT、そのシーズンはまだはじまったばかり。ストリートの面影を残すニューマシーンが、真の「レーサー」へと変貌を遂げるプロセスこそが、今季のスーパーGTにおける密かな楽しみなのかもしれない。

今回の戦いを糧にした彼らが、再び次戦の富士スピードウェイでどのような反撃を見せるのか。Astemo REAL RACINGの挑戦は、ここからさらに加速していく。

Information

サーキットの外でも、レースははじまっている。
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