フォトで見る、フェラーリ80年代のフラッグシップモデル「テスタロッサ」!
「BB512i」の後継モデルとして1984年に登場し、世界的な人気を誇ったフェラーリ「テスタロッサ」。 日本国内に輸入された第1号ということで、オートモビルカウンシル2018のオート・スペチアーレ・ブースで展示されていた「テスタロッサ」を撮影してきたので、お届けしよう。
サイドスリットが大きな特徴のフェラーリ「テスタロッサ」(1985年式)。今回の画像は、すべてオートモビルカウンシル2018のオート・スペチアーレ・ブースで撮影した。日本への輸入第1号車で、イタリア仕様なので左側にしかドアミラーがない。
フェラーリは、1960年代に新興メーカーのランボルギーニに勝負を挑まれ、1970年代に入ってからもどちらが最高のスポーツカーを世に送り出すかで競っていた。そしてランボルギーニが、1974年に登場させたのが、革新的なデザインのスーパーカー「カウンタック LP400」(※1)だ。そしてフェラーリがその半年後に送り出したのが、「365GT4/BB」である(※2)。
「365GT4/BB」のBBとは”ベルリネッタ・ボクサー”を意味し、ボクサー(※3)12気筒エンジンを搭載したベルリネッタ(イタリア語で”小型スポーツクーペ”の意味)というコンセプト。
BBコンセプトはその後に、70年代スーパーカーブームで「カウンタック」と覇を競った「512BB」(1976~81、※2)に引き継がれ、さらに排気ガス規制対策で燃料供給をキャブレターからインジェクションに変更した「512BBi」(1981~84、※4)と続き、3代で終了となる。
そして約5L(正確には4943cc)の排気量と、バンク角180度のV12エンジンをミッドシップに搭載するというコンセプトを引き継ぎ、フェラーリのフラッグシップモデルとして1984年に登場したのが、今回紹介する「テスタロッサ」だ。
※1 別記事『空前絶後のスーパーカー「カウンタック」を、今更ながら徹底解説!』に詳報
※2 別記事『1970年代スーパーカーブームをけん引した1台! フェラーリ「512BB」with「365GT4/BB」』に詳報。「365GT4/BB」と「512BB」を紹介している。
※3 ボクサーとは本来水平対向エンジンのことだが、実際にはバンク角180度のV型エンジンが搭載されている。水平対向とV型ではピストンの配置が異なるため、別の形式である。
※4 別記事『【オートモビルカウンシル2018】「テスタロッサ」、「512BBi」、「ディーノ」など、フェラーリを集めてみた!』に詳報。今回撮影した「テスタロッサ」のほか、「BB512i」、「328GT」、「348GT Competizione CORSA」などを紹介した。
パーツ単体で見てみると、例えばヘッドランプの造形などはとてもシンプルで時代を感じるのだが、全体としてみたときに30年以上前のクルマとは思えないデザイン。
「テスタロッサ」と、「512BBi」。1980年代を担ったフェラーリのフラッグシップモデルは、「512BB」および「512BBi」(外見は同一)と「テスタロッサ」となる。美しいが70年代テイストを感じる「512BBi」に対し、「テスタロッサ」は新しさを感じる。「512BB」も「テスタロッサ」もカロッツェリア(デザイン工房)のピニンファリーナが担当した。
世界的な人気を博してバブル期の日本にも数多く輸入された
撮影したオートモビルカウンシルは、旧車・ヒストリックカーの展示会。後方には別のショップのポルシェが見える。
「テスタロッサ」は1950年代に活躍したフェラーリのレーシングカー「250テスタロッサ」にちなんで命名され、世界的な人気を博した。「テスタロッサ」とはイタリア語で赤い(rossa)頭(testa)という意味で、エンジンのカムカバーが赤いことに由来している。これは「250テスタロッサ」から引き継がれた伝統である。
総生産台数は、1984年から1992年までの8年間で約7000台。フェラーリのフラッグシップモデルとは思えないほどの台数が生産された。世界的にも人気を博したが、バブル期の日本にも多数が輸入され、最も多く輸入されたフェラーリのフラッグシップモデルとしての記録を有している。
また、米国のポリスアクションTVドラマ「マイアミ・バイス」において、主人公のジェームズ・ソニー・クロケット捜査官が途中から自分専用の公用車として白い「テスタロッサ」を使用し(潜入捜査官で、麻薬ディーラーを演じているので派手なクルマに乗るという設定)、カーアクションを展開。「テスタロッサ」人気に一役買うこととなった。
テスタロッサのバンク角180度V12エンジン「F113A型」。下側に見えている赤い結晶塗装を施された部分が、「赤い頭」の由来である、赤いカムカバー。
「テスタロッサ」はワイドスパンなのも特徴。先代の「512BB」および「512BBi」が1830mmなのに対し、「テスタロッサ」は1976mmとなっている。また、マフラーは左右2本ずつの4本出し。12気筒なので3気筒ずつ束ねている。
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「テスタロッサ」といえばサイドスリット!
