夏も冬もオールシーズンタイヤ1本で本当に大丈夫? ダンロップ話題の新商品「シンクロウェザー」に未来を感じた!【試乗レビュー】
ダンロップが10月に販売を開始した新オールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」が、いまドライバーたちの間で話題だ。注目は、これまでオールシーズンタイヤが苦手とした氷上性能の劇的向上。天候による路面の変化に合わせてゴムの性質を切り替えるって、いったいどういうこと?
水や温度に反応して性能が変わるタイヤ
10月1日にデビューした住友ゴム・ダンロップブランドのオールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」。水や温度に反応して、路面状態に合わせてゴム自体が性質を変える「アクティブトレッド」技術を採用したことで、ドライ、ウェット、氷上、雪上など、あらゆる路面にシンクロ(同調)することからこの名が付けられた。果たしてどんなタイヤなのか。
シンクロウェザーのカタログの表紙には、二刀流を武器に大リーグで活躍中の大谷翔平選手のアップの写真とともに、「このタイヤ、何刀流だ」の文字が踊る。これを見ただけで、ダンロップがこのタイヤに賭ける期待の大きさが伝わってくる。
シンクロウェザーの主たる技術である「アクティブトレッド」は、2023年10月に初公開されたもの。新開発したゴムの成分には、ポリマーの動きをコントロールする2つの“スイッチ”が組み込まれている。
1つ目の「水スイッチ(当初はTYPE WETと呼ばれていた)」は、タイヤが水に触れることでゴム表面が柔らかくなり、ウェット路面でのグリップ性能が向上する、というもの。ゴム内のポリマー結合の一部を従来の「共有結合」から、水で結合が解離する「イオン結合」に置き換えたことで実現した。
2つ目の「温度スイッチ(当初はTYPE ICEと呼ばれていた)」は、低温でも柔らかさを維持する新ポリマーを搭載することで、常温ではサマータイヤ並みの剛性を持ちながら、低温になると「温度スイッチ」が働いて、氷上ではスタッドレス同等にグリップするゴムになる、というもの。
これを採用することで、従来のオールシーズンタイヤでカバーしきれなかった、あらゆる路面での走行を可能にした、とダンロップはうたっている。では実際に試すとどのような乗り味なのか。真冬と初夏に行われたシンクロウェザーの性能テストの様子をレポートしたい。
2月の北海道・旭川で冬性能を試す
今年2月、旭川で行われた冬性能のテストでは、カローラツーリング(FF)に装着した195/65R15サイズのシンクロウェザー、スタッドレスの「ウインターマックス02(WM02)」、既存のオールシーズン「AS1」で乗り比べを行った。
結論から言うと、圧雪路面でも氷上路でもシンクロウェザーとWM02はほぼ同じグリップ力や制動力を発揮し、AS1を圧倒した。雪上では、WM02が大きなブロックと多くのサイプによるバイト感(雪をかむ感覚)で走るのに対して、シンクロウェザーはゴム表面の粘着力でグリップして走っている感覚で、その乗り味は異なるも安心感はどちらも高い、というものだった。
一方の氷上では、最後の止まる瞬間に、ギュッと氷を掴む感覚がWM02の方が高かったことを報告しておく。
また、コース外の一般路(圧雪状態)では、メルセデス・ベンツ「GLC」に装着した235/60R18サイズのシンクロウェザーで走る機会を得た。上り下りや直角の曲がり角、S字コーナーが存在する複雑なコースだったけれども、絶えずしっかりとしたトラクションが感じられて、ノンストレスで走り回ることができた。
5月の岡山で夏性能を試す
5月に岡山県で行われた夏性能のテストでは、シンクロウェザーとWM02、最高級サマータイヤの「ル・マンV +」を乗り比べた。ロードコースでは、さすがにサマータイヤの操縦性や静粛性は満足できるもので、シンクロウェザーの相手としてはもう1ランク下のタイヤにした方が良かったかも、という感じ。
とはいえ、シンクロウェザーもV字パターンのタイヤによくある「ザー」というブロックノイズがしっかりと抑制されていて、路面の当たりは柔らかく、スラロームではしっかりとグリップ。120km/h近くまで車速を上げても直進性が落ちなかった。
驚いたのは、たっぷりと水を張ったスキッドパッドでの定常旋回。ル・マンとシンクロウェザーが同じ速度で周回できたのに対して、WM02でその速度まで上げようとすると、一気にグリップを失って外側にはらんでしまったのだ。シンクロウェザーでは水スイッチが入ったことと排水性の良いV字ブロックによって、水膜をものともせず路面に接地していたのに対して、スタッドレスはウェット路面に本当に弱いことがはっきりと認識できた。
また、冬に乗ったのと同じ「GLC」に装着したシンクロウェザーで、郊外路を走り回った。こちらはクルマの基本性能自体が高いこともあって、静粛性をはじめとする走行性能には全く不満ナシだった。
試乗を終えて担当者に聞くと、「水スイッチも温度スイッチも、状況に応じて瞬時にスイッチが入ります」とのことなので、走り始めからすぐに何刀流もの性能が発揮できるという。となると、あとは耐久性。非降雪地帯のユーザーなら1年中装着することになるので、そこはちょっと気になるところだ。
これまでのタイヤとは一線を画する技術を投入した、“未来”のタイヤといっても良いシンクロウェザー。値段はサマータイヤのトップモデル並みと高価だが、マイカーに装着してぜひテストしてみたいと思ったほどだ。
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