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最終更新日:2024.07.09 公開日:2024.07.09

どの世代のVW「ゴルフ GTI」がお好き? 誕生50周年で明かされる、フォルクスワーゲンがヒット作を連発できたその理由。

なぜフォルクスワーゲン「ゴルフ」は世界的大ヒットモデルになった? 1974年の誕生から50年を迎えた今年、ドイツ本国で開催されたスペシャルイベントに参加したモータージャーナリストの小川フミオが、その理由と歴史を振り返る。

文=小川フミオ

写真=Volkswagen Classic

ゴルフIIのGTI

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なぜゴルフは大ヒット作となったのか?

いま若い人に人気なのが、フォルクスワーゲン・ゴルフ。とりわけ、1983年から91年にかけて生産された2代目「ゴルフII」に好んで乗るひとが少なくないようだ。

そんなことを思い出したのが、2024年6月下旬に、ドイツで開かれた「ゴルフの50周年」イベントに、私は参加したからだ。ブレーメンとドルトムントの中間ぐらいにあるオスナブリュックにあるVWの工場の一部を利用して、初代から現在の8代目にいたるまで、歴代のゴルフがずらり並べられた。

フォルクスワーゲン・クラシックが管理する、30台を超える歴史的ゴルフが、持ち込まれた。今回の展示の特徴は、GTIやR、それにモータースポーツ関連の、スポーツモデルに特化していたことだ。なかでもゴルフIIの存在感が際立っていたように思う。

ゴルフはそもそも、ビートルの後継モデルとして、1970年にフォルクスワーゲン社内で企画がスタート。1974年にゴルフⅠが発表された。ビートルが丸っこいボディだったのに対して、直線基調のゴルフはまったく印象が違う。

かつ、ビートルはリアエンジンの後輪駆動だったが、ゴルフはフロントエンジンの前輪駆動。これも正反対だった。当初、VWの首脳陣は、企画にゴーを出す前に、これでいいのかなあ、とやや懐疑的だったようだが、はたして大ヒット。

続くゴルフIIでも、VWの開発陣は悩んだそうだ。そのときの悩みは、どうしたら初代の成功を引き継ぎ、好調なセールスを維持できるか。ゴルフIからIIにいたるなか、自動車界ではさまざまな変化があった。新技術だったり法規制の強化だったり。

ゴルフIIでは、排ガス規制に対応する触媒、アンチロックブレーキ(ABS)、パワーステアリング、それにモデルバリエーションの追加(4WDやカブリオレや)といった具合だ。はたして、ゴルフIIは大きなヒットを記録した。

成功の理由は、VWの振り返りによると、ボディデザインだったという。ゴルフIのイメージを引き継ぎ、それをモダナイズしたのが市場に受け入れられる要因だったそうだ。

確かに、少し丸みを帯びたボディと、拡大したトラック(トレッド)による踏ん張り感が、ひとクラスかふたクラス、上のクルマみたいだった。その印象は、今回ドイツ・オスナブリュックで2つのモデルを見比べさせてもらったとき、改めて確認できた。でもって、ゴルフIIIより個性がある。

ゴルフIのGTI

ゴルフIIのGTI

ゴルフIIIのGTI

ゴルフIVのGTI

ゴルフVのGTI(写真 Wolfgang Grube)

ゴルフVIのGTI

ゴルフVIIのGTI

ゴルフVIII(現行)のGTI

スポーツゴルフが果たした役割とは

展示で興味深かったのは、ゴルフII GTIの美しい保管状態のモデルがあったこと。それから、「G60」と呼ばれたGTIの上をいく性能のスーパーチャージャー装着モデル。さらに、4輪駆動のラリーベース車。そして、苛酷なヒルクライムレース「パイクスピーク」で入賞したツインエンジン車まで拝むことができたのだ。

「今回の50周年記念展示をなぜスポーツゴルフに限ったかといえば、ゴルフのネームバリューを上げていったのは、モータースポーツ活動があったからです」

ヘッド・オブ・VWクラシックのミシャエル・ウインクラー氏は、会場で、展示内容について教えてくれた。ゴルフIIの時代にVWが技術の面でも製品プランニングの面でも、大きく躍進していったのも思い出深い、とつけ加えた。

モータースポーツで活躍したモデルのなかで、私がとくに興味深かったのは、1987年に米コロラド州で開催された「パイクスピーク・インターナショナルヒルクライム」(2016年に100周年を迎えた!)に出走したモデル(実車)。

パイクスピークの競技車両とともに、クラウス=ヨアヒム(ヨッヒ)・クライント氏(右)と、VWクラシックのミシャエル・ウインクラー氏

1987年のパイクスピークに出走した競技車両もゴルフⅡのイメージ

パイクスピークの競技車両は前後にKKKターボチャージャー装着のエンジン搭載の4WD

パイクスピークの競技車両は駆動方式を任意で切り替えられる

一見ゴルフIIなのだけれど、実際は大容量ターボチャージャー装着の1.8リッターエンジンを前後に1基ずつ搭載した4WD。車体は軽量化され、1020kgしかない。この時、ドライバーを務めたクラウス=ヨアヒム(ヨッヒ)・クライント氏も今回の会場にいて、「前後のトルク配分の調整をブレーキでするんですが、それにかなり気をつかいました」と教えてくれた。

完成度はかなり高いと、当時、VWのチームは自信満々だったようだが、「フィニッシュラインを目前にして」(VWの資料)サスペンションのボールジョイントのトラブルでリタイヤを余儀なくされたのだった。

実車は航空機のように精密に出来ている印象で、この年を最後にVWは、3年連続出場していたパイクスピークからの撤退を決めたのは残念だなあと改めて思った。

スポーツゴルフの進化が止まらない

2024年6月に発表された最新のRは、2リッターエンジンのパワーが従来より10kW上がって245kWになり、4輪を駆動する

50周年のイベントでは、最新のスポーツゴルフが2台、お披露目された。1台は、5月30日にニュルブルクリング・サーキットで公開された「ゴルフGTIクラブスポーツ」。221kWの最高出力と400Nmの最大トルクをもち、さらに車体が軽量化された、魅力的なモデルだ。

もう1台は「ゴルフR ブラックエディション」。6月26日に発表されたのが「史上最強」をうたわれるRの最新モデル。2リッターエンジンのパワーは従来より10kW上がって245kWになっている。

静止から時速100kmまでを5.6秒で加速。ニュルブルクリンクサーキットの周回に特化した、シャシーコントロール性能を発揮するという「DCCアダプティブシャシーコントロール」も用意される。バンパーにはエアカーテン。ホイールは新設計。室内には大きなインフォテイメントシステム用モニターが備わる。

運転はできなかったが、日本に導入されたあかつきには(導入時期は未定とのこと)なんとしても乗ってみたい2台である。スポーツゴルフの進化は止まらないようだ。

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