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クルマ2018.10.02

警視庁・神奈川県警・JAF合訓練レポート

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JAFの特別支援隊の訓練の一環として開催された、警視庁・神奈川県警・JAFの合同訓練の様子。JAFの特別支援隊員は、救助活動のサポートを担当し、上に乗り上げてしまった車両が崩れないよう固定するといった作業を行い、救助完了後に車両を牽引して撤去した。人命救助は警察のレスキューが担当。

 JAFは9月12日・13日に特別支援隊員のための訓練を実施。その一環として警視庁、神奈川県警、JAFの3者による合同訓練が13日に東京都多摩市のJAF中央研修センターにて実施された。集中豪雨による水害・土砂崩れを想定とした、「災害発生時における放置車両等排除活動訓練」である。

 今回は基本的なシチュエーションは同一だが、状況が異なる2種類の訓練が行われた。基本シチュエーションは、「2018年9月13日(木)15時頃、台風25号による集中豪雨のため、警視庁多摩中央警察署管内の各所で道路冠水などが発生。地域住民からの通報によると、川崎街道(東京都と神奈川県の境界付近)で冠水によるものと思われる事故車両の中には運転手が取り残されている」というもの。

 そして、「現場に急行した警察官が確認したところ、緊急通行車両の通行に支障を来していることから、災害発生時のJAFとの覚書協定に基づき、警視庁からJAF関東受付指令室に放置車両の排除要請があった」として、訓練がスタートした。

1回目はクルマが折り重なっている上に要救助者ありの状況

 1回目は、「走行していた車両2台(セダンとステーションワゴン)が、冠水地点を走行中にエンジンが停止。水流に押し流された2台の冠水車両は重なる形で、川崎街道の片側の車線を完全に塞いでしまう。なおかつ下側の車両(セダン)には運転手が閉じ込められており、意識を失っている」という設定でスタートした。

 水が引いたとして、まずは住民の通報を受けて現場に急行したパトカーが登場。下側のセダンはドアを開けられない状況であるため、救助は困難と判断。レスキュー隊、救急車、JAFを要請し、それぞれが現場に向かうことになった(※1)。川崎街道は災害時の緊急交通路に指定されており、大至急道路を通行可能にする必要があるため、JAFも同時に出動要請がされたという流れだ(緊急交通路などに関しての記事はこちら)。

※1 今回、実際には東京消防庁や神奈川県川崎市消防局などは訓練に参加していない。

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最初に到着したパトカーの警察官が状況をチェック。下側のセダンにはドライバーは意識を失ったまま車内に閉じ込められており、返事がない。そこで、車両撤去並びに安全な救助活動をサポートするためにJAFの出動が要請され、特別支援隊員が現場に到着したところ。

JAFロードサービス特別支援隊とは?

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今回の合同訓練に参加した、警視庁・神奈川県警の警察官並びにJAFの特別支援隊員。オレンジ色のユニフォームがJAF特別支援隊員。1列目のJAF特別支援隊員の隣の、紺に胸元がオレンジ色のユニフォーム5名は、警視庁の合同レスキュー隊の警察官。その左隣の紺の制服の上に水色のジャケットを装着している2名は神奈川県警の警察官。その隣の2名は、警視庁所属のパトロールカーによる警邏担当の警官。2列目の緑とオレンジのユニフォームの6名は、警視庁警備部災害対策課特殊救助隊SRTチームの警察官。

 警視庁からの要請でJAFから出動したのが、ロードサービス特別支援隊だ。同隊は、被災地において被災車両の迅速な排除作業を行ったり、被災者からの要請に増えるために構成された特別部隊で、2004年に結成された。2018年現在、全国合計で112名がいる。被災地のJAF該当地方本部がJAF本部に特別支援隊の派遣を要請する形で出動する。

 今回の訓練では36名が参加。当初は57名が参加する予定だったが、その内の21名は西日本豪雨並びに北海道胆振(いぶり)地震にかかわる活動で実際に出動した関係で、今回の訓練には不参加となった。

→ 次ページ:
折り重なったクルマにどう対応たいおうしたのか!?

