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連載2022.11.01

『イタリア発 大矢アキオの今日もクルマでアンディアーモ!』第32回「賃貸ワンルーム物件化」進行中! イタリアのキャンピングカー・ショー<前編>

そろそろキャンピングカーはいかが? 人気コラムニスト、大矢アキオがヨーロッパのクルマ事情についてアレコレ語る人気連載。第32回は、イタリアのキャンピングカー・ショーの会場から最新トレンドをお届けする。

文と写真=大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)

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「イル・サローネ・デル・キャンパー」会場で。ウィンドーには「シャワー別」のアピールが。

「イル・サローネ・デル・キャンパー」会場で。ウィンドーには「シャワー別」のアピールが。

漂う楽観ムード

イタリア北部パルマの「イル・サローネ・デル・キャンパー」は、ヨーロッパでは、デュッセルドルフ、パリと並ぶキャンピングカー専門ショーとしてファンの間で知られている。第13回を迎えた2022年は、9月10日から18日まで開催された。

9月はメーカーにとって、モデルイヤー切り替えのタイミングである。同時にユーザーからすると、ヴァカンス期を終えて「新型が欲しい」「そろそろキャンピングカーの世界に入門するか」と思いたつ頃、という絶好のタイミングだ。

会場のフィエレ・ディ・パルマ(パルマ・メッセ)には、欧州最大のキャンピングカー製造グループ「トリガノ」のものを含む41ブランドがブースを構え、関連業者や団体を含めると計300の出展者が参加した。来場者は9日間で11万人を数えた。2020年は5万4000人であったことを考えると、今回いかに活況を呈したかがわかる。

とくに週末は大盛況だった。筆者が訪れた土曜日は、朝から強い雨が降っていたにもかかわらず、高速道路「太陽の道」A1号線のインターチェンジから地元警察の誘導まで出るほどの渋滞ができた。駐車場は早くから満車となった。そのため筆者は地方道の脇に路上駐車し、片道2.2キロメートルを歩いて会場に向かうことになった。そうしてたどり着いた会場内では、ほとんどの展示車に内覧待ちの列ができていた。

2022年のイタリア観光産業は好調だ。背景には、ツーリズムに影響する新型コロナウィルスの各種規制がほぼ解除された解放感があることはたしかだ。ショーと深く関わりがあるキャンプ業界の団体「FAITAフェデルキャンピング」によれば、夏シーズン4カ月間の加盟施設における客数は、新型コロナウィルス規制前の2019年と比較して7%増を記録した。

2022年夏にイタリアを訪れた外国人は、国別ではドイツとオーストリアからが1位・2位を占め、それにデンマーク、オランダ、スイス、チェコ、ポーランドが続いた。滞在期間も2019年の6.8日から約7日へと、微増ではあるが長くなった。施設経営者たちにとっては、利益率を圧縮するガス・電気代といった光熱費の暴騰が頭の痛いところだが、全体としては楽観的ムードに包まれている。

小さく、カラフル、そして風呂・トイレ別

キャンピングカー産業も追い風が吹いている。イタリアの「キャラバンおよびキャンパー工業会」によると、2021年の販売台数は、前年比で11.92%増を記録した。筆者が考えるにこの数字は、感染を避けて安全な旅をしたかった旅行者や、宿泊制限を設けたホテルを避けた人々が支えたと思われる。2022年の第一四半期も前年比9.6%増と好調な数字を叩き出している。

いっぽうで不安もある。イタリア製”キャブコン(キャブ・コンバーター)”型キャンピングカーのキャビン&シャシーとしてもっともシェアが高いステランティス社製「フィアット・ドゥカート(デュカト)」およびその姉妹車の供給体制だ。折からの半導体不足でデリバリーが不安定になっているのだ。それを反映し、今回の会場では、その影響が少なめのフォード製シャシー&キャビンが多くみられた。

次にトレンドを見てみよう。筆者が最後に訪れた2020年は「小型化元年」といえたが、その潮流は今回も続いていた。さまざまなブランドが全長「5.99メートル」「6.99メートル」といった、まるでディスカウント・ストアの値札のような数字を前面に打ち出している。とくに今回、あるブランドは全長7メートル未満でも5人乗車可能を売りにしていた。

そのアピールは功を奏したようだ。筆者の前に並んでいたある家族のお父さんは、「子どもが生まれる前に、レンタルのキャンピングカーでこの世界の楽しさを知ったんだ。今は3人の子持ち。だからこのモデルを真剣に考えているんだ」と話してくれた。

