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道路・交通最終更新日:2024.02.22 公開日:2024.02.22

歩行者優先なのに。信号機のない横断歩道で2台に1台が一時停止しないのはなぜ?

信号機のない横断歩道で、渡ろうとする歩行者がいるのにも関わらず、およそ2台に1台のクルマが一時停止をしないという(JAF調査、全国平均)。歩行者優先のはずでは?なぜクルマは一時停止しない?その原因と対策を探っていこう。

文=宮本 菜々(KURU KURA編集部)

信号機のない横断歩道で一時停止するクルマは2台に1台!?

(画像:(c) meow_creation - stock.adobe.com)

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信号機のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者。しかし、クルマやバイクは、速度を落とすことなく、ビュンッと走り抜けていく。「歩行者優先なのに……危ない!」と思った方もいれば、いつもそうなので当たり前だと感じている人もいるかもしれない。

信号機のない横断歩道では、歩行者や自転車がいないことが明らかでない限りは、横断歩道の直前で停止できる速度で進行しなければならない。歩行者がいるときは一時停止して道を譲る。それが法律で決められたルールだ。ドライバーなら、教習所で習ったはずである。

しかし、一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)の「信号機のない横断歩道における車の一時停止率(2023年)」に関する調査では、約半分のドライバーが守っていなかった。

JAFの調査した信号機のない横断歩道における車の一時停止率(全国平均)。(画像:JAF)

この調査は2016年から行われており、2016年7.6%、2018年8.6%、2020年21.3%、2022年39.8%と、年を追うごとに改善されてはいる。ただし、それでもまだ半分のドライバーが交通ルールを堂々と違反している状態だ。また、前記の一時停止率は全国平均だが、都道府県によって大きな差があるという問題もある。

JAFの調査した信号機のない横断歩道における車の一時停止率ワースト10。(画像:JAFの資料を元に作成)

ワースト1は新潟県の23.2%、続いて佐賀県の26.2%、福井県の26.7%。5台に1台が止まるかどうかだ。

では、トップはどうだろうか。

JAFの調査した信号機のない横断歩道における車の一時停止率トップ10。(画像:JAFの資料を元に作成)

トップは長野県の84.4%、続いて石川県76.4%、栃木県74.8%。5台に4台は止まるという割合だ。名古屋走りが有名な愛知県も、このケースでは優秀である。

しかし、どうしてこれほどまで歩行者優先のルールは軽視されるのだろうか。

信号機のない横断歩道で一時停止をしない理由は?

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JAFの実施したインターネットアンケート(2017年)では、信号機のない横断歩道で歩行者がいるのにも関わらず、一時停止しない、あるいはできない理由について、以下のような回答を得ている。

  • 自車が停止しても対向車が停止せず危ないから。
  • 後続から車が来ておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから。
  • 横断歩道に歩行者がいても渡るかどうかわからないから。
  • 一時停止した際に後続車から追突されそうになる(追突されたことがある)から。

このなかで最も高い割合なのが「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから」だった。どちらにしても、理由はすべてドライバー視点のものといえそうだ。交通ルールで明確に歩行者優先が決められている以上、どの理由にしても、半分のドライバーが法律を無視する理由とは考えられない。

信号機のない横断歩道では一時停止を徹底しよう

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信号機のない横断歩道で、トラックに児童がはねられ命を落とすなど、痛ましい交通事故は後を絶たない。自分が加害者になることも、家族が被害者になることもあり得る。このことを忘れず、ドライバーの皆さんには、横断歩道では歩行者優先の意識を持ってもらいたい。

先のJAFのインターネットアンケート調査では、信号機のない横断歩道で一時停止しない理由として「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから」が多くあげられていたが、対向車にとっては自分自身も対向車なのだから“こちら”が止まれば“あちら”も止まる可能性は十分にあるだろう。同様に「車の流れを止めたくない」ときも、自分か、もしくは誰かが止まってくれれば、自然と止まることができるはずだ。「対向車も後続車も止まらないから」ではなく「自分が止まる」という意識を持つといいのかもしれない。

同時に、運転中は路面の「ひし形マーク」にも注目してもらいたい。信号機のない横断歩道の手前には、この先に横断歩道があることを意味するこのマークが表示されている。路面の表示を見落とさないようにしていれば、確実に横断歩道前で減速・停止できるはずだ。

小学校付近の信号機のない横断歩道で、ドライバーに対してお辞儀をしてから渡る児童を見かけることがある。それはそれで、とてもよいマナーだと思う。ドライバーと歩行者が敵対していても、安全は守れない。

一方で、住宅地の信号機のない横断歩道で、杖をついてゆっくりと歩を進める高齢の女性に対し、急げと言わんばかりにジリジリと近付くドライバーを目にすることもある。本来であれば、児童らがお辞儀をしなくても、高齢の女性がゆっくりとしか横断歩道を渡れなくても、ドライバーは一時停止をしなければいけない。お互いにマナーよく接するのは大切だが、忘れてはいけないのは、止まる義務はクルマ側のドライバーにあるということだ。

まずはドライバー自身が、自分が歩行者だったら……という視点を持ち、思いやりのある運転を心がけるのが、ドライバーも歩行者も安心・安全、そして気持ちよく道路を利用することにつながるのではないだろうか。

【都道府県別】 2023年 信号機のない横断歩道における車の一時停止率

都道府県別 2023年 信号機のない横断歩道における車の一時停止率。(画像:JAFの資料を元に作成)

北海道 29.0%
青森県 47.4%
岩手県 56.2%
宮城県 51.9%
秋田県 52.1%
山形県 53.6%
福島県 60.8%
茨城県 27.6%
栃木県 74.8%
群馬県 41.1%
埼玉県 38.9 %
千葉県 31.9%
東京都 39.6%
神奈川県 29.1%
新潟県 23.2%
富山県 50.0%
石川県 76.4%
福井県 26.7%
山梨県 61.0%
長野県 84.4%
岐阜県 65.4%
静岡県 63.9%
愛知県 61.2%
三重県 51.3%
滋賀県 46.3%
京都府 34.6%
大阪府 26.7%
兵庫県 52.0%
奈良県 48.1%
和歌山県 30.1%
鳥取県 50.0%
島根県 53.0%
岡山県 47.8%
広島県 48.5%
山口県 48.5%
徳島県 36.7%
香川県 39.1%
愛媛県 58.5%
高知県 35.3%
福岡県 58.1%
佐賀県 26.2%
長崎県 42.5%
熊本県 66.1%
大分県 31.1%
宮崎県 63.6%
鹿児島県 42.8%
沖縄県 31.1%

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