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最終更新日:2023.02.02 公開日:2023.02.02

冬こそオープンで走ろう!──マセラティの新型スパイダー「MC20チェロ」に試乗

青空を独り占めしたいなら、オープントップのスポーツモデルはいかが。モータージャーナリストの小川フミオがイタリア・シチリア島でマセラティの新型スパイダー「MC20チェロ」に試乗。その魅力をお届けします。

文=小川フミオ

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マセラティの新しいオープンモデル

マセラティ MC20 チェロ|Maserati MC20 Cielo
美しい色合いをみせてくれる3層コートの塗装が目を惹きます

 オープントップのスポーツモデル、マセラティMC20チェロに試乗しました。その舞台はイタリアのシチリア。電動格納式ハードトップを持つスパイダー(車高の低いオープンスポーツカー)ゆえ、南イタリアの青い空を存分に楽しんで、というのがマセラティの意図のようです。

 日本にいると、オープンは魅力的ですが、幌を開けたのは買った直後の一回だけ、なんてオーナーが少なくないようです。やっぱり気恥ずかしい?

 欧米なんて、カッコいい、と思うと、お子さんだろうがおじいちゃん、おばあちゃんだろうが、笑顔で手を振ってくれます。それに手を振り返せれば、すばらしい路上のコミュニケーションの成立です。

 半袖にキャップをかぶってのMC20チェロのドライブ。走っていると、周囲のひとが手を振ってくれます。今回はシチリア南東部のノートという街から、すこし内陸の丘陵地帯を走り、そのあとラグーサという地中海のヨットリゾートへと下りていきました。

キャビン背後のエンジンフードにはマセラティのシンボルが大きく掲げられています

 このクルマのエンジンは新開発の3リッターV型6気筒。ツインターボ装着で、最高出力は630ps(463kW)もあります。これをキャビン背後、後車軸の前に搭載。つまりミドシップで後輪駆動。エンジンのバンク角は90度まで拡げて、搭載位置を出来るかぎり低く、大きなターボチャージャーも両脇に配置。重心高を下げ、ハンドリング向上を狙っています。

 出自はスポーツカーですから、車内で切り替え式のドライブモードには「スポーツ」に加えて「コルサ(レース)」や「ETC(トラクションコントロール)オフ」のモードが設定されています。サーキットでもたっぷり楽しめるように作られたクルマなのです。

心がとろける

 いっぽうで、今回のMC20チェロは、さきに発売されたMC20クーペと少し趣きを異にしています。

「スポーツ性と快適性をバランスさせたGT、というコンセプトを重んじました」。エンジニアリングを担当したマセラティ本社のフェデリコ・ランディーニ氏が、現場でそう教えてくれました。

 なので、スポーツモードでは、クーペと遜色ない走りを楽しめるいっぽう、「GT」なるドライブモードでは、すこし足まわりが快適方向に振られています。つまり、乗り心地がよく、長距離走っても疲れにくい設定なのです。

シンプルな造型だけに素材の質感が際立つコクピット

 時速50kmまでなら走行中でも電動で開閉可能なハードトップ。開けると、ウインドシールドが低めに設計してあることも手伝い、風を感じて走ることができます。

 サイドウインドウを上げれば、風の巻き込みは抑えられます。でもそうすると、せっかくスパイダーに乗っている意味が薄れてくるような気がして、私は、冬でもサイドウインドウを下げて走ります。幌にクッションが入っているカブリオレは、サイドウインドウ上げてもオーケイ。ちょっとしたクルマ界のお約束です。

 エンジンはトルクがたっぷり。低回転域から力がもりもり出てきて、2000rpmあたりからターボチャージャーがしっかり回りはじめて、さらにもう一段、力強い加速力が湧き出します。乾いた排気音とともに、アクセルペダルに敏感に反応するエンジンのフィールを味わっていると、心がとろけそうです。

 ブレーキはカーボンセラミックを使っているので、強力なストッピングパワーですが、足とブレーキが直結したような繊細なタッチで効きをコントロールできます。ステアリングも同様。人間の感覚に忠実。つまり、とてもよく出来たスポーツカーなのです。

海とつながるマセラティ

低い開口部に葉巻型のノーズ、張り出したフェンダーとそこに埋め込まれたヘッドランプと、古典的なモチーフを採用するMC20

 マセラティは、MC20チェロのサブネーム(チェロは空の意)にひっかけて、シチリアでは、空にまつわるさまざまなイベントを用意してくれていました。

 ドライブのスタート地点になった、南東部のノトという街で、ブルーが印象的な作品を手がけるアーティスト、セルジョ・フィオレンティーナ氏のアトリエ訪問。ブルーはまさに夏が終わりかけて湿気が少なくなってきたシチリアの真っ青な空の色でもあります。

 そのあと、ヨットリゾートであるラグーサのマリーナまで走り、「マセラティ・マルチ70」なるマルチハル(多胴)のヨットで、地中海をちょこっとセイリング。マセラティが技術協力とともにメインスポンサーを務めていて、私(たち)が乗船した直前に、マルタ島の「ロレックス・ミッドシーレース」で3位を獲得して戻ってきたところでした。

セルジョ・フィオレンティーナ氏のアトリエで、ヘッド・オブ・デザインのクラウス・ブッセ氏が即興で手がけたスケッチ

 地中海の上にひろがる青い空と、そこにそそりたつマストに張られた濃紺のセイル。マセラティのシンボルであるトライデント(三叉の鉾)が描かれています。

 マセラティ創業の地ボローニャの広場には、トライデントを手にするネプトゥヌス(ポセイドン)の大きな像があります。もちろんネプトゥヌスといえば海をおさめる神。なんだか、つながりが強いですね。

 青とか空とかをつながっているのは、なんと豊かな世界であることか。トップを下ろせば、頭上には青い空しかないマセラティ MC20チェロをはじめ、爽快な楽しさを堪能できたシチリアのドライブでした。

力強く張り出したフェンダーとシザードアの組合せが特徴的

マセラティ MC20 チェロ|Maserati MC20 Cielo
全長×全幅×全高:4669x1965x1218mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1560kg
駆動方式:MR
エンジン:3000cc V型6気筒
最高出力:630ps(463kW)@7500rpm
最大トルク:730Nm@3000-5500rpm

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