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クルマ最終更新日:2016.06.24 公開日:2016.06.24

トヨタのラリーカーがMEGA WEBに集結!

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画像1。1957年の「トヨペット クラウン RSD」から最新の「ヤリス WRC テストカー」までラリーマシンが集結。

 トヨタが運営する、クルマの無料テーマパーク「MEGA WEB」。同施設では、トヨタ博物館と共催で、特別企画展「トヨタ WRC参戦の系譜~2017年新たな挑戦へ~」を6月24日から9月4日まで開催する(画像1)。展示会場は、ヒストリックカーや旧車のレストアと展示を目的とする「ヒストリーガレージ」の2階だ。

 トヨタは、1957年に日本で初めて海外の本格的なモータースポーツに挑んだメーカーであり、60年もの長い歴史がある。その記念すべき最初の大会が、1万7000kmを19日間で走り抜けるという、当時、世界で最も過酷といわれた豪州一周ラリー(モービルガス・ラリー)の第5回であった。トヨタとラリーのつきあいはかくも長いのだ。

 その後、73年から99年までは世界ラリー選手権(WRC)に参戦。通算で43勝を挙げ、90年代にはドライバーズ王座4回、マニファクチャラーズ王座3回を獲得している。そんなトヨタが長い期間を経て、2017年から再びWRCに参戦することを表明。今回のイベントは、そんなトヨタの長いラリーの歴史を振り返り、再挑戦を応援しようというものである。

 今回の展示車両は9台。初展示や、以前は常設展示されていたが久しぶりに帰ってきた車両がほとんど。モータースポーツのイベント以外では、首都圏で9台ものラリーカーが一定期間展示されることはそうそうないので、ラリーファン、モータースポーツファンにとっては貴重なイベントである。それでは、順を追って年代別に今回の展示車両を紹介していこう。

トヨタのモータースポーツ最初の1台! 「トヨペット クラウン RSD」

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画像2。1万7000kmを19日間で走破した「トヨペット クラウン RSD」のレプリカ車。

 まずは、第5回・豪州一周ラリーに挑んだ「トヨペット クラウン RSD」から(画像2)。トヨペット クラウン デラックスとも呼ばれる同車は、102台が参加した同ラリーにおいて、完走車52台中の47位でゴール。半数以上がリタイアする中、日本車の性能を世界に示すことになったのである。

 ドライバーは近藤幸次郎(こんどう・こうじろう)と神之村邦夫(かみのむら・くにお)。コ・ドライバーは、リンゼイ・ヘドリー。展示車両はさすがに実車ではなくてレプリカだが、走行可能で、エンジンもご覧の通り(画像3)。この1台のみ準常設的に展示されており、ヒストリーガレージ2階の奥にある。

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画像3。「トヨペット クラウン RSD」はエンジンルーム内も再現されており、実際に走行も可能。

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続いては幻の1台が登場!

時代に翻弄されて幻の1台となった「MR2(222D)」

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画像4。MR2らしさがサイドに感じられるが、フロント部分は趣がかなり異なる「MR2(222D)」。

 続いては、今回の目玉といってもいい、トヨタの幻のWRCカーである「MR2(222D)」(画像4・5)。元々は、WRCにおいて1983年からスタートしたグループB規定車両での戦いで、年間王座の獲得を目標にして開発がスタート。ライバルがミッドシップレイアウトや4WDであったことから、ベース車として同じレイアウトの「MR2」が採用され、4WD化するなど、ラリーマシンとして戦闘力の強化が進められた。

 正式な開発は84年からだが、85年になって、事故が多いなどの理由からグループBに替わるグループSという新構想が発表されてしまう。MR2 222DはグループS仕様への改造が行われたのだが、結局、そのグループSも安全性の問題や、ベース車両の製造によるメーカーへの負担問題などから立ち消えに。最終的にWRCはグループA規定車両での実施となり、MR2 222Dは日の目を見ることがなくなってしまった。時代に翻弄された1台といっていいだろう。

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画像5。ミッドシップレイアウトなので、エンジン周りはこのようにして作業を行う。

サファリラリー3連覇!「セリカ ツインカムターボ(TA64)」

 MR2 222Dが開発される前のトヨタのWRCグループB用車両が、「セリカ ツインカムターボ(TA64)」だ(画像6)。並み居る4WD車を相手に奮戦し、主に耐久系のラリーで活躍。当時、最も過酷と呼ばれ、世界3大ラリーの一つに数えられたサファリラリーで84~86年に3連覇を達成した。この車両は85年の同ラリーの優勝車で、ドライバーはユハ・カンクネン。コ・ドラはフレッド・ギャラガー。

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画像6。「セリカ ツインカムターボ(TA64)」。トヨタのグルーブBラリーカー。

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トヨタ黄金期の90年代のマシンを紹介!

