王者の3連覇、そして新型車デビューのGT500
2026年のスーパーGT開幕戦「OKAYAMA GT 300km RACE」は、今季の勢力図を占ううえで非常に興味深いレースとなった。その舞台は開幕前のテストが開催された岡山国際サーキット。
決勝レースは例年どおり、路面温度や気温に対するタイヤマネジメントが勝敗を左右する難しい展開となったが、そのなかで一歩抜け出したのは、シリーズ連覇中の36号車(au TOM’S GR Supra)だった。
坪井翔と山下健太の王者コンビは予選こそGT500ルーキーの小林利徠斗が奮起した38号車(KeePer CERUMO GR Supra)にポールを譲ったが、決勝では王者らしい走りを見せた。
序盤から仕掛けるのではなく、タイヤを労わりながらレースを組み立て、ピット戦略を含めてトップに立つ盤石の内容。後半にはライバルとの差を着実に広げ、危なげなくチェッカーを受けた。
彼らはこれで開幕の岡山3年連続勝利。単なるラップタイムの速さだけではなく“勝ち方”を知っているチームの強さを改めて見せつけた格好といえるだろう。
2位には38号車が入ったが、中盤にトップを明け渡した小林利徠斗の落胆ぶりが印象的な表彰台となった。一方、日産勢では12号車(IMPUL Z)が3位、表彰台の一角をゲット。
新型PRELUDE-GTを実戦に初投入したホンダ勢の最高位は、16号車(ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT)だった。他のプレリュード勢も随所で光る走りを見せていたので、今後の熟成次第では十分に上位争いに絡んでくるはずだ。
開幕戦を見る限り、現状ではトップ10内に4台が入ったトヨタ勢が一歩リード。しかし日産Zの安定感、そして新型ホンダ勢の伸びしろを考えると、2026年シーズンのGT500は例年以上に面白いシーズンになりそうだ。
| SUPER GT 2026 Rd.1 OKAYAMA | |||||||
| GT500 CLASS – FINAL RESULT | |||||||
| Pos | No. | Car | Drivers | Laps | Gap | Tire | SW |
| 1 | 36 | au TOM’S GR Supra | 坪井翔 / 山下健太 | 82 | — | Bridgestone | — |
| 2 | 38 | KeePer CERUMO GR Supra | 大湯都史樹 / 小林利徠斗 | 82 | 19.602 | Bridgestone | — |
| 3 | 12 | TRS IMPUL with SDG Z | 平峰一貴 / ベルトラン・バゲット | 82 | 22.013 | Bridgestone | — |
| 4 | 14 | ENEOS X PRIME GR Supra | 福住仁嶺 / 大嶋和也 | 82 | 31.078 | Bridgestone | — |
| 5 | 39 | DENSO KOBELCO SARD GR Supra | 関口雄飛 / サッシャ・フェネストラズ | 82 | 31.537 | Bridgestone | — |
| 6 | 16 | #16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT | 野尻智紀 / 佐藤蓮 | 82 | 41.539 | Bridgestone | — |
| 7 | 100 | STANLEY HRC PRELUDE-GT | 山本尚貴 / 牧野任祐 | 82 | 57.626 | Bridgestone | — |
| 8 | 23 | MOTUL Niterra Z | 千代勝正 / 高星明誠 | 82 | 1’18.188 | Bridgestone | — |
| 9 | 24 | リアライズコーポレーション Z | 名取鉄平 / 三宅淳詞 | 82 | 1’22.315 | Bridgestone | — |
| 10 | 17 | Astemo HRC PRELUDE-GT | 塚越広大 / 野村勇斗 | 81 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 11 | 8 | #8 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT | 太田格之進 / 大津弘樹 | 81 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 12 | 19 | WedsSport BANDOH GR Supra | 国本雄資 / 阪口晴南 | 81 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 13 | 64 | Modulo HRC PRELUDE-GT | 大草りき / イゴール・オオムラ・フラガ | 81 | 1 Lap | Dunlop | — |
| 14 | 37 | Deloitte TOM’S GR Supra | 笹原右京 / ジュリアーノ・アレジ | 74 | 8 Laps | Bridgestone | — |
| Weather: Sunny/Cloudy / Track: Dry | |||||||
| Fastest Lap: No.38 T.Oyu 1’20.576 4/32Lap (165.444km/h) | |||||||
| CarNo.37 (9:43) ペナルティストップ5秒 (SpR22 4.1)「エンジン交換」) | |||||||
アストンマーティン独走のGT300