ジョッティライン(イタリア)の1モデル。コンパクトなサイズは、2年前から続くトレンドである。ジョッティライン(イタリア)の1モデル。後部には「(全長)5.99メートルの張り紙が」。

全長7メートル未満で定員5名を売りしているチャレンジャー(フランス)のラインナップ。全長7メートル未満で定員5名を売りしているチャレンジャー(フランス)のラインナップ。

チャレンジャー「380グラファイト・アルティメート」のインテリア。これは駐車状態だが、クッションのアレンジを変更することにより、5名がシートベルトを装着して乗車できる。チャレンジャー「380グラファイト・アルティメート」のインテリア。これは駐車状態だが、クッションのアレンジを変更することにより、5名がシートベルトを装着して乗車できる。

 日本でいうところのワンボックスカーをベースにした”バンコン”のバリエーションも拡大がみられる。メーカーとして唯一出展していた「フォード」のほか、今回は「メルセデス・ベンツ」の「Vクラス」やその商用バージョンである「ヴィート」をベースにしたプレミアム感溢れるモデルも数々みられた。

フォード・トランジット・カスタム・ナゲットは、ロング・ホイールベース版(写真)など、バリエーションの充実を図ってきた。フォード・トランジット・カスタム・ナゲットは、ロング・ホイールベース版(写真)など、バリエーションの充実を図ってきた。

フォード・トランジット・カスタム・ナゲットの室内。さすがにシャワーは車外だが、全長約4.9メートルに4人用ベッドとキッチンを備えている。フォード・トランジット・カスタム・ナゲットの室内。さすがにシャワーは車外だが、全長約4.9メートルに4人用ベッドとキッチンを備えている。

あるキャンピングカーのメーカーによる、「メルセデス・ベンツVクラス」をベースにした車両。2口コンロ+シンクのユニットが引き出せる。あるキャンピングカーのメーカーによる、「メルセデス・ベンツVクラス」をベースにした車両。2口コンロ+シンクのユニットが引き出せる。

 第2のトレンドはボディカラーである。2020年にはワインレッドを提案するブランドが一部にみられたのに対し、今回は「カルマン」をはじめ多くのブランドがグレーをラインナップしていた。ある企業の担当者は、「実際には白よりも直射日光の影響を受けてやや暑いことは事実ですが」と認めたうえで、「他と差を強調したいユーザーに訴求力があります」と説明してくれた。

モデルによっては、小さなサイドウィンドウと相まって、現金輸送車か装甲車に見えなくもない。だがそれだけに見方によってはアーマード的雰囲気が漂っている。ちなみにイタリアでは早くも2022年秋から、グレー系キャンピングカーを頻繁に見かける。

カルマンモービル(ドイツ)のブース。グレーのボディカラーを前面に押し出していた。カルマンモービル(ドイツ)のブース。グレーのボディカラーを前面に押し出していた。

カルマンモービル(ドイツ)のスタッフと。「フォード・トランジット」ベースにバン・コンハージョン。カルマンモービル(ドイツ)のスタッフと。「フォード・トランジット」ベースにバン・コンバージョン。

 そして2023年モデルにおける第3のトレンドといえば、「風呂・トイレ別」だ。それが大書されているさまは、日本の不動産屋さんにおける賃貸ワンルームアパートのようでもある。実際に車内に入ってみると、狭いスペースの中に見事実現している。

ローラーチーム(イタリア)クロノス295Mのトイレ+洗面台。ローラーチーム(イタリア)クロノス295Mのトイレ+洗面台。

 ヨーロッパの一般家屋に関していえば、バスタブ(もしくはシャワー)とトイレが一緒の場合が多い。面積が広く、風呂に入る頻度が日本より少なく、かつお湯をジャバジャバと外に流さないため、双方が一緒でもそれほど不便を感じない。

しかし、キャンピングカーの場合、中心的稼働シーズンは夏であり、シャワーの使用頻度は高い。使用後トイレまわりが水浸しになるのは、やはりいただけないユーザーが一定数いたことは容易に想像できる。

すぐ右隣には、シャワー用ブースが設けられており、厚めの伸縮式パーテーションで区切ることができる。すぐ右隣には、シャワー用ブースが設けられており、厚めの伸縮式パーテーションで区切ることができる。

 これまで日本人よりも大きな家に住み、限られたスペースにおける効率を考えることがあまり得意でなかった欧州のキャンピングカー製造ブランドがその挑戦を始めた。どこまで進化できるか、来年もお手並み拝見といこう。

<第2回に続く>

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