国土交通省、サイドミラーの代わりにCMSを可能に
CMSのイメージ。
国土交通省自動車局は6月17日、道路運送車両の保安基準などを改正し、バックミラーの代わりに「カメラモニタリングシステム」(CMS)を使用することを認めた。施行は翌18日。
日本は、国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」に1998年から加入している。同局はそれを取り扱う組織であり、クルマの安全基準について、国際的な整合性を図ることで安全性を向上させるべく、現在も同協定に基づく規則について段階的な採用を進めているところだ。
今回、複数の規則について採用される運びとなり、バックミラーに関しては視界範囲に関する変更と、CMSをバックミラーの代わりに使用してもいいという点の二つが改正される運びとなった。
CMSをバックミラーの代わりに装備するには?
メーカーが製造するクルマにバックミラーの代わりにCMSを採用する場合は、「間接視界に関する協定規則(第46号)」に定める画質・取り付け位置・表示時間(タイミング)・倍率(バックミラーの曲率に相当)・個数(クラスごとの分類)の要件に適合することが必要だ。要は、同等の視界を確保できるのであればCMSをバックミラーの代わりに装備してもいい、となったというわけである。
ちなみに、近年はカーナビのモニターと共有で、バックする際に後方視界が表示されるリアモニタ-などのシステムが一般的になっているが、そうした切り替えて使う仕組みのものではない。ルームミラーやドアミラーのように、ドライバーが見ている・いないとは関係なく、常に後方視界を映している必要がある。
よって、バックミラーすべてをCMSに切り替えるとなると、現在のミラーの位置に近い3か所にモニターを設置しないとならない。そのため、特に右側用のモニターはスペース的に設置位置に工夫が必要になりそうだ。
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CMSに置き換えるメリットとメーカーの考えは?
CMSの採用はどれぐらいのメリットがある?
CMS化すれば、ドアミラーをなくすことができるので空力性能がよくなり、言うまでもなく自動車専用道路などでの高速域で大きな効果を得られる。よって、燃費がよくなることはいうまでもない。またデザイン面でも、ドアミラーはどうしてもボディに対して「でっぱっている」感があり、それをなくせるメリットは大きいだろう。
また、カメラからの映像となることで、各種のセンサー等と協調し、危険回避のためのサインを出したりといったことも技術的には可能になる。これらは、安全面にも寄与するはずだ。例えば、左折時の後方からのバイクや歩行者など、巻き込み事故の多い状況に対し、バイクや歩行者を強調表示することで事故を回避するシステムなども考えられる。
その一方で、カメラやモニターはミラーと違って電力を必要とするというデメリットもある。エアコンを使う・使わないが燃費に影響することからもわかるように、カメラとモニターが新たに搭載されたら影響がゼロとはいかないはずだ。それに加え、前述したように二輪車や歩行者などを映像的に加工するとなると、画像認識技術が必要となるので、そのためのCPU等にパワーを必要とし、車の電力消費量が増えることも考えられる。
メーカーもドアミラーレスは検討中
今回の改正でCMSの採用が可能になったが、実際に普及するかはこれからのメーカーやユーザーの判断になる。採用車は、具体的にはまだ発表されているわけではないが、近年、モーターショーなどで発表されたコンセプトカーの中には、レクサス「LF-FC」のようにドアミラーレスのデザインのものもある。もしかしたら、そう遠くない将来、フェンダーミラーがドアミラーに置き換わったように、CMSが一般的になる日が来るのかも知れない。
2015年の第44回モーターショーで披露されたコンセプトカー・レクサス「LF-FC」。ドアミラーがなくスッキリしている。
2016年6月20日(JAF MATE社 IT Media部 日高 保)
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