「新湾岸道路」の事業化に向けた議論が活発化。東京~千葉の「第3のルート」は今度こそ実現なるか。【いま気になる道路計画】
「京葉道路」「東関東自動車道」に続く、東京と千葉を結ぶ高速道路の「第3のルート」として期待が集まる「新湾岸道路」。いま、その事業化に向けた議論が活発になされている。先に潰えた「第二東京湾岸道路」構想の夢を引き継ぎ、実現する日はくるのだろうか。
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東京と千葉を結ぶ「新湾岸道路」って何だ?
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新湾岸道路の想定路線と東京湾の沿岸部。 画像は編集部が作成。 (c) TokyoSKy – stock.adobe.com。
記事の画像ギャラリーを見る「新湾岸道路」は、外環道の高谷JCT(千葉県市川市)周辺から東京湾の沿岸部を経て、京葉道路の蘇我IC(蘇我市)周辺と館山道の市原IC(市原市)周辺までを結ぶ高規格道路の構想だ。
新湾岸道路の構想そのものは、1994年に「第二東京湾岸道路」として地域高規格道路の候補路線に指定されている。しかし、東京第二湾岸道路は、2001年、環境の保全を背景に事業凍結を余儀なくされた。
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新湾岸道路の想定ルート。市川市~千葉市~市原市の沿岸部に高速道路を建設する構想。画像は新湾岸道路有識者委員会の資料を元に編集部が作成。
再び、第二東京湾岸道路の構想に注目が集まったのは、湾岸部の交通量が増え続け渋滞も顕著になった2010年代のこと。渋滞の解消を喫緊の課題とした千葉県は、第二東京湾岸道路を軸に「高谷JCT周辺から蘇我IC周辺と市原IC周辺まで」とする新たな高速道路の方針を示した。
2023年5月には、国土交通省 関東地方整備局 千葉国道事務所、千葉県、沿線6市で構成する「新湾岸道路整備促進期成同盟会」を設立。翌月の6月には、「第1回 新湾岸道路検討会準備会」を実施した。
今度こそ、新たな湾岸道路の新規事業化を目指したい千葉県および沿線6市。第二東京湾岸道路の事業凍結の原因のひとつとなった環境問題を克服しようとしている。
新たな湾岸道路のルートと三番瀬の環境問題
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国道357号東京湾岸道路の日の出交差点付近の渋滞。
東京湾岸道路事業凍結の背景にあったのが「三番瀬(さんばんぜ)」の環境問題といわれている。市川市と船橋市の沖に広がる浅海域(浅瀬や干潟)で、数々の魚貝や水鳥の生息場所となっている他、海苔養殖漁業やアサリ漁などの漁場でもある。首都圏では潮干狩りの定番スポットとしても人気があり、シーズンには親子連れの姿も多い。
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市川市と船橋市の南側に位置する「三番瀬」。
第二東京湾岸道路の構想は、現在の高速湾岸線や東関東道のさらに沿岸に、新たな高規格道路をつくるというもの。想定ルートの起点は東京都大田区の昭和島JCT、終点は千葉県市原市の市原ICで、浦安市の南東部から船橋市の南東部に向かって、三番瀬を横断する計画だった。
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第二湾岸道路の想定ルート。画像は新湾岸道路有識者委員会の資料を元に編集部が作成。ルートは構想段階のおおまかなものである。
一方、新湾岸道路の想定ルートでは、起点を外環道の高谷JCTと接続し、船橋市から習志野市の沿岸部を南下するかたちにして三番瀬の横断を回避。環境面での理解を得られるものとした。
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第二東京湾岸道路と新湾岸道路の想定ルートを比較。第二東京湾岸道路では浦安市~船橋市~習志野市間でかなり沿岸に寄っている。画像は新湾岸道路有識者委員会の資料を元に編集部が作成。
もし将来、新湾岸道路ができれば、京葉道路と東関東道に次ぐ東京と千葉を結ぶ「第3のルート」として、都市間の交通アクセスを支援するだろう。同時に、国道357号、14号、16号など、周辺の道路での慢性的な渋滞緩和が期待される。それだけに沿線6市の居住者や事業者の構想実現に対する期待度も高い。
現在、千葉国道事務所では、新湾岸道路のポータルサイトに「新湾岸道路プロジェクトご意見フォーム」を設置し、新湾岸道路や周辺道路に関わる課題やニーズなどの意見を集めている。地域の居住者や事業者の声をもとに、概略ルートなどの具体案を詰めていくことになる。なお、意見の募集は2025年2月28日まで。
千葉県では、新湾岸道路の他、千葉県では富津市と神奈川県の横須賀市を結ぶ「東京湾口道路」の新規事業化に向けた議論も活発だ。首都圏の新たな道路ネットワークの展開に注目したい。
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