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最終更新日:2019.04.22 公開日:2019.04.22

ムカデダンスをしたくなる!?「シティ」と、専用トランクバイク「モトコンポ」!【オートモビルカウンシル2019】ホンダ編

4月5日から7日まで開催された、旧車・ヒストリックカーの祭典「オートモビルカウンシル2019」。国内メーカー、海外メーカーの日本法人・正規輸入代理店、旧車・ヒストリックカーの専門店などが出展しているのが特徴だ。ホンダブースでは、1980年代に人気を博したコンパクトカー「シティ」と専用コンパクトバイク「モトコンポ」が展示された。

E-AA型「シティ R」1982年式。1981年11月に発売された、乗用車モデルが高出力タイプが「シティ R」だ。同時発売は、乗用車モデルの低燃費タイプの「シティE」、商用車モデルの「シティ プロT」(2シーター)および同「F」(4シーター)。その後、「シティ ターボ」(1982年9月)、「シティ R マンハッタン ルーフ」(同年11月)が登場。さらに、「シティ ターボII」(1983年10月)、「シティ カブリオレ」(1984年7月)、「シティ ハイパー シフト」(1985年8月)などが発売され、翌9月に「シティ」は生産を終了した。

 今年のホンダのテーマは「Honda ものづくり-継承されるM・M思想~生活を豊かにする”人中心”のコンセプト~」。M・Mとは”マン・マキシマム/メカ・ミニマム”のことで、「人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に」という同社のクルマ作りにおける基本思想だ。

 展示されたのは、1981年に発売したトールワゴン(当時はトールボーイと表記された)タイプのコンパクトカー「シティ」と、同時に発売された、「シティ」搭載用の”トランクバイク”「モトコンポ」の2車種。さらに、同時期に発売された携帯発電機「デンタ EM400」も展示された。

 そしてその往年の2車種+1機に対応させる形で、M・M思想を受け継いで2018年に発売された軽バン「N-VAN」と、その中に搭載したバイク「クロスカブ50」、そしてハンディータイプ蓄電器「LiB-AID(リベイド) E500」も展示された。

こちらは現行モデルたち。軽バン「N-VAN」に積み込まれた、50ccのクロスオーバータイプのバイク「クロスカブ50」(ボディカラーが赤のモデルは販売終了)。その下に置いてあるのが、ハンディータイプ蓄電器の「リベイド E500」。

都会的な行動派の若者をターゲットとしたニューコンセプトのコンパクトカー「シティ」

 「シティ」は、1981年10月に”新感覚のFFニューコンセプトカーライブビークル”と銘打たれて発表された。”カーライブ”のライブとは、生き生きとした、活動的な、という意味の「LIVE」であり、”都会的な感覚を持つ行動派”の若者をターゲットにしていた。キャッチフレーズは、「シティは、ニュースにあふれてる」。

「シティ R」のサイドビュー。全長3380×全幅1570×全高1470mm、ホイールベース2220mm、トレッド前1370/後1370mm。車重700kg。排気量1231cc・CVCC水冷直列4気筒OHCエンジン「ER」(燃料供給キャブレター式)、最高出力67ps/5500rpm、最大トルク10.0kg-m/3500rpm。サスペンション前後共に独立懸架式マクファーソン・ストラット。ブレーキ前・ディスク/後・リーディング・トレーリング(PCV付き)。

 従来のクルマの概念にとらわれず、居住性、燃費、動力性能などの機能を最大限に追求。その一方で、それらを実現するためのエンジンやサスペンションなどの機構は最小にという、M・M思想に基づいた設計がなされていた。

 「シティ」は現行車種としては存在していないが、コンパクトカーの系譜は「フィット」に続いている。商用の「シティプロ」の血脈は、今回展示されていた「N-VAN」にも流れているといえるかもしれない。

「シティ R」のリアビュー。この時代の衝突安全基準は現在ほど厳しくなかったため、構造的にコンパクトに作られていた。そのため、現在の軽自動車よりも小さいぐらいのボディサイズだ。「N-VAN」と比較すると、「シティ R」は全幅こそ95mmあるが、逆に全長は15mm短く、全高も380~490mm低い。

マッドネスの「シティ・イン・シティ」覚えてる?

