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最終更新日:2023.06.14 公開日:2022.03.15

『イタリア発 大矢アキオの今日もクルマでアンディアーモ!』第25回 “イタリア版JAF”は意外な特典がザクザク!?

イタリア・シエナ在住の人気コラムニスト、大矢アキオがヨーロッパのクルマ事情についてアレコレ語る人気連載。第25回は、イタリア版のJAFことACIについてご紹介。ACIに入会すると、どんなサービスが受けられる?

文と写真=大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)

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筆者の知人パオロ・ファルドーニ氏。ACI会員歴は四半世紀におよぶ。

違反者講習費もドンと来い

イタリアにおいて日本のJAFに相当する組織は、ACI(Automobile Club Italia=イタリア自動車クラブ)である。その概要と歴史、活動の一部については本連載の第1回で記した。今回は、ではACIに入会すると、いったいどんなサービスが受けられるのか? に焦点を当てて解説しよう。

ACIは、イタリアで非営利公共団体という位置づけである。会員数は約100万名。JAFの2000万名(2021年)からすると20分の1ということになる。会費はJAFが入会金+年会費の2階建てなのに対して、ACIは年会費に1本化している。更新割引はないものの、3つの年会費がある。

システマ(基本会員) 75ユーロ(約9,800円)
ゴールドプレミアム   99ユーロ(約13,000円)
Club         35ユーロ(約4,600円)

この3タイプ、根本的なところではロードサービスの内容(レッカーのけん引距離、代替交通手段の補償等)が異なる。また、システマとゴールドプレミアムのサービス範囲は、欧州連合域内と一部指定国だが、Clubはイタリア国内限定となる。

JAFのようにロードサービス対象が車ではなく会員、つまりマイカー以外に対する救援も受けられるのはゴールドプレミアムのみだ。それも「イタリア国内は年2回まで。欧州連合諸国と一部指定国は年3回まで」という制限がある。ただし、「事前登録しておいたクルマに関しては、たとえ会員が同乗していなくてもロードサービス対象」という面白い特典も付加されている。

さらにゴールドプレミアムは、燃料タイプ(ガソリン、軽油)の入れ違い対応、ビデオチャットによる健康相談から、果ては水道など家の修繕レスキューといった、手厚いサポートがある。弁護士費用の補償もクルマだけでなく、歩行中や、自転車&電動キックスケーター運転中の事故も対象となる。

ただし、たとえ最安のClubでも「交通違反の点数復活教習費用補償」が付与されている。イタリアの交通違反点数は日本の加点方式と違って減点式である。点数が少なくなり免許停止の恐れが出てきたドライバーは、民間の自動車教習所で12時間の講習を受けると点数を再獲得できる。その受講費用である円換算にして25,000円前後を、ACIが補償してくれるというものだ。

長年の会員に聞く

『JAF Mate』誌に相当する会員専用誌は『l’Automobile(ラウトモービレ)』だ。月刊で、近年は電子版も発行されている。表紙に記された「l’anno 124°」はACIの前身が発足した1898年から124年目であることを示す。近年のものは約130ページだ。

筆者の手元にある2022年3月号を目次順に紹介すれば、特集、新車、新技術、セレブ、音楽、ロードインプレッション、テスト、統計、さらには歴史と、市販自動車誌に比肩する、もしくはそれを超える内容だ。ちなみに広告は、上述のゴールドプレミアムへのグレードアップを誘う社告、ACI系列の保険会社、そしてユニセフといった慈善団体のみである。

ACIの会員誌『ラウトモービレ』。イノヴェーション・クルマ・ライフスタイルがモットーだ。

 ところで筆者の長年の知人パオロ氏はACIのメンバーで、会員歴は25年、つまり四半世紀に及ぶ。今回の執筆を機会にいろいろと聞いてみた。

「ACIに入る以前は、ツーリングクラブの会員だったよ」

と彼は語る。ツーリングラブは、正しくは「Touring club italiano」という。1894年の自転車旅行愛好会に遡る、ACIと並ぶ歴史ある自動車クラブ(非営利団体)だ。公的機関的色彩はACIよりも薄い。会員になると基本的なロードサービスが付帯しているが、基本的には自動車旅行を充実させるための情報提供が中心だ。そのためパオロ氏も

「なぜACIに変えたのかは記憶にないが、おそらく、当時からACIはドライバーが希望するサービスが、より充実していたからだと思う。これからもそうだろう」と回想する。

どのようなサービスを利用したのか?も聞いてみた。

「タイヤのパンクで、何度もお世話になった。バッテリー上がりのときも助けてもらったよ」

いっぽう、ACIのサービスで、もっとこうあってほしいと思うことは?との質問には

「高速道路や国道に、より多くの救援車両を投入すべきだ。そして最寄りの修理工場やユーザーの自宅までより迅速に行けるよう体制を整えてほしいね」

と語る。本連載第20回「イタリア版ロードサービスのお世話になった話」で記したように、救援を待つ時間と積載車で運ばれている時間は、実際以上に長く感じられるものだ。パオロ氏の気持ちはわかる。

まだまだあるぞ

ACIはロードサービスや会員誌以外にも、さまざまな施設で優待がある。アミューズメントパーク、ホテル、博物館、動物園など、テリトリーの広さはJAFのそれに近い。イタリアらしいところでは各地のワイナリーにおけるワイン直売所、面白いところでは税理士報酬、私立通信制大学の学費といった優待もある。

そういえば、トリノにある地下パーキングに入ったときのことだ。ACIの巨大マークが壁面に記してあった。優待利用可能の意味かと思ったら、なんとACIの関連会社が経営する駐車場だった。市内4カ所にあって、1時間あたり料金が一般料金では円換算で約260円のところ、会員だと約240円になるという。長時間や頻繁に駐めるドライバーには、それなりに恩恵がある。

ACIの関連企業が経営する地下駐車場のひとつ。トリノにて。

 ACI経営といえば、もっとスケールの大きなものがある。ローマ郊外の「ヴァッレルンガ・サーキット」である。スポーツカーのブランド「デ・トマゾ」が1960年代にモデル名としたことで一躍有名になったこのサーキットは、1967年からACIが所有している。コースを使った安全運転教室は会員だと20%引きが適用され、312ユーロ(4万円)になる。

ヴァッレルンガ・サーキットはACIの所有。レースのほか、古典車イベントにも使われる。後方には「(ACIの)安全運転教室にどうぞ」の看板が。

ヴァッレルンガ・サーキットには、ローマ生まれのイタリア人ドライバー、ピエロ・タルッフィ(1906-1988)の名が冠せられている。

 実は筆者も十数年前にACIに入会していたことがある。ヒストリックカー・ラリー「ミッレミリア」参加にあたり日本のB級ライセンスに相当するものが必要で、その取得条件としてACI加盟があったためだ。

市内の窓口で申し込んだら緑色のクーラーバッグをくれるので何かと思ったら、地元支部オリジナルの入会記念だった。翌年は、日本に長期滞在する必要があったため会員資格を更新しなかった。だが筆者はそのクーラーバッグの質が意外に良いのをいいことに、後年もかなり長きにわたって行楽に役立てて”なんちゃってACIメンバー”を気取っていたのだった。

かつての筆者のACI会員証(手前。現在とはデザインが異なる)と、競技用ライセンス(奥)。

ACIシエナ支部のオリジナルの入会特典だったクーラーバッグ。

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