GT300クラスは、今年もスーパーGTらしい混戦模様のなかで幕を開けた。車種もタイヤメーカーも戦略も異なるマシーンが入り乱れるクラスだけに、単純な速さだけでは勝てない。誰もがそう思っていた矢先、圧倒的なスピードでレースを支配したのは777号車(D’station Vantage GT3)だった。
藤井誠暢とチャーリー・ファグのコンビは、新しいダンロップタイヤの性能にも助けられ予選ではポールポジションを獲得。決勝でも序盤から安定したラップを刻み、GT300の名物ともいえる、背後から迫るGT500勢のオーバーテイクを的確にさばきながらレースを進めた。
独走しているレースの最中、特に印象的だったのはGT500車両に周回遅れにされる場面での落ち着いた対応だった。クラッシュ等で荒れることが多いスーパーGTではミスなく走り切ること自体が難しいが、昨年も富士で1勝しているアストンマーティンとD’ステーション・レーシングには隙がなかった。
2位には2号車(HYPER WATER INGING GR86 GT)、3位には31号車(apr LC500h GT)が入り、トヨタ勢としても存在感を示した。
なかでも小山美姫のGT初表彰台は大きなトピックであり、GT300クラスに新たなスターが誕生した瞬間だった。一方、今シーズン4気筒から6気筒にエンジン変更した61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)は下位に沈んだ。
GT300は性能調整によって各車のパフォーマンスが接近しているぶん、わずかな判断ミスが順位を大きく左右する。だからこそ開幕戦で見えたD’ステーション陣営の完成度は際立っているように見えた。
今年のGT300クラスは例年以上に「誰が勝ってもおかしくない」シーズンになりそうだ。
| SUPER GT 2026 Rd.1 OKAYAMA | |||||||
| GT300 CLASS – FINAL RESULT | |||||||
| Pos | No. | Car | Drivers | Laps | Gap | Tire | SW |
| 1 | 777 | D’station Vantage GT3 | 藤井誠暢 / チャーリー・ファグ | 77 | — | Dunlop | — |
| 2 | 2 | HYPER WATER INGING GR86 GT | 堤優威 / 卜部和久 | 77 | 7.325 | Bridgestone | — |
| 3 | 31 | apr LC500h GT | 小高一斗 / 小山美姫 | 76 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 4 | 4 | グッドスマイル 初音ミク AMG | 谷口信輝 / 片岡龍也 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 5 | 65 | LEON PYRAMID AMG | 蒲生尚弥 / 菅波冬悟 | 76 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 6 | 88 | VENTENY Lamborghini GT3 | 小暮卓史 / ダニール・クビアト | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 7 | 96 | K-tunes RC F GT3 | 新田守男 / 高木真一 | 76 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 8 | 52 | Green Brave GR Supra GT | 吉田広樹 / 野中誠太 | 76 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 9 | 6 | UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI | 片山義章 / ニクラス・クルッテン | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 10 | 60 | Syntium LMcorsa LC500 GT | 吉本大樹 / 河野駿佑 | 76 | 1 Lap | Dunlop | — |
| 11 | 5 | マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 | 塩津佑介 / 荒尾創大 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 12 | 666 | seven x seven PORSCHE GT3R EVO | スヴェン・ミューラー / 藤波清斗 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 13 | 7 | CARGUY Ferrari 296 GT3 EVO | ザック・オサリバン / 伊東黎明 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 14 | 56 | リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ / 木村偉織 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 15 | 87 | OPEN HOUSE Lamborghini GT3 | 元嶋佑弥 / 松浦孝亮 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 16 | 32 | ENEOS X PRIME AMG GT3 | 石浦宏明 / 鈴木斗輝哉 | 76 | 1 Lap | Bridgestone | — |