最大の特徴のサイドスリットに迫る!
「テスタロッサ」の特徴といえば、サイドスリット。空気の流れが見えるようなデザインであり、速さをイメージさせるのに大いに役立っているといえる。フロントグリルには縦のステーがあるため格子状に見えるが、リアやエンジンフードにもスリット構造が採用されている。まさに、「テスタロッサ」はスリットに囲まれているデザインなのだ。
「テスタロッサ」の特徴はサイドのスリットで、フィンは5枚構成。さらに、エンジンフードとテール部分にもスリット構造がある。またこの画像ではわずかにのぞく右リアのタイヤハウス内側にも、下向きのスリットが見える。サイドスリットで取り込んだエアの一部をタイヤに対して下向きに当てることでタイヤの回転に逆らわないようにしつつ、リアブレーキを冷却しているものと思われる。
サイドスリットのアップ。この部分を事故で破損してしまうと修理が難しいため、フィンをすべて取ってしまい、大型のサイドエアインテークとした「テスタロッサ」もあるという。逆をいえば、フィンが取り払われた「テスタロッサ」は事故車の可能性が高いということだ。ちなみに画像左下の白いプレートには、カロッツェリア「ピニンファリーナ」とある。
サイドスリットを前から。同時期に弟分のV8モデルとしてラインナップされていた「348」も「テスタロッサ」にならってサイドスリットが設けられていた。ただし、フィンの数が少ない。
ドアを開けると、サイドフィンの構造がわかる。完全に上下をセパレートしているドア側面に固定されたフィンと、デザイン性を確保するために近い細いフィンが交互に並べられている。
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コックピットとスペック!
落ち着いた雰囲気のインテリアとスペック
車内はオーソドックスなデザインで、落ち着いた雰囲気。30年以上経つクルマとは思えないほど、きれいに維持されている。ちなみに「テスタロッサ」は日本に最も輸入されたことなどがあって、平均的な中古車市場が1000万円台前半ぐらいで、フェラーリの中では入手しやすいモデルとされている。
スペックに関して、惜しむらくはスーパーカーとして最高速度が時速290kmであるところだろう。時速300kmオーバーを目指してほしかったと、70年代スーパーカーブームを経験した世代は感じているのではないだろうか。
「テスタロッサ」は1992年まで生産された後、再び5L・12気筒を表す「512」に、「テスタロッサ」の「TR」を組み合わせた「512TR」にバトンタッチし、過去のモデルとなったのである。
運転席側から撮影。ドアミラーは左のドアにしかついていない。この輸入第1号車は、2,800万円の値がつけられていた。1980年代当時の価格は約2500万円。
助手席側から撮影。ダッシュボードなどはさすがに素材の醸し出す雰囲気に歴史を感じる。
【スペック】
全長×全幅×全高:4485×1976×1130mm
ホイールベース:2550mm
トレッド(前/後):1518/1660mm
フレーム:スチール製チューブラーフレーム
タイプ:2シートクーペ
ステアリング:ラック&ピニオン
車重(乾燥):1506kg
型式:E-F110
現車ボディカラー:Rosso Corsa
現車年式:1985年
【エンジン】
種類:F113A型バンク角水平対向12気筒DOHC4バルブ
搭載位置:ミッドシップ縦置き
排気量:4943cc
ボア×ストローク:82×78mm
燃料供給:ボッシュ機械式燃料噴射
圧縮比:9.3:1
最高出力:390ps(287kW)/6300rpm
最大トルク:490N・m(50.0kg・m)
潤滑システム:ドライサンプ
タンク容量:120L
【駆動系】
駆動方式:後輪駆動
トランスミッション:5速MT
クラッチ:ツインプレート
【足回り】
サスペンション(前/後):共にダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後):共にディスク
タイヤ(前/後):共に225/50VR16
【走行性能】
最高速度:時速290km
0→100km(ゼロヒャク):5.8秒
0→400m:13.6秒
0→1000m:24.1秒
2018年12月11日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)