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最終更新日:2024.02.15 公開日:2024.02.15

『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第47回──自動車ファンの高齢化は日本車で阻止可能!? ボローニャ「アウトモト・デポカ」ショーで考えたこと。

イタリア・シエナ在住の人気コラムニスト、大矢アキオ ロレンツォがヨーロッパのクルマ事情をお届けする連載企画。第47回は、自動車ファンの高齢化を阻止するのは日本車だった!? ヨーロッパの若者たち惹きつけるクルマの正体とは。

文=大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)

写真=大矢麻里(Mari OYA)

「人生は短い」ゆえに

ボローニャ「アウトモト・デポカ」で。1993年「ジャガーXJ220」と並べて展示されていた1991年「ホンダNSX」。走行約7万9千キロメートルで、11万ユーロ(約1720万円) のプライスタグが添えられていた。ナンバープレートの右には、イタリア古典車協会(ASI)による認定バッジが貼られている。

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イタリアでは「ヤングタイマー」と呼ばれる古典車の人気が上昇している。世界古典車連盟(FIVA)が認める時代以前に属する車両という認識もあるが、厳密な定義はない。おおむね20〜30年前に流通した車両を指す。

たとえば「アルファ・ロメオSZ」は、2021年には6万5千ユーロ近くで取引されていたが、今や8万ユーロ台の個体がみられるようになった。日本のJAFに相当するACI(イタリア自動車クラブ)が、「ヤングクラシック」という月刊誌を2023年に創刊したのも、その注目度を象徴している。

近年では「インスタント・クラシック」という新しいカテゴリーも定着しつつある。こちらはヤングタイマーより若いモデル、かつすでに評価が定着したものを指す。「アバルト124スパイダー」がその一例で、生産終了後わずか約3年にもかかかわず、それとみなされ始めている。

さて、今回動画で紹介するのは、2023年10月26-29日にイタリアで催されたヒストリックカーショー『アウトモト・デポカ』である。従来イタリアのパドヴァを舞台にしてきたが、第40回を迎えた今回から、会場がより広く新しいボローニャで開催されることになった。

効果は絶大だった。総面積23万5千平方メートルの会場には7千台が展示された。同じヒストリックカーショーで、2023年2月にパリで開催された「第47回レトロモビル」の台数が約1千台であったことを考えると盛況ぶりがわかる。

ここでも主役はヤングタイマーとインスタント・クラシックであった。あるショップのオーナーは、筆者に背景をこう分析してくれた。「明らかに新型コロナウィルスがきっかけでした。人々は『人生は限りある。少年時代に憧れたクルマを今、楽しんでおこう』と思うようになったのです」

アウトモト・デポカ2023で、来場者の35%は外国からだった。とくにイタリアのコレクターが手放すクルマを目当てに、ドイツやスイスなどアルプス以北からやってきたビジターが多かった。ポテンシャル・バイヤーである彼らには、すでに白髪をたくわえた人々が目立った。

それもそのはずだ。ひと足先にヤングタイマーという言葉が定着し始めた国々では、それなりの年月が過ぎている。たとえば、フランスを代表するヤングタイマー専門誌、その名も『YOUNGTIMERS』の創刊は2010年だ。すでに14年近くが経過している。

手前は「アルファ・ロメオSZ」の姉妹車「RZ」。1995年式で価格は9万3千ユーロ(約1460万円)。

インスタント・クラシックとして、生産終了後わずか3年の「アバルト124スパイダー」も。モデルによっては円換算で1千万円超の値札が付けられていた。以上3点はヤングタイマー/ヤングクラシックが得意な新興ショップ「ルオーテ・ダ・ソーニョ(夢のホイール)」の出展から。

屋外展示スペースにもインスタント・クラシックのクルマが。走行僅か8100キロメートル、マニュアルシフトが売りの「アルファ・ロメオ・ブレラ」は価格応談。参考までに、イタリアの中古車検索サイトでは、同程度のブレラが、2万5千ユーロ(約392万5千円)で販売されているのが確認てきる。

トリノを本拠とする「アウトビアンキ保存会」のブース。「A110」はヤングタイマー市場で、入門者から長年のファンまで安定した人気を誇る。アバルト仕様は高額だが、修理を楽しむ心の余裕があれば、標準仕様が2千ユーロ(約31万円)台から手に入る。

フィアットの公式へリティッジ部門は、本社工場の構内車だった2001年初代「パンダ4✕4」をフルレストア。希望者に販売するとアナウンスした。

ある民間ショップの展示から。この2代目パンダは、2007年にアバルト部門へ納車された個体。ロールバーやスパルコ製シートなどが奢られている。走行たった284キロメートルで、希望価格は1万9千ユーロ(約298万円)。

ヒストリックカー・ショーだが、新型車の披露も。アルファ・ロメオは、2023年8月にリリースした新「33ストラダーレ」を一般公開した。

ミラノのカロッツェリア「トゥリング・スーペルレッジェーラ」は、新作「アレーゼRH95グリージョ・アルティコ」をお披露目した。

リトラクタブル推し

いっぽう、イタリアの若い自動車ファンに人気のモデルといえば……日本車である。具体的には「トヨタ・スープラ」、同「セリカ」、そして今回写真にはないが「マツダMX-5(ロードスター)」といったモデルたちだ。

2000年前後に生まれたいわゆるZ世代が、そうした日本車を愛する理由は明快だ。親が運転するミニバンやSUVの車内で育った彼らにとって、クーペやオープンといった、今日新車には極めてレアな車体形状がクールなのである。

マツダMX-5には面白い現象がみられる。自動車誌『ルオーテクラシケ』の市場価格リストによると、NAといわれる初代で、極上コンディションの価格は1万3500ユーロ(約211万円)に達する。それは2代目・3代目の価格をはるかに上回る。

なぜそこまで初代が人気なのか。それは2022年にマツダのファンミーティングを訪れたときオーナーたちに聞いてわかった。彼らは異口同音に「リトラクタブル・ヘッドライトだから」と答えた。空力上も歩行者保護の観点からも不利で消滅したレトロ装備が、新世代の目には新鮮に映るのである。

ハイパフォーマンスカーも、スポーティー系を好む若者たちにとって羨望の的だ。13館設けられたパビリオンのひとつでは、スバルのSTI系モデルを専門に扱うショップが華やかなブースを展開していた。スタッフが見込み顧客に解説を始めた途端、それを聞こうと若者たちが集まってきた。前述のACIによるヤングクラシック誌の2023年10月号でも「インプレッサWRX STI」の進化過程が、描き下ろしのイラストレーション付きで掲載されている。

近い将来日本車は、欧州のヒストリックカー市場を盛り上げる一端を担うとみた。それを支えるのは若者。ということは自動車ファンの高齢化阻止の効果も期待できるかも、と考えた冬のボローニャだった。

2002年「三菱ランサーエボリューションVIIMR」は、5万6600ユーロ(約888万円) 。

こちらのランサーエボリューションは1996年のⅣ。走行18万キロメートル。価格応談だが、冒頭のホンダNSX同様にASIのヒストリックカー登録済ゆえ、税金や保険が優遇される。

スバルのスポーツ系モデル専門ショップが展開したブース。その壮観さに、多くのビジターが圧倒されていた。

説明が始まると、若者たちが次々と集まってきた。

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