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クルマ最終更新日:2024.05.20 公開日:2023.09.28

学生がクルマづくりに熱中! 日本発の自動車ベンチャーは生まれるか!? 「学生フォーミュラ」への挑戦<後編>

独創性に満ちた未来のエンジニアを育てよ! 学生自らが考え、設計し、製作した車両で、ものづくりの技術を競い合う「学生フォーミュラ」に密着。今回はその後編をお届けする。

文・写真=小林祐史

写真=公益社団法人 自動車技術会

最後まで完走するのは難しい!?

コースを疾走するホンダテクニカルカレッジ関東のクルマ。

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筆者は、この学生フォーミュラを2010年代から見ているが、参加初年度の学校は、そのほとんどが最後まで完走することができない。完走どころか、車検すら合格できない学校も少なくない。それはICVクラス、EVクラス問わずだ。

その主な理由は、レギュレーションが実際の自動車生産と同様に厳しく、安全面においてもしっかりと担保できるものになっていなければならないからだ。クルマづくりは生半可な知識では良いもの、安全なものは出来ない、ということを学び検証できる場としても機能している。

そのため、好成績を残す学校は何年もかけて、真面目にクルマづくりに向き合ってきたところばかり。先輩から後輩へノウハウを伝授するだけでなく、ものづくりに対する真摯な姿勢を受け継いできたところが強豪校となっている。これは実社会にも通ずるところだろう。

日本には世界屈指の自動車メーカーが何社もあり、さらには電装メーカーから素材メーカーまでありとあらゆるサプライヤー企業が存在する。日本における学生フォーミュラの強みとユニークな点は、そこで働く現役のスタッフが積極的に学生をサポートしてくれるところにある。

ものづくりを通して、将来の優れたエンジニアを育てたいという思いが学生たちを育て、今日の自動車産業の発展に少なからず寄与してきたことは疑う余地のない事実だ。

検査官の厳しい目が光る本番直前の車検の様子。

自動車メーカーの試作・修理のプロたちが、応急処置を施してくれる「修理工房」も。学生たちにとって心強い味方だ。

故障が見つかったクルマを、現役のプロたちが応急処置。

ゲストで訪れたホンダF1技術者の田辺豊治氏。学生フォーミュラでは、現役バリバリの先輩からアドバイスをもらえるなんてことも!

狭く複雑なショートコースでタイムアタック

コースは幅4mと狭く、全長も0.96kmと短い。

「学生フォーミュラ」に挑む学生たちは、大会当日までに車を完成させるのではなく、その数カ月前から書類を提出し、シェイクダウンと呼ばれる試走や、さまざまな事前審査を済ませて本番に臨む。

本番でも厳格な車検が行われるので、自分たちのクルマをレギュレーションに合わせて作り込んでおかないと、動的性能の審査(実走行)のスタートラインにつくことさえできないのだ。

車検を無事に通過したら、ようやくコースで走行することになる。エコパのP10駐車場に設定されたコースは、通常のサーキットと違いコースが狭い。幅は4mほどしかなく全長も0.96kmと短い。さらにコースレイアウトはクランクやヘアピンなどのコーナーが連続する低速コースで、アクセルを全開にする時間は少ない。

コースサイドには白線が引かれ、その線上に一定間隔でパイロンが置かれる。このパイロンを飛ばすとタイムが2秒加算となるペナルティが課せられるルールだ(パイロンに当たっても動かなければペナルティは無し)。

ICVクラスの場合、ギアを5〜6速に入れることはほぼ無い。つまりドライビングは低速ギアをシフトチェンジしつつ、アクセルを細かく操作するものになる。ところが前述のリストリクターがあるため、燃調のセッティングをしっかり作り込んでおかないと好タイムが期待できない。さらにタイムアタックの動的審査(オートクロス)とは別に、耐久性とエネルギー効率(燃費)が審査対象になる動的審査(エンデュランス)もあるので燃調が肝となる。

EVクラスがトルクベクタリングを盛り込むのは、この狭くて低速のコーナリングが連続するからだ。EVクラスもICVクラスと同様にエネルギー効率(電費)が審査されるので、エネルギー(電費)管理を含めたシステムやドライビングを行うことになる。

大接戦となった第20回大会。果たして結果は……

京都工芸繊維大は昨年のディフェンディングチャンピオン。

日本自動車大学校のクルマ。

コーナーを勇ましく駆け抜ける名城大学のクルマ。

静岡理工科大学のクルマのリアウイングには、大会会場として使用するのが今回で最後となるエコパへ「ありがとう」というメッセージが書き込まれていた。

学生フォーミュラで最後の動的審査となるのが、上位6校によって行われるエンデュランス競技「トップ6」だ。今回はいずれの審査も接戦が続き、近年稀に見る僅差の戦いとなっていた。

そんな緊迫した戦いの中ではじまった「トップ6」。だが、前年度の優勝者であり、1位につけていた京都工芸繊維大のクルマが走行中にラジエーターファンのパーツが脱落。対して2位につけていた工学院大学がチェッカーフラッグを見逃して走行を続けるダブルチェッカーという違反をしてしまう。そのため、そのペナルティをどのように扱うかで審議が長時間に及ぶことになった。

結局、トップ6後の表彰式は中止となり、閉幕から4日後の9月6日に最終結果が発表された。結果は以下のとおりで、連覇を目標としていた京都工芸繊維大が見事念願を達成した。

『学生フォーミュラ 日本大会2023 公式結果』
1位 カーナンバー1 京都工芸繊維大学 856.49点
2位 カーナンバー3 日本自動車大学 716.81点
3位 カーナンバー14 岐阜大学 689.32点
4位 カーナンバー7 工学院大学 669.98点
5位 カーナンバー8 名城大学 656.26点
6位 カーナンバー20 神戸大学 655.83点

なお来年2024年の学生フォーミュラは、会場を2006年から使用していたエコパから、愛知県常滑市のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)に移すことが決定した。まだ会場や動的審査のコースといったレイアウトが決定していないが、多少の変更はあるだろう。その変更にどの大学がいち早く対応するかが次回の見どころになるだろう。

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2023年大会で二連覇を達成した京都工芸繊維大のメンバーとクルマ。

2021年に開催された学生フォーミュラの走行動画の模様。学生フォーミュラ公式YouTubeより。

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