ヴォクシー・ノアが、僅差で最も安全な車の賞を獲得!JNCAP2022、13車種の安全性能実験結果を発表
新車の安全性能を評価する自動車アセスメント(JNCAP)において、2022年度の実験で最も安全性に優れた車種がトヨタの「ヴォクシー・ノア」に決定し、栄誉あるファイブスター大賞の座に輝いた。2022年度の全車種の得点とともに、評価基準や今後の動向をみてみよう。
JNCAPとファイブスター大賞
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が自動車の安全性能を評価する自動車アセスメント(JNCAP)。そのJNCAPで最高評価となる星5つ(ファイブスター)は、「衝突安全性能評価」と「予防安全性能評価」のそれぞれでAランクを獲得し、さらに2022年度からは「事故自動緊急通報装置」搭載という条件を満たす車種に授与される。
そして、年度内にファイブスター賞を獲得した車種の中で、最高得点を得た車種に贈られる賞が「ファイブスター大賞」だ。
2022年度は試験項目に「走行する自転車に対してのブレーキ性能」が追加され、予防安全性能91点満点、衝突安全性能100点満点、事故自動緊急通報装置8点満点の、計199点満点となっている。
大賞はヴォクシー/ノア、全13車種の結果は?
5月23日に「自動車アセスメント2022」の表彰式が行われ、2022年度に評価が実施された車種13車種のうち、ファイブスター賞が7車種とファイブスター大賞が正式に発表された。特筆すべき安全装置を初めて装備した車種などに贈られる特別賞は、今年度は該当なしであった。まずはファイブスター賞を受賞した7車種を紹介しよう。
・トヨタ ヴォクシー/ノア 186.44点
・スバル ソルテラ/トヨタ bZ4X 186.16点
・トヨタ シエンタ 185.33点
・日産 サクラ 184.92点
・ホンダ ステップワゴン 183.92点
・三菱 eKクロス EV 182.04点
・トヨタ カローラ クロス 179.68点
2022年度の頂点に位置するファイブスター大賞は、トヨタ ヴォクシー/ノアが獲得した。上記得点からも分かるように上位の車種は僅差であり、大賞受賞車種に限らず、広く新車の安全性向上が感じられる結果でもあった。
以下は、惜しくもファイブスター賞受賞には至らなかった6車種。ファイブスター賞には事故自動緊急通報装置の搭載が必須条件で、6台中5台が非搭載だった。マツダ CX-60は、合計点ではヴォクシー・ノアよりも高い188.68点を獲得しているが、衝突安全性能がBランクであったため、ファイブスター賞受賞を逃す結果となった。
・マツダ CX-60 188.68点
・フォルクスワーゲン ゴルフ 166.08点
・ダイハツ ムーヴ キャンバス 161.04点
・ダイハツ ハイゼット カーゴ・アトレー/スバル サンバー バン/トヨタ ピクシス バン 155.19点
・スズキ アルト/マツダ キャロル 148.57点
・スズキ ワゴンRスマイル 147.36点
ヴォクシー・ノアの安全性能
表彰式では、トヨタ自動車 CVZ ZH1 チーフエンジニア兼トヨタ車体 領域長 黒柳 輝治氏が、ヴォクシー・ノアの安全・安心への取り組みについて説明した。
■予防安全性能
ヴォクシー・ノアは、従来よりもセンサーの検知範囲が広がった。歩行者や自転車に加えて、交差点での車両や自動二輪車との出合頭事故なども想定。対応する事故範囲を広げた衝突被害軽減ブレーキなど、複数の予防安全システムをパッケージ化して標準装備している。また、踏み間違いなどによる衝突被害を軽減する加速抑制装置を装備し、歩行者や自転車を検知して加速を抑制する「低速時加速抑制機能」も追加している。
■衝突安全性能
軽量化や視界向上を両立させ、高効率のエネルギー吸収と荷重分散を実現した衝突安全ボディ。衝撃吸収ボードを各部に採用した、歩行者障害軽減構造。サードシートまで守る6つのSRS エアバッグに、全方位コンパティビリティボディ構造で、万が一の衝突時に乗員の傷害低減に貢献する。
■事故発生時の救助
事故時にエアバッグが開いた場合、自動で専門オペレータに接続して警察や救援機関に通報するための、車載通信機を標準装備。車両データから重傷確率を推定し、ドクターヘリの出動を要請するという、先進事故自動通報システムにも対応している。
さらに高度に、難易度が高くなる実験内容
国土交通省とNASVAでは、2023年度の試験方法についても発表している。まず「ペダル踏み間違い時加速抑制装置性能試験」という、最近ニュースでも話題になるペダル踏み間違い事故を想定した試験に、歩行者への衝突シナリオが追加される。一方、バックモニター等が法規で基準化されるのに伴い、「後方視界情報提供装置性能評価」の試験は廃止となる。
また、2024年度以降には、従来のような固定壁への衝突ではなく、走行してくるムービングバリアとの前面衝突試験が導入される予定だ。クルマ対クルマの衝突では軽い方のクルマがより大きな衝撃を受けるが、ムービングバリアを利用することで、この車重差を実験に反映することができるようになる。
さらに、衝突被害軽減ブレーキ、歩行者頭部保護性能試験などの内容を変更する旨も発表されている。自動車アセスメントの評価と、それに対する自動車メーカーの努力が新車の安全性能を飛躍的に向上してきたことは間違いなく、今後もさらなる向上のために評価内容も変化していくわけだ。
同時に、ユーザーがクルマの安全性能を重視し、自動車アセスメントの結果を参考にすることも重要だ。それによって、メーカーの安全性能技術の向上はさらに重視され、スピードアップするはずだ。もちろん、これらの技術はあくまで運転支援であり、最後に最も大切なのがドライバーの安全運転であることは言うまでもない。