 ♪ホンダ、ホンダ、ホンダ、ホンダ~シーティ! 「シティ」のCMイメージソングには、アップテンポなスカの名曲「シティ・イン・シティ」(マッドネス)が起用された。そして、CMで披露されたムカデダンスを友人とやってみた、という思い出も持っている方も多いのではないだろうか。クルマのことはよくわからなくても、当時の子どもたちはCMで「シティ」の名だけは知っているというほど、人気を博したクルマだったのである。

ホンダスタッフが個人所有していた、マッドネスの「シティ・イン・シティ」のシングルレコードも展示された。

折り畳んで「シティ」に搭載できるトランクバイク「モトコンポ」

 そして「シティ」の大きな特徴が、ハンドルなどを折り畳んで同車に搭載できるように専用開発された50ccのトランクバイク「モトコンポ」の存在だ。「シティ」と同時発売で、「シティ」と「モトコンポ」を用途に応じて使い分ける”6輪ライフ”や、「シティ」に「モトコンポ」を搭載して活用する”クルマ×バイク”の掛け算的な新しい使い方を創出することを狙った、当時世界初の試みだった。

AB12型「モトコンポ」1982年式。全長1185×全幅535×全高910mm、車重45kg。排気量49cc・空冷2サイクル単気筒エンジン「AB12E型」、最高出力2.5ps/5000rpm、燃費70.0km/L(時速30km定地走行テスト値)。登坂能力約11度。最小回転半径1.3m。始動方式キック。燃料タンク容量2.2L。後方に見えるのは、「シティ」、「モトコンポ」、「デンタ」の1/4スケールのモックアップモデル。

「モトコンポ」のフロントビュー。ハンドルなどをボディに収納できてコンパクトにし、「シティ」に搭載することができた。

片手で持てる重量1.8kgの携帯発電機「デンタ」シリーズ

 「シティ」や「モトコンポ」とは関係ないが、同時代のホンダ製品が展示されていたので紹介しておこう。1979年11月に発表された、携帯発電機「デンタ」シリーズである。下写真は、交流・直流両用の「EM400」。同時に3タイプ発売され、「EM400」とスペックは同じだが自動電圧制御装置とオイル警告灯を標準装備した上位モデルの「EX400」、直流専用の「ED300」があった。

携帯発電機「デンタ EM400」1979年式。全長355×全幅250×全高325mm、重量1.8kg。連続定格出力(交流)50Hz 100V-330VA、60Hz 100V-400VA/(直流)50・60Hz共に12V-8.3A。排気量59.8cc・強制空冷単気筒4サイクルエンジン。燃料タンク2L。


 あれだけ人気のあった「シティ」だけに、現在は後継モデルがないのが残念だ。その名を復活させてほしいというファンも少なくないことだろう。ホンダ広報に話を聞いたところ、なんと「シティ」は海外では現行車種が販売されているという。

 ただし、難しいのがボディタイプの変化だ。日本で「シティ」といえばコンパクトカーのイメージ。しかし現行「シティ」はボディが大型化し、4ドアセダンとして販売されているのだ。海外で4ドアセダンに使用している車名を、国内でだけそれとは別のコンパクトカーにつけるといったことは厳しいそうだ。

 では、そのまま4ドアセダンとして販売すればいいのかというと、それもやはり日本においてはイメージが合わないと考えたようである。現行「シティ」は実は国内でも2014年から販売されているが、「グレイス」と車名を変えている。どちらにしろ、あれだけ人気のあった「シティ」が国内のラインナップに現在は存在しないことは残念なところだ。

2014年12月に発売された「グレイス」。国内では、ホンダのセダンの中で最も安価なコンパクトタイプとして2019年現在もラインナップされている。オーストラリアやインドなどでは、「シティ」として販売中だ。日本人の感覚からすると、「シティ」のイメージはあまり感じられないのではないだろうか。

 また「モトコンポ」のようなユニークな50ccバイクを、今後また発売する可能性があるかどうかも質問してみた。すると、2輪市場が縮小しているため、こうした特殊なバイクを開発するのは難しいという答えだった。

 「シティ」と「モトコンポ」の誕生からもうすぐ40周年。バイクを積めるコンパクトカー、コンパクトカーに載せられる折りたたみ式のトランクバイク。こんなユニークなコンビが見られたのも、1980年代だったからだろう。もうすぐ「令和」を迎えるが、活気が今よりも遙かにあったあの頃のような時代がまた訪れてくれることを期待したくなる「シティ」と「モトコンポ」だった。

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