1回目の訓練の様子・まずはドライバー救助のサポート

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1回目の訓練の状況の模式図。中央の折り重なっている車両が放置された事故車両。黒がパトロールカー。そして事故車両と右のパトカーの間の2台が、JAF特別支援隊のレッカータイプ・ロードサービスカー。

 訓練に話を戻すと、実際に1回目、2回目の訓練に参加した隊員は、それぞれ隊長を含めて4名ずつだ。隊員は多摩中央警察署警備課長の指揮の下、警視庁レスキュー隊が安全に救助活動を行うためのサポートが最初の任務となる。具体的には、上に乗り上げてしまっているステーションワゴンの固定作業を行い、その後に警視庁多摩中央署、町田署、南大沢署の合同レスキュー隊6名による救助活動を安全に行えるようにするのだ。

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下側のセダンの上に乗り上げてしまったステーションワゴンを固定する作業を進める隊員たち。隊長の指揮の下、常に声を掛け合いながら、入念な安全確認をしつつ作業を行う。訓練ではあるが、一歩間違えれば崩れてきた車両に押しつぶされる危険性はゼロではない。とにかくステーションワゴンが動いてしまわないよう、前輪には車止めをかますなど、徹底的な安全への配慮をしながらの作業が行われる。

警視庁合同レスキュー隊がドライバーの救助を開始!

 JAF隊員と入れ替わる形で、警視庁レスキュー隊はセダン内に閉じ込められた意識を失っているドライバーの救出作業をスタート。ドアがロックしてしまっているため、右リアドアのウインドーの破片が飛び散らないようテープを全面に貼ってから叩き割り、車内へ。無事、ドライバーは救出され、搬送された。

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警視庁の合同レスキュー隊。右リアドアのウインドーに飛散防止のテープを貼っているところ。ウインドーを割ってドアロックを解除し、素早く車内に隊員が入っていった。

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車内に隊員が入り、ドライバーの救助活動を開始。この後、すぐにドライバーは車外に出され、担架で搬送された。搬送時には、応援に駆けつけた神奈川県警の警察官も加わり、管轄をまたいでの救助活動が行われた。

再びJAF特別支援隊員の出番! 2台を移動させよ

 その後、再びJAF隊員の出番。レッカータイプのロードサービスカーに装備されているウインチで上側のステーションワゴンを吊り上げて、その間にセダンを移動。ステーションワゴンも地面に降ろすと、無事撤去できる状況となり、2台を牽引できるよう駆動輪に装着する「ドリー」(車輪つきの台車)などの牽引用の器具を組み付けると、撤去完了となった。

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クレーンでステーションワゴンを持ち上げてセダンに荷重がかからないようにしたところで、そのセダンを移動。これでステーションワゴンを地面に降ろせるようになった。車体側にスリングベルトを装着した後、そこにウインチワイヤーをフックして「ウィングロード」を持ち上げている。

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後輪にドリーを組み付けられ、前輪はアームに固定されたセダン。駆動輪は牽引する際に抵抗となってしまうため、セダンのような4WD車(FR車も同様)の場合、こうして後輪にドリーを組み付けて牽引しやすくする。

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一方のステーションワゴンはFF車のため、前輪をアームに載せてしっかりと固定するだけで牽引可能。このほか、前輪が左右に動かないよう、ステアリングもベルトで固定する作業が行われる。

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無事2台とも撤去され、川崎街道は通行可能に。

→ 次ページ:
救助困難な状況に警視庁の特別部隊が出動!

2回目は警視庁警備部災害対策課特殊救助隊SRTチームも登場!

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2回目の訓練の状況の模式図。中央の2台が放置された事故車両。黒がパトロールカー。緑は警視庁特殊救助隊の特別救助車両。事故車両と右のパトカーの間の2台が、JAF特別支援隊のレッカータイプ・ロードサービスカー。

 そして2回目も、同じ川崎街道が舞台。「大雨により緩んだ地盤が土砂崩れを起こし、家屋や立木などを飲み込んで川崎街道に。そして、走行中の車両も巻き込まれてしまう。車両にまだドライバーが取り残されているところにもう1台が衝突、助手席側を上にして横転した状態で道路を塞いでしまった。どちらの車両のドライバーも意識を失っている状況である」というもの。

