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最終更新日:2020.11.17 公開日:2020.11.17

高齢ドライバーの71.1%以上に免許返納の意思あり。それでも返納できない理由とは?

高齢ドライバーによる交通事故対策については、運転免許更新時の認知機能検査の義務化や、運転免許の自主返納の制度化などが知られている。そんな中、自主返納の意思を持つ高齢ドライバーが7割以上でありながら、一方では免許返納に積極的にはなれないドライバーも多いという調査結果がこの度発表された。どのような要因があるのか、調査結果からひも解いてみよう。

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運転免許返納の意思は7割以上

© fusho1d – stock.adobe.com

 警察庁では、高齢ドライバーの交通事故対策として、これまでに運転免許の自主返納を積極的に呼びかけてきた。2019年には、返納件数が60万件を超え、2010年の約9倍以上にまで伸びた。この件数だけを見れば、自主返納が浸透してきたといえるだろう。

 しかし、現実には、まだ高齢ドライバーの関わる交通事故が減ったとはいえない状況であり、その危険性が指摘されることも少なくない。それでも運転を続ける高齢ドライバーはどのような理由や事情を抱えているのだろうか。大手カーリース会社のナイル株式会社が実施した調査からは、高齢ドライバーたちの状況を知ることができるので見てみよう。

出典:ナイル株式会社

 まず、免許返納をする予定があるかを聞いたところ、実に7割以上の高齢ドライバーが「返納予定がある」と回答していた。これは、前述した返納率の上昇を見ても納得の結果である。

出典:ナイル株式会社

 返納を行うきっかけとしては、「運転に自信がない・不安がある時」39.7%、次に「年齢」29.6%と続いている。例えば、「うっかりミスが多くなったら」や「度々ぶつけるなどして、違反で捕まったら」などのときに、運転に自信がなくなるという。また、年齢に対しては、「遅くとも80歳頃には」「満75歳の誕生日を迎えたら」など、一定の年齢の節目を意識しているようであった。

 そして、高齢ドライバーの定義は65歳以上だが、返納においては運転免許更新時の認知機能検査が義務付けられる75歳以上が返納タイミングだと思っている人が多いようである。

運転免許返納率の地域差

出典:ナイル株式会社

 なぜこのように、免許返納に慎重になるのか。その理由について、住んでいる環境が免許返納できる状況かを聞いた結果から探れそうだ。回答結果では、「返納できない状況である」と回答した高齢ドライバーが過半数を超えていた。この、返納できない状況とはどのようなケースがあるのだろうか。

出典:警察庁「75歳以上の運転免許保有者に係る返納率(2016年)」

 少し古い資料だが、2016年に警察庁が発表した「75歳以上の運転免許保有者に係る返納率」を見てみよう。明らかとなったのは、返納率の地域差である。返納率が高い順から、大阪府5.81%、東京都5.79%、静岡県4.46%、兵庫県4.29%、神奈川県4.27%と、いずれも政令指定都市を抱えている。(東京都は特別区のため例外となる。)下位5県においては、その中では最も高い宮城県を除き、政令指定都市がない県が並んでいる。最も少ない三重県では1.93%で、大阪府の3分の1程度である。この要因としては、電車やバスなどの公共交通機関が充実していないと、移動手段としてのクルマが手放せないことが考えられる。

出典:ナイル株式会社

 実際、今回の調査でも、免許返納予定はないと回答した高齢ドライバーたちの6割が、「クルマが必要だから」と回答し、その理由は仕事や生活においてクルマが不可欠だとする声が多かった。公共交通機関の充実度合いが低い地方であれば、免許返納に慎重にならざるを得ないという事情もあるのだろう。

出典:ナイル株式会社

 しかし一方で、高齢ドライバーによる交通事故割合が増加している事実もある。本調査では、「運転する時に不安になることはない」と回答した高齢ドライバーが約6割にものぼっているが、警察庁の「高齢運転者交通事故発生状況(2019年)」では、交通事故における高齢ドライバーの人的要因は、「発見の遅れ」がなんと8割を超えていた。これは、身体機能や反射神経の低下が原因だと推測できる。

出典:株式会社ADKホールディングス

 関連する調査としては、今年2月に、総合クリエイティブ会社のADKクリエイティブ・ワン「モビリティチーム」が発表した「高齢ドライバーへの認知機能チェック」調査結果が参考になりそうだ。「危険群」「MCI(軽度認知障害)」「正常」の3つに分類した調査結果では、「危険群」と「MIC」と診断された高齢ドライバーが2割以上存在していた。ちなみに、「軽度認知障害」は、認知症の前段階ともいわれており、人によってはクルマの運転に必要な「認知・判断・操作」に支障をきたす可能性も指摘されている。

 さらに、「危険群」に属する高齢ドライバーの半数以上が、バックや車庫入れ時にヒヤリハットを経験していることも調査では判明している。いかにクルマが生活に必要であったとしても、疑わしい症状が出た場合には速やかに医療機関にかかることを心がけたい。

 今回の調査では、免許返納の意思がある高齢ドライバーでも、住環境が原因でクルマを手放せない人が多くいることが明らかとなった。クルマの運転を続けていく場合、必要であれば、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置が搭載されている安全運転サポート車(サポカー)に乗り換えることも検討するなど、身体能力の低下をフォローする手段も考える必要がありそうだ。

【「運転免許の返納についての調査」概要】
調査主体:ナイル株式会社
調査地域:全国
調査対象:クルマの運転をしている70歳以上の男女1,418人
調査方法:インターネット調査
調査期間:2020年10月16日~10月26日

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