2018年10月30日 09:30 掲載

ニュース・プラス スペインの自動車プレス部品メーカー大手のゲスタンプ、日本初上陸! 国内メーカーへのハイテン素材の供給を加速


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トラック用の入口。右手奥の建物が事務所棟で、左が工場。工場の手前には同規模の工場を建設可能な土地があり、生産力を増加させることも視野に入れているのがうかがえる。画像提供:ゲスタンプ

 スペインのゲスタンプは、基本フレームからドアなどの外装部品まで、クルマのさまざまな金属パーツを製造している自動車プレス部品メーカー。世界22か国に108か所の生産拠点と、8か国に13か所のR&Dセンターを展開し、4万1000人の従業員を擁するグローバル企業である(2017年の売り上げは1兆631億303万円を計上)。ゲスタンプは10月25日、22か国めとなる日本に、新規工場「ゲスタンプ・ホットスタンピング・ジャパン松阪工場」を開設したことを発表した。所在地は三重県松阪市。

 同工場には約50億円以上の初期投資が行われ、2018年末までに約60名の従業員を雇用する予定。新規プロジェクトが立ち上がった場合は、工場を拡張させて同時に人員の増強を図っていく予定だという。

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工場全景のイメージ図。上の画像のトラック入り口は、中央やや左下のゲート部分。右の小さい建物が管理棟で、左の大きい建物が工場だ。画像提供:ゲスタンプ

工場の中は巨大なホットスタンピング用の設備が!

 工場の機器には、ゲスタンプグループの機械設備メーカーであるロレイ・ゲスタンプが開発した1200トンの中規模ホットスタンピング(※1)・ラインが配備されている。またレーザー切断セル(※2)およびショットブラスト装置(※3)なども導入されており、フルサービスのホットスタンピング能力を供給できるとしている。

※1 ホットスタンピング:熱間プレスとも呼ばれる、ハイテン素材(高張力鋼板)の加工に適した技術。詳細は後述
※2 レーザーによって切断や加工などを行う装置
※3 金属板などの表面を研磨するのに使われる装置で、サンドブラストもその一種。ショットブラストでは、吹き付けるのが砂ではなく鉄粉などになる

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工場内の設備の一部。設備も床もみな真新しい。画像提供:ゲスタンプ

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ホットスタンピング・ライン。これでも中規模。画像提供:ゲスタンプ

ホットスタンピングとはどのようなプレス加工技術?

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工場内に展示されたクルマのオブジェ。着色部分のフレームなどがハイテン素材(高張力鋼板)。部位によって必要な強度が異なるため、同じハイテン素材といっても、さまざまな引っ張り強度のものがあり、色が変えられている。画像提供:ゲスタンプ

 現在のクルマは衝突安全性をアップさせるため、キャビンを構成するフレームには、乗員を保護するための引っ張り強度の高いハイテン素材(高張力鋼板 ※4)が採用される率が高まっている。ハイテン素材は、従来の冷えた状態でプレス加工する「冷間プレス」だと、金型から外された時にプレス加工した際に発生した応力が解放され、弾性変形する"スプリングバック現象(※5)"が強く生じてしまう。その結果、金属部品の寸法精度不良が生じてしまうという問題を抱えていた。

 それを解決したのがホットスタンピングだ。ハイテン素材を約900℃まで加熱して軟らかくした状態でプレス加工を実施。この時、同時に金型との接触によって冷却する「接触冷却」により焼き入れを行う。これにより、引っ張り強度(※6)1500MPa級などのハイテン素材でもスプリングバック現象が生じなくなり、高い精度の加工が可能となった。この技術が開発されたことで、現在のクルマの強度が上がり、安全性がより高まっているというわけだ。

※4 ハイテン素材:高張力鋼板などともいわれる。引っ張り強度の強い素材のことをいう。

※5 スプリングバック現象:どのような金属でも、大きく変形させるプレス加工を行う場合は大なり小なり生じる、元に戻ろうとする現象。従来の引っ張り強度が低い鋼板ならその戻り方が少ないので、あらかじめそれを計算に入れてプレス加工を行っているが、ハイテン素材の場合はそれが難しかった。
※6 引っ張り強度:抗張力ともいう。素材に引っ張っる力が加わったときにその素材が耐えられる強さを表す。引っ張り強度が強ければ強いほど、それだけ大きな力に耐えられる素材であることを示す。単位は圧力に使われるPa(パスカル)が使われる。1Pa=1N/平方m。ハイテン素材も含め、クルマのプレス部品はMPaで表されている。

ゲスタンプが公開している、ホットスタンピングによるプレス加工の様子を収めた動画。

 これまでゲスタンプと国内自動車メーカーのつきあいは、海外工場でのみ行われてきた。しかし松阪工場がオープンしたことで、今後は国内工場にも金属プレス部品が提供されていくことになる。

 まず初期段階としてホンダにホワイトボディ(※6)を供給することが発表されており(車種未公表)、今後、順次ほかの国内自動車メーカーにも供給していくとした。

※5 ホワイトボディ:ボディ・イン・ホワイトとも呼ばれ、エンジンやシャシー、内装などを除いた塗装前のボディ本体(ボンネット、ドア、トランクリッドなどを含む)

201年月日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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