2021年04月28日 13:00 掲載

ライフスタイル 第26回/ライオンの赤ちゃん
赤ちゃんのときだけの、体の斑点と青い瞳
【アニマル“しっかり”みるみる】

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当佐藤さんに、「ライオンの赤ちゃん」を解説してもらいました。

文・上條 謙二

肉球はめんつゆの匂い!?

富士サファリパーク|ライオン赤ちゃん|くるくら

ライオンの赤ちゃんは、出生時の体長が25〜30cm、体重が0.9~1.5kgほど。

 ライオンは、アフリカ中央部から東部にかけての平原、茂みのあるサバンナ、森林、岩地などに生息する食肉目ネコ科の動物です(インドの北西部に位置する保護区には「インドライオン」というやや小型の亜種が少数生息する)。オス(成獣)は体長が2.6~3.3mで、体重が150~240kg、メス(成獣)の体長は2.4~2.7mで、体重が120~180kgほどになります。それが赤ちゃんでは、出生時の体長が25〜30cm、体重が0.9~1.5kgほどしかありません。

 小さく生まれてくる赤ちゃんライオンには、いくつかの身体的特徴があります。

 その一つが、体にある暗褐色の斑点です。生まれて10か月~1年くらいまではこの斑点は体に残り、大きくなるにつれて薄くなり消えてしまいます。この斑点のある理由ですが、外敵から身を守るためのカムフラージュになっているとの説が有力になっています。その斑点模様がある体毛は、体温を保持するために密度が高く、しかも柔らかくてフワフワです。それに比べ、「大人のライオンの毛は、赤ちゃんに比べると短めで硬い」(※佐藤さん以下同)そうです。

 瞳の色も赤ちゃんのときは大人と違っています。生まれたばかりでは、瞳の色が「キトゥンブルー」と呼ばれる、独特な灰色がかった深い青色です。この色は、成長するとともにオレンジ色や金色に変わります。ちなみに、赤ちゃんのときに瞳が青いのは、ネコも同じです。また鼻の色がピンクなのもライオンの赤ちゃんの特徴で、大人になるとだんだん黒く変色していきます。

 ライオンの赤ちゃんは尻尾の形も大人と違います。大人の尻尾は、先端が膨らんだ房状になっていますが、赤ちゃんの尻尾は、先端に向かって筆のように徐々に細くなっていく形です。1歳くらいになると、尻尾の先に房ができるそうです。

 その一方、ライオンの大きな武器である爪ですが、生まれたての赤ちゃんのときから鋭く、形を見ると大人のミニチュア版という感じで、しっかりとした鉤爪になっています。ただ爪自体が針のように細く、切っておかないと下に敷くタオルに引っ掛かることがよくあるので、飼育管理上、爪はこまめに切ってしまいます。

 そしてネコ科の動物特有の足の肉球ですが、ライオンの赤ちゃんはプニプニととても柔らかいうえに、「理由はよく分からないのですが、肉球から香ばしい匂いがします。あえて例えるなら『めんつゆ』のような匂いがする」そうです。

子供同士のじゃれあいは狩りの予行演習

富士サファリパーク|ライオン赤ちゃん|くるくら

ライオンの赤ちゃんの柔らかい肉球からは、なぜか「めんつゆ」のような匂いがするとのこと。

 野生下のライオンは通年で繁殖するので、出産の季節というのは特にありません。子供が育てば次の発情期がきますし、生んだ子供がうまく育たなかったときはすぐに次の発情を迎えます。ライオンは出産するとき、母親ライオンが群れから離れて単独で出産します。出産後しばらくすると母と子で群れに戻ってメンバーに合流します。群れの中のメス同士は、共同で子供の世話をします。

 ネコ科の動物にしては珍しく群れをつくり、しかも群れのメンバーで協力して狩りを行うライオンは、小さな子供のときから狩りに向けた行動が見られます。

 園内の赤ちゃんライオンでも、1~2か月くらいから肉を食べ始めます。3か月頃になると肉についた骨まで噛み砕くようになります。よちよち歩きを卒業して、体をしっかり支えて、走ることができるようになると子供同士で追いかけっこをしたり、取っ組み合ってじゃれあったりします。野生下であれば、こういった遊びがすべて狩りの練習になるわけです。

タオルで体を拭いたときのトロンとした表情の愛らしさ

富士サファリパーク|ライオン赤ちゃん|くるくら

ライオンの赤ちゃんの鳴き声は、例えると「ピャア」とか「ギャア」という感じ。長く伸ばさず短く声を出す。ミルクが欲しいとき、検診が嫌なとき、さびしいときなどに鳴く。

富士サファリパーク|飼育員さん|くるくら

「ライオンの赤ちゃんは、生まれた直後だと目がしっかりと開いておらず、顔もしわくちゃで、お世辞にもあまり愛らしくないんです。それが1~2週間くらい経つと、目もパッチリ開いて、表情も出てきてすごく可愛くなるんですよ」と飼育担当の佐藤さん。

 そんなライオンの赤ちゃんの「あるある」についても伺いました。

 それは「初めてミンチ肉を与えると、慣れない食べ物にしばらく戸惑うけれど、最終的にはガツガツと食べること」です。個体によっては、無理に与えようとすると警戒心が強いあまり『カアッ』と声を上げて怒りだすこともあります。でもしばらくして匂いを嗅いで、ちょっと口にすると「なんだ美味いじゃないか」という感じで、大抵はガツガツと平らげてしまいます。赤ちゃんと言えども、そこはやっぱり肉食動物なんですね。

 最後にライオンの赤ちゃんのどんなときが一番可愛らしいかも伺いました。

 野生下では、母親ライオンが赤ちゃんを慈しむように体中を舐めます。人工哺育下では、親が舐めてくれないこともあり、その代わりに飼育員が濡れタオルで赤ちゃんの体を丹念に拭いてあげます。そんなときは「身をゆだねて仰向けにひっくり返り、トロンとした表情になるんです。その表情が可愛らしくてなんとも言えません」。ライオンの赤ちゃんはなかなか甘え上手です。

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