小樽~新千歳が無料で直結!「道央圏連絡道路」全線開通まで残り1区間。「長沼南幌道路」はいつ完成する?【いま気になる道路計画】
「道央圏連絡道路」は、国道337号のバイパスとして整備が進められている、北海道千歳市から小樽市を結ぶ延長約80kmの高規格道路だ。暫定2車線区間や未開通区間もある同道について、概要や開通のメリットを紹介する。
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道央圏連絡道路とは? 千歳〜小樽を結ぶ全長80kmの高規格道路
道央圏連絡道路の概要図。
「道央圏連絡道路」は、北海道千歳市を起点として小樽市に至る延長約80kmの高規格道路だ。国道337号のバイパスとして整備が進められ、4車線(幅員21.0m)、設計速度は70km/hで計画されている。全線無料で利用可能なのも特徴だ。
2025年3月に南幌町から江別市の「中樹林(なかじゅりん)道路」約7.3kmが開通したことにより、全体の約8割が開通(一部は暫定2車線)。残す区間は、南長沼ランプから南幌(なんぽろ)ランプまでの「長沼南幌道路」約14.6kmのみとなっている。
道東自動車道と道央自動車道とも接続しており、未整備の「長沼南幌道路」区間も、国道274号と337号を迂回することで接続は可能であるため、未整備区間が1区間残されている現在でも新千歳空港発着のアクセス性は大いに向上した。なお、自動車専用道ではないが、新千歳空港から南長沼ランプは、歩行者や自転車、原動機付自転車の通行は禁止されている。
道央圏連絡道路が地域にもたらすメリット
道央圏連絡道路の開通により、花きや米などの運送効率が向上する
道央圏連絡道路の整備によって、ほぼ直結となる新千歳空港や石狩湾新港をはじめ、延長線上にある小樽港、苫小牧(とまこまい)港へのアクセス性が格段に向上するメリットがある。
北海道で盛んな農産業への影響は大きく、石狩市など道央で生産が盛んな切花類や、北海道全体の約4割の収穫量を占める空知地方の米など、さまざまな農産物輸送の速達性や定時性が向上する。また、交差点での停止や右左折が少なくなることで、製品を傷つけるリスクも避けられる。
また、中樹林道路が開通したことで、特に道北地域から新千歳空港・苫小牧港へのアクセスが改善した。北海道はホタテの養殖が盛んで、特に稚内(わっかない)市や枝幸(えさし)町などは主要な生産地だ。海外向けのホタテの多くは新千歳空港から輸出されることもあり、鮮度が求められるホタテ産業にとって大きなメリットが見込まれる。もちろん、ホタテ以外の農水産物にも同じことがいえる。
さらに、道央圏連絡道路の完成によって渋滞緩和や安全性向上も見込まれている。
道央では、札幌市への都市機能の集約により、都市部での交通渋滞が課題となっている。新千歳空港から札幌市に向かう国道36号や、う回路として使える国道274号は慢性的に渋滞し、利用者の時間損失が大きく、交通事故も発生しているのだ。
道央圏連絡道路が開通すれば、札幌市内に流入する車両が分散し、混雑が緩和されて安全性の向上にも繋がる。
なお、未開通区間である「長沼南幌道路」付近は厳しい気候が特徴で、吹雪・地吹雪により何度も交通規制が起こっている。同区間が開通することで、冬季に当該エリアを走行する際の安全性の向上も期待されている。
道央圏連絡道路の2車線区間と未開通区間の今後
長沼南幌道路の軟弱地盤対策による工事見直し
現在、道央圏連絡道路には、暫定2車線区間と未開通区間が残されているが全線開通はいつになるのだろう。
暫定2車線は、国道275号の接続部から、新千歳空港方面にかけての多くの区間にある。2025年3月に開通した中樹林道路も暫定2車線であり、これらの4車線化工事についての計画はまだ発表されていない。
未開通区間の長沼南幌道路は、国土交通省 北海道開発局によると、2025年4月1日時点で用地取得率が98.8%に達しており、土地の確保は終了間近となっている。
また、同局が2023年に発表した再評価原案準備書説明資料には、事業進捗率は65%(事業費変更後は41%)との記載がある。事業進捗率とは全体の計画費からどれくらいお金を使ったか、どのくらいの工程が終わったかをざっくりと示す指標だ。そのため、工事進行中に事業費の増額が必要になった際は進捗率が下がる。長沼南幌道路は軟弱地盤対策のため工法の見直しが求められたため事業費が増額になった経緯があり、この見直し後の事業進捗率が41%ということだ。
事業費変更前で考えると、2019年時点の再評価における進捗率18%から、進捗率は6年で47%増加している。工事は完成に向けて徐々に進んでいるとみていいだろう。ただし、完成予定時期は発表されていない。
道央地域のアクセス性向上のみならず、地域経済にも大きな影響をおよぼす「道央圏連絡道路」の全線開通を心待ちにしながら、引続き整備の進捗に注目していきたい。
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