復帰1年目のTOYOTA GAZOO Racing「ヤリスWRC(2017)」
全コースが雪と氷に覆われたラリー・スウェーデンを駆け抜ける「ヤリスWRC」。近年は温暖化の影響で雪の量が減ってきているとされ、雪が少ない年もある。そのため、同ラリーのみで使えるテクニック、コース脇のスノーバンク(雪山)を使ったマシンコントロールなどを拝見しにくくなってきている。
2月9日から12日まで行われた、FIA世界ラリー選手権(WRC)の第2戦ラリー・スウェーデンにおいて、TOYOTA GAZOO Racingの「ヤリスWRC」10号車を駆るヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ組が早くも優勝。
18年ぶりに復帰した2017シーズン第1戦ラリー・モンテカルロでは、ラトバラ/アンティラ組が2位に入って幸先のいいスタートとなったが、続く第2戦でトヨタは早くも優勝という結果を出した形だ。ラトバラもドライバーズランキングのトップに躍り出た。
当記事のまず1~2ページ目では、雪と氷に覆われたWRC唯一のオールスノーラリーのコースを駆け抜ける勇姿を紹介。そして3~4ページ目では1月13日から15日まで開催された東京オートサロン2017(幕張メッセ)で撮影してきたヤリスWRCの姿をお届けする。
なお、ヤリスWRCのスペックや、TOYOTA GAZOO Racingのチーム体制などは、『トヨタ、18年振りにWRC復帰! シェイプアップした「ヤリスWRC」とドライバーも発表!!』をご覧いただきたい。
ジャンピングスポットで宙を駆けるヤリスWRC。シャシー下面がフラットになっているのがわかる。ラリー・スウェーデンで最も有名なジャンピングスポットは「コリンズ・クレスト」。
ラリーカーのジャンプはラリー観戦の魅力のひとつ。コリンズ・クレストは、かつてそこで豪快なジャンプを見せて観客を沸かせまくっていた、1995年の王者コリン・マクレーにちなんだもの。2007年に自ら操縦するヘリで墜落死したため(享年39歳)、マクレーの名前を忘れないようにと、翌08年から同スポットで最も飛距離を出した選手に、「コリンズ・クレスト賞」が贈られるようになった。現在は、16年に記録したアイビン・ブリニルドセン(フォード「フィエスタR5」で記録)の45mが最長。17年は、フォード「フィエスタWRC」に乗るマッズ・オストベルグが44m跳んだが、惜しくも記録更新とはならなかった。
TOYOTA GAZOO Racingのドライバーもコ・ドライバーも全員フィンランド出身で、雪道走行を得意とする。なお、ラトバラは12、14シーズンにもラリー・スウェーデンにも勝利しており、今、最もスノー・ラリーで速いドライバーのひとりといっていい。ちなみにラリー・スウェーデンは北欧出身ドライバーの独壇場といっていい状況。60年の歴史において北欧人以外では、2004年のフランス人のセバスチャン・ローブ(WRC9年連続王者)、13、15、16年の同じくフランス人のセバスチャン・オジェ(13~16年WRC王者)が勝ったのみ。
ラリー・スウェーデンは、96~99年の4年連続王座に輝いた、TOYOTA GAZOO Racingチーム代表のトミ・マキネンも得意としたコース。マキネンもフィンランド出身でスノー・ラリーを得意とし、96年、98年、99年に勝利を挙げている。
表彰台で勝利の美酒に酔う、ラトバラとアンティラ。復帰第2戦でトヨタは早くも優勝。
東京オートサロン2017で展示されたヤリスWRC
TAS17のトヨタ/レクサスブースで展示されていたヤリスWRC。
ヤリスWRCを正面から。
ヤリスWRCを側面から。
ヤリスWRCを後方から。F1のリアウィングとはまた違った形状だし、車体に対するサイズも大きめ。
ヤリスWRCのFタイヤを中心にフロントセクションを横から。タイヤはミシュランを装着。
ヤリスWRCのドアミラーを後方から。空力を考慮したフォルムに注目。
ヤリスWRCのテールセクション。車体下面の空気の流れを逃がすためのディフューザーの跳ね上げ処理などは、F1と同じ発想。空気が極力安定して速く流れるよう、車体下面をフラットにしてあり、ダウンフォースを発生させる。この後部の跳ね上げは、車体下面を流れる空気をより速く逃がすため。フィンはもちろん流れる空気の整流を狙ったもの。
ヤリスWRCのリアウィング。整流効果を狙ってフィンが5枚立っている。リアウィングの形状は、画像が小さいためにわかりにくいかも知れないが、ラリー・スウェーデンのものとは異なる。もちろん、コースの特性に合わせて最適な形状のものを選んだりセッティングしたりもするし、1戦ごとに進化もするため。リアウィングはわかりやすいので、ラリーごとに比べてみるのも面白いはずだ。
2017年2月14日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)