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最終更新日:2019.11.13 公開日:2019.11.13

【東京モーターショー2019】大型商用車・日野/UDトラックス編

東京モーターショー2019の青海展示棟Aホールに出展した、国内大型商用車メーカー4社から、日野とUDトラックスのコンセプトカーや市販車最新モデルを取り上げる。

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日野はトラックではなくプラットフォームを世界初公開

 日野は、近未来が舞台のアニメ「あの日の心をとらえて」を上映し、持続可能な未来を実現することをアピール。そして、そのコンセプトモデルとして、「FlatFormer(フラットフォーマー)」を世界初公開した。

モビリティ用プラットフォームのコンセプトモデル「FlatFormer」

モビリティ用EVプラットフォームのコンセプトモデル「FlatFormer」。全長4700×全幅1700×全高335mm。6輪駆動で、リチウムイオンバッテリーの容量は50kWh、モーターの出力は170kW。

 「FlatFormer」は、モビリティ上で人が活用できる空間を最大化するため、EVならではの機構により全高335mmという薄さを特徴とする。ボディを載せ替えることで、さまざまなサービスに対応させられるコンセプトだ。

「FlatFormer」を活用した一例のデリバリーサービス用。

 上画像は、「FlatFormer」を活用した一例で、宅配用ボディを搭載したもの。そのほか下画像のように、サービスに応じたさまざまなボディが提案されていた。

「FlatFormer」を活用したモビリティのイメージ。木漏れ日をイメージした内装の旅客サービス用(右中程およそ3時半の方位)、3Dプリントユニットを用いて利用者に合わせた商品のカスタムメイドを行える小売りサービス用(上12時の方位)など、全15種類が提案されていた。

子どもたちにも人気だった「路肩待避型ドライバー異常時対応システムシミュレーター」

バスのドライバーという設定の路肩待避型ドライバー異常時対応システムシミュレーター。シミュレーター系はどこでも子どもたちに人気だった。

 日野は研究中の最新技術として、ドライバーの異常を車両が検知した際に車両を安全に停車させる「路肩待避型ドライバー異常時対応システム」、略して「EDSS(Emergency Driving Stop System)」を出展。EDSSは自動運転の技術を活用した機能で、ドライバーの異常を検知すると、クルマが周囲の安全を確認した上で自動的に路肩に待避するというものだ。今回はそのシミュレーターが出展され、子どもたちが並んで順番を待つほどの人気だった。

世界でも屈指のハイテクを装備した大型トラック「プロフィア ハイブリッド

日野の主力の大型トラック「プロフィア」のハイブリッドモデル。世界屈指のハイテク機能も備える。

 日野は今回、市販車として「プロフィア ハイブリッド」を出展。同車最大の特徴は、AIを活用した世界初のハイテクシステムを搭載していること。GPSや車載センサー、3D高精度地図情報をもとに、AIが100km先までの勾配から走行負荷を予測して最適なハイブリッド制御を行い、環境負荷を低減させるという仕組みを備えているのだ。

勇退した”ダカールの鉄人”菅原義正選手が最後に乗った2019年仕様「レンジャー」

2019年のダカール・ラリーを走った517号車。ダカール・ラリーを引退した”ダカールの鉄人”菅原義正選手が最後に乗ったマシンだ。日野の中型トラック「レンジャー」を大改装した大型ラリーマシンだ。

 1983年の初参戦以来、ダカール・ラリーの連続最多出場36回と最多連続完走20回というギネス記録を持つ菅原義正選手(78歳)は、2019年4月にダカール・ラリーからの引退を発表。今回展示された517号車(チーム内では1号車)は、義正選手が最後に搭乗したマシンとなる。

 ちなみに2020年の日野チームスガワラは、義正選手の次男で同チームのエースである照仁選手が1号車を引き継ぎ、2号車には新たに招聘された塙郁夫(はなわ・いくお)選手が搭乗し、新体制でダカール・ラリーに挑む。

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続いてはUDトラックス!