トヨタ初のドライバーズ王座を獲得! 「セリカ GT-Four(ST165)」

 次は、WRCにおいて、87年から始まったグループA車両規定に合わせて開発された「セリカ GT-Four(ST165)」。トヨタ初のフルタイム4WDマシンだ。同車は、90年にはカルロス・サインツの手によって日本車として初のドライバーズタイトルを獲得した。展示車両は、90年の第3戦サファリラリーの優勝車で、ドライバーが故ビヨン(ビョルン)・ワルデガルド、コ・ドラがフレッド・ギャラガーのものだ。

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画像7。トヨタ初のフルタイム4WDマシンである「セリカ GT-Four(ST165)」。

2年連続ダブルタイトルなどWRCを席巻!
「セリカ GT-Four(ST185)」

 そして、名車「セリカ GT-Four(ST185)」。ST165の後継として92年から参戦し、同年はサインツが2度目の年間王座を、93年、94年は2年連続でマニファクチャラーズとドライバーズ(93年がカンクネン、94年がディディエ・オリオール)のダブルタイトルを獲得と、WRCの歴史にその名を残した。展示車両は1993年の第10戦オーストラリアラリー優勝車。ドライバーはカンクネン、コ・ドラはニッキー・グリスト。

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画像8。トヨタのWRCでの黄金期をなした1台。人気を博したレースゲーム「セガラリー」にも登場。

藤本吉郎のサファリ優勝! 「セリカ GT-Four(ST185サファリ仕様)」

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画像9。サファリラリーは耐久性がより求められるので、独特の改造が施される。

 続いても同じセリカ GT-Four(ST185)だが、こちらは95年のサファリラリーにおいて、藤本吉郎(ふじもと・よしお)が日本人で初めて優勝するという快挙を成し遂げた際のものだ(なお、この年はWRCの1戦としては行われていない)。そのときのコ・ドラはアーネ・ハーツ。

 ルーフまで伸びたシュノーケルやフロント・バンパーを守るアニマルガードなど、同ラリー独特の改造が施されているのがわかる。セリカは同ラリーに強く、TA64も3連覇しているが、GT-Fourは4連覇を達成した。なお、セリカとしては通算8度も優勝している。

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画像10。このサファリラリー仕様の右側面はへこみ方が激しく、激戦の跡が生々しい。

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90年代半ばから最新車両まで!

名車の後を継ぐも… 「セリカ GT-Four(ST205)」

 ST185の後継として94年にデビューしたのが、「セリカ GT-Four(ST205)」。ST185ほど好成績は残せなかった上に、空気の吸入量を調整するリストリクターの違反により95年の全ポイントが剥奪され、翌96年は参戦停止という厳しい裁定が下されてしまった「曰く付き」ともいえるマシンである。ワークスマシンとしてのセリカのラリーカーは、このST205が最後となった。展示車両は、95年コルシカラリー優勝時のレプリカ車。ドライバーはオリオール、コ・ドラはデニス・ジロウデ。

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画像11。名車ST185の後を受けて活躍が期待されたが、コルシカラリーの1勝止まりとなった。

3度目のマニファクチャラーズ王座! 「カローラ WRカー(プロトタイプ)」

 97年にWRCに復帰した際に、セリカの後を受けてトヨタがベース車としたのが、ヨーロッパ向けの「カローラ」だ。同年から「WRカー」規定が設けられ、それに基づいて開発された4WDカーがこの「カローラ WR-Car」。通算4勝をマークし、99年にはマニファクチャラーズ王座をトヨタにもたらした。そしてトヨタはF1への参戦のため、その年をもってWRCを撤退したのである。展示車両は97年時点のプロトタイプだが、オリオールとジロウデの名を見て取ることが可能だ。

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画像12。参戦最終年の99年にはマニファクチャラーズ王座を獲得して有終の美を飾った。

2017年の再挑戦に向けて開発中! 「ヤリス WRC テストカー」

 トヨタはF1撤退後も世界耐久選手権(WEC)に参戦しており、長らく遠ざかっていたが、2015年にWRCに再挑戦することを発表。そして現在、2017年からの参戦に向け、「ヤリス」(日本名「ヴィッツ」)をベースにした4WDマシンを開発中だ。もうすぐ世界のラリーで活躍することになるであろう、1台である。なお、この1台だけは展示の期間が限られており、6月24日(金)から同月28日(火)、7月6日(水)から8月23日(火)となる。

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画像13。コンパクトカー「ヤリス」ベースでの4WDカーでの再参戦を目指すトヨタ。

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モデルカーや詳細年表も展示!

そのほかのトヨタのラリーカーもモデルカーで集結

 以上が展示車両だが、トヨタがこれまで走らせてきたラリーマシンは実際にはまだまだある。そこで、We are Rally modelers Community(WRC)の協力を得て展示されているのが、数々のモデルカーたちだ(画像14)。トヨタのラリーカーだけでなく、ライバル車たちも併せて展示されており、70年代から現代までの、マシンのデザインの変遷を見て取ることも可能だ。

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画像14。73年のRACラリーに出走した「セリカ 2000GT(TA22)」。

 そのほか、トヨタのラリーへの挑戦をまとめた詳細な年表(画像15)もまとめられており、資料性も高い。さらに優勝トロフィーの展示や、貴重な映像も用意されているという具合だ。

 MEGA WEBは、1993年3月9日のオープンから累計で来館者1億人を突破することが、もうすぐと見込まれている。1億人目になるとプレゼントをもらえるということで、あなたも、この夏はぜひヒストリーガレージにラリーカーを見に行き、そして1億人目も狙ってみてはいかがだろうか!

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画像15。画面左の手前から右側の奥の方まで年表がずらっと並んでいる。資料性が高い。

2016年6月24日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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