販売絶好調の「軽EV」は軽自動車を超えた出来栄え!──日産サクラと三菱ekクロスEVに初試乗
軽自動車とEV(電気自動車)の相性は抜群だった!? いま話題の軽EV、「日産サクラ」と「三菱ekクロスEV」の2台を大谷達也が試乗した。その出来栄えやいかに。
販売絶好調の軽EV
今年5月に相次いで発表された2台の”軽EV”、日産サクラと三菱ekクロスEVのセールスが好調だ。サクラは発表から2ヶ月半で2万5000台以上を、そしてekクロスEVは発表から3ヵ月でおよそ6000台を受注したという。ちなみに、ekクロスEVの月間販売目標は850台なので、目標の7倍を超えるペースで売れていることになる。
念のために申し上げておくと、サクラとekクロスEVは兄弟車である。日産自動車と三菱自動車は、軽自動車を共同で企画する合弁会社のNMKVを2011年に設立。同社を軸として、日産と三菱が共同で開発し、三菱の工場で生産する体制を確立しており、これまで各ブランドで4車種ずつの軽自動車を発売してきた。
サクラとekクロスEVは、この体制で開発・生産される5番目の軽自動車であり、初のEVである。ちなみに、サクラとekクロスEVは外観が異なるだけで中身は実質的に共通。そこで、これ以降は便宜上”サクラ”と呼ぶが、同様のことはekクロスEVにもあてはまることを申し添えておく。
この走りで軽自動車!?
サクラに試乗して驚くのは、その静粛性の高さである。EVだから当たり前といえばそれまでだが、たとえば高速域で加速したり、坂道を上る際にも、エンジン音がまるで聞こえずに「すーっ」と速度を上げていく様はまさに新感覚。自分の運転しているクルマが軽自動車であることを忘れさせるほどのインパクトがある。
これまでの軽自動車と大きく異なるのは、走りの力強さも同じこと。サクラの最高出力は64ps。これは業界の自主規制に従ったものなので、エンジンを搭載した従来の軽自動車と何ら変わらない。注目すべきは最大トルクのほうで、一般的な軽自動車のおよそ2倍に相当する195Nmを発揮する。そして、市街地などを走っている力強さに直接関係するのは、実は最高出力よりも最大トルクのほう。
というのも、一般的にいって最高出力がモノをいうのは高速域の走り。これに対して、最大トルクはより実用域に近い環境での力強さを表しているから。ちなみに、日産セレナに搭載されている2.0リッター・ガソリン・エンジンの最大トルクは200Nm。それと変わらないトルクをサクラのモーターは生み出すのだから、走りの力強さは推して知るべしというべきだろう。
乗り心地やハンドリングはどうか
サクラは乗り心地とハンドリングのバランスという点でも優れている。サクラのバッテリーはおよそ200kg。これをボディのフロア付近に搭載しているため、ベースとなった日産デイズよりも重心が低くなり、これが走行安定性に大きく寄与している。このため、乗り心地を優先した柔らかめのサスペンション・スプリングを採用してもクルマの安定性を確保でき、結果として乗り心地とハンドリングのバランスを改善することができた。しかも、事故の際にもバッテリーにダメージが及ばないよう、バッテリー全体を強固な構造で保護しており、これがボディ剛性の向上にも貢献。これもまた、乗り心地とハンドリングのバランスを改善するうえで大きく役立っていると考えられる。
しかも、サクラは実用性も高い。
たとえば、EVの性能でよく取り沙汰される「一充電の航続距離」は180km。もっとも、これはあくまでもカタログ値なので、実際に安心して走れるのは100km程度だろう。ちなみに日産の調査によると、日本のユーザーの53%は、1日あたりの走行距離が30kmを下回っている模様。つまり、ほとんどのユーザーは3日に1度充電すれば十分というわけだ。
自宅に普通充電器があれば、およそ8時間でサクラは満充電になる。よくEVは「充電するのが面倒」ともいわれるが、自宅で充電できればガソリンスタンドに行く必要もなくなるので、むしろ便利との見方もできる。しかも、一般的にいってエンジン車のガソリン代よりもEVの電気代(普通充電の場合)のほうが安上がりなので、経済性の面でもメリットがあるのだ。
魅力的なのも当然!?
サクラは部品の多くをデイズと共用したほか、バッテリー容量を20kWhと小さくすることで、233万3100〜294万300円(ekクロスEVは239万8000〜293万2600円)というEVにしては手頃な価格を実現。
しかも、国から55万円の補助金が受けられるほか、自治体が独自に補助金を交付するケース(東京都の場合は最大で60万円)もあるので、エコカー減税とあわせると最大で116万5600円の優遇を受けられる(補助金は国や自治体の予算額に達すると打ち切られる恐れもあるので注意が必要)。
複数台所有が可能で自宅に普通充電を設置できるユーザーにとって、サクラやekクロスEVが魅力的な軽自動車と映るのも当然のことだろう。