ハイブリッド実験車や自動運転車などを出展したUDトラックス

 UDトラックスは2030年までにEVトラックの量産化に向け、エネルギー効率や積載量、航続距離、静粛性などの技術開発に取り組んでいる。今回は、そのノウハウを得るために開発されたハイブリッド実験車「雷神」が初公開された。

将来のフル電動トラックの開発につながるハイブリッド実験車「雷神」

ハイブリッド実験車「雷神」。UDトラックスの主力大型トラック「クオン」をベースに開発された。

 EVトラックを開発するための前段階として、現在UDトラックスではハイブリッドトラックの開発に注力しているという。中でも力が入れられているのが、食品倉庫などでの使用を想定し、必要に応じてEVモードで走行できる機能を搭載したハイブリッドトラックだ。「雷神」はそのための実験車である。

国内初のレベル4の自動運転実証実験用トラック「風神」

レベル4自動運転実証実験車「風神」。「雷神」と同じく「クオン」をベースに開発された。

 「風神」は、RTK-GPS(※1)や3D-LIDAR(※2)などのセンサーを搭載しており、自動運転レベル4(※3)の走行を行うことが可能だ。2019年8月に、UDトラックス、日本通運、ホクレン農業協同組合連合会が共同でレベル4の自動運転実証実験を実施。その際に「風神」は、砂糖の原料となるてん菜の運搬を自動運転で行った。

※1 RTK-GPS:RTKとはReal Time Kinematic(リアルタイム・キネマティック)の略。移動する物体の位置を、瞬時に数cmの高精度でリアルタイムに位置を測定するGPSの測定方法のこと。
※2 LIDAR:LIDAR/LiDAR(ライダー)とはLight Detection and Ranging(光検出と測距)もしくはLaser Imaging Detection and Ranging(レーザー画像検出と測距)の略。レーザーを対象物に照射した際の散乱光を測定し、対象物までの距離やその性質などを分析するリモートセンシング技術のこと。より空間的に広範囲をセンシングできるものは3D-LIDARと呼ばれることがある。
※3 自動運転レベル4:現在、世界各国の自動運転のレベル設定は、モビリティの専門家が参加する米国の非営利団体SAEインターナショナルが掲げる5段階の自動運転レベルに準拠している。レベル4は「特定条件下における完全自動運転」を意味する。

近未来のコンセプトモデル「Quon Concept 202x」

「Quon Concept 202x」。大型商用車4社のブースの中でもひときわ大型で迫力があった。

 「Quon Concept 202x」は今から10年以内の近未来を想定した、より高度なスマートロジスティクス(※5)を実現するというコンセプトのトラック。ディスプレイやエクステリアのパーソナライゼーション、ドライバーをサポートするAI、カメラモニタリングシステムなどを備えている。

※5 スマートロジスティクス:UDトラックスでは、IoT、AI、ICT技術の進展で実現するスマート社会に不可欠な物流システムを指しており、効率的で生産性が高く、安心かつ人に優しい持続的な物流という意味で使われている。

日本未発売の新興国向けの大型トラック「クエスター」

新興国向け大型トラック「クエスター」。展示車両のモデル名は「GWEトラクター」。世界60か国以上でトラックを発売するUDトラックスには、日本未発売の車種もある。

 現在、UDトラックスはボルボ・グループ(乗用車を開発、生産するボルボ・カーズとは別グループ)の傘下にある。同グループのグローバルな技術と日本のものづくりを結集したのがこの大型トラック「クエスター」だ。2013年に新興国向けに発表され、2019年1月にはマイナーチェンジを実施。新興国向けトラックとしては初めて、同社が開発した電子制御式オートマチックトランスミッション「ESCOT」が標準搭載された。

こちらは、「雷神」と「風神」のベース車で、国内で販売されている主力大型車「クオン」。展示車両のモデル名は「GKトラクター」。搭載されている直列6気筒エンジン「GH11TD型」は、最高出力460馬力、最大トルクに至っては2200N・mを絞り出す。


 東京モーターショー2019の国内大型商用車4メーカーのうち、日野だけはプラットフォームをメインに展示しているのが印象的だった。乗用車の話ではあるが、およそ100年前の黎明期、自動車メーカーはプラットフォームのみを製造し、ボディはコーチビルダーに任せるという分業制が採られていた。EV技術により、プラットフォームはメーカーが、ボディはビルダーがという分業制の時代が再来するのかもしれない。そんなことを思い起こされた。

 また、UDトラックスのブースを見て感じたのは、大型商用車のための自動運転技術の確立に、メーカーが想像以上に力を入れていることだ。商用車のドライバー不足は深刻な状況になってきており、自動運転技術は乗用車以上に待望されている。華やかな一方、そんなことを考えさせられる東京モーターショー2019の大型商用車ブースだった。

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