| 17 | 61 | SUBARU BRZ R&D SPORT | 井口卓人 / 山内英輝 | 76 | 1 Lap | Dunlop | — |
| 18 | 18 | UPGARAGE AMG GT3 | 小林崇志 / 新原光太郎 | 76 | 1 Lap | Yokohama | — |
| 19 | 11 | GAINER TANAX Z | 富田竜一郎 / 大木一輝 | 76 | 1 Lap | Dunlop | — |
| 20 | 45 | PONOS FERRARI 296 EVO | ケイ・コッツォリーノ / 篠原拓朗 | 75 | 2 Laps | Yokohama | — |
| 21 | 26 | ANEST IWATA GAINER Z | 安田裕信 / リ・ジョンウ | 75 | 2 Laps | Yokohama | — |
| 22 | 30 | apr GR86 GT | 永井宏明 / 平良響 | 75 | 2 Laps | Yokohama | — |
| 23 | 9 | PACIFIC ウマ娘 NAC BMW | 冨林勇佑 / 藤原優汰 | 75 | 2 Laps | Michelin | — |
| 24 | 62 | HELM MOTORSPORTS GT-R | 平木湧也 / 平木玲次 | 75 | 2 Laps | Yokohama | — |
| 25 | 22 | アールキューズ AMG GT3 | 和田久 / 加納政樹 | 75 | 2 Laps | Yokohama | — |
| 26 | 360 | RUNUP × SOL GT-R | 荒川麟 / 金丸ユウ | 74 | 3 Laps | Yokohama | — |
| 27 | 25 | HOPPY Schatz GR Supra GT | 松井孝允 / 洞地遼大 | 74 | 3 Laps | Yokohama | — |
| 28 | 20 | シェイドレーシング RC F GT3 | 平中克幸 / 清水英志郎 | 74 | 3 Laps | Michelin | — |
| 29 | 48 | 健康ケーズフロンティアWMニルズGT-R | 井田太陽 / ジェームス・プル | 73 | 4 Laps | Yokohama | — |
| Weather: Sunny/Cloudy / Track: Dry | |||||||
| Fastest Lap: No.777 T.Fujii 1’27.157 2/29Lap (152.952km/h) | |||||||
| 黒白旗提示:CarNo.45 Kei Cozzolino (13:38) (SpR13 1.「危険なドライブ行為」) | |||||||
| 黒白旗提示:CarNo.30 Hiroaki Nagai (13:50) (SpR13 1.「危険なドライブ行為」) | |||||||
| 黒白旗提示:CarNo.360 (15:03) (SpR18 1.「走路外走行」) | |||||||
| CarNo.48 James Pull (13:16) ペナルティストップ60秒 (SpR32 5.「スタート手順違反(ピット出口赤信号無視)」) | |||||||
| CarNo.52 Seita Nonaka (13:41) ドライブスルーペナルティ (SpR32 17.「スタート手順違反」) | |||||||
| CarNo.56 Iori Kimura (14:06) ドライブスルーペナルティ (SpR13 1.「危険なドライブ行為」) | |||||||
最終局面を迎えるタイヤ戦争に注目
国内3メーカーが揃うGT500と、世界中の様々なマシーンが鎬を削るGT300。参戦車両のバリエーションの多さこそ、スーパーGTの人気を支える大きな魅力だが、車種以上に開発が進められ、覇を競い合っているのが4メーカーが顔を揃えるタイヤの分野だ。
ヨコハマ、ブリヂストン、ダンロップ、そしてミシュランという世界中のモータースポーツで活躍する4メーカーがスーパーGTに参戦している。これは昨今のモータースポーツでは非常に珍しいことだった。というのも各タイヤメーカーが独自に様々なパフォーマンスのタイヤを開発すれば、それだけコストが掛かるわけで。そこで世界的にもモータースポーツの世界ではタイヤのワンメイク化の動きが加速しているのである。
そしてついにスーパーGTでも来年、2027シーズンからはタイヤのワンメイク化が発表されている。ということは4メーカーが熾烈な戦いを繰り広げるのは今シーズンが最後。となれば有終の美を飾りたい! とどのメーカーも思っているわけなので、今シーズンは過去最高にタイヤ戦争が盛り上がるシーズンと言われているのである。
スーパーGTのタイヤで難しいのは、持ち込みのセット数が限られていること。これを事前に決定しなければならないので、レース当日の天候や路面温度を予測し、的確なタイヤをチョイスしておく必要がある。これはちょっとした“賭け”でもあるのだ。
実際に今回GT300で勝利した777号車、D’ステーション・レーシングのスーパーバイザー、田中哲也さんもいの一番に「今回はダンロップさんが本当にいいタイヤを作ってくれました!」とコメントしていた。
レース展開やトップ争いと同じかそれ以上に、今シーズンはタイヤ戦争最後の年として、タイヤメーカーの争いにも注目してほしい。
サーキットの外でも、レースははじまっている。
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