 追突された車両がコンパクトカーで、横転した車両が1回目にも登場したステーションワゴン。コンパクトカーのドライバーは1回目のセダンと同様にJAF特別支援隊の隊員が演じているが、ステーションワゴン内はさすがに横転しているため、ダミー人形が用いられた。

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2回目の訓練がスタート。がれきに押し流されてきたコンパクトカーにステーションワゴンが追突し、横転した状況。どちらもドライバーが意識不明で閉じ込められた状態だ。

 訓練の冒頭は1回目と同じで、住民の通報を受けて警察官がパトカーで現場に急行して状況を確認。どちらのドライバーとも意識がないことから、レスキュー隊、救急車の要請が行われ、そして1回目と同様に川崎街道が緊急交通路であることからJAFへの出動要請も行われた。

 JAF特別支援隊は1回目と同様に、現場で多摩中央警察署警備課長の指揮の下、レスキュー隊が安全に救助活動を行えるよう、横転したステーションワゴンを固定。続いて、警視庁の合同レスキュー隊が到着するが、どちらの車両もドアなどの変形・破損が激しいなどの理由から、手持ちの資材・機材では救助困難と判断され、警視庁特殊救助隊(SRT:Special Rescue Team)の出動要請が行われた。

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横転したステーションワゴンは不安定なため、ひっくり返ったりしないようレッカー車の牽引用アームやウインチを用いて固定。これで、警視庁の合同レスキュー隊が作業にかかれると思われた。しかし、合同レスキュー隊の装備では救出が難しいことが判明し、警視庁特別救助隊の出動が要請された。

SRT登場! 特殊装備でドアを取り外す!!

 そして、SRT専用救助車両が到着し、まずはステーションワゴンの上を向いた左フロントドアを全開にしてベルトで固定、SRT隊員が車内へ。その一方で、ドアを開けられないコンパクトカーに関しては、特殊機器を用いて運転席のドアのヒンジ部分を切断し、ドアを取り外す作業を開始した。

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駆けつけたSRTの専用救助車両。ドア部分には同チームの専用のマークも描かれている。

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まずは、ステーションワゴンの左フロントドアを開けて、車内への侵入を試みるSRT隊員。

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ステーションワゴンのドライバーの救出が続けられているのと同時に、破損のために開かなくなったコンパクトカーのドアのヒンジを壊して取り外す作業が進められた。

無事ドライバー2名を救助完了!

 無事、ステーションワゴンからは全身をベルトで固定されたドライバーが吊り上げられ、救助完了。一方、コンパクトカーも右フロントドアの取り外しに成功し、ドライバーは担架に乗せられて救助されたのであった。

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車内から救助されたステーションワゴンのドライバー。SRTの専用救助車のウインチを使って吊り上げている。

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コンパクトカーの車内からすぐさま担架に乗せられてドライバーが運び出されているところ。

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ドアを取り外されたコンパクトカー。

ステーションワゴンを引き起こしてコンパクトカーとともに牽引!

 その後は、再びJAF特別支援隊の作業となり、まずはステーションワゴンを引き起こす作業を実施。これにより2台とも牽引できる状態となったので、1回目と同様に牽引の準備をして運び出し、訓練は終了となった。

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横転したステーションワゴンを復旧させるところ。

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レッカー車で牽引する準備が完了したコンパクトカー。レッカー車と牽引対象の車両は、必ずしも直線上に並ぶ必要はない。前輪を載せるためのアームが角度を変えられる仕組みになっている。

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取り外されたコンパクトカーの右フロントドア。ヒンジ部分で強引に切断した跡が生々しい。

 9月6日には北海道胆振地震が発生したばかりだが、今後も日本首都直下型地震や、南海トラフ地震など、大規模な被害をもたらす恐れのある地震が発生することが懸念されている。また、近年は大雨も増えており、水害が多く発生しているのはご存じの通りだ。こうした時、クルマはドライバーを閉じ込めてしまう場合もあるし、さらに道路を塞いでしまい、災害対応の障害となってしまう可能性もある。こうした訓練が訓練で終わってくれるに越したことはないが、素早い災害対応活動を行えるよう、今後も関係各所の連携を深めるこうした合同訓練の活発化を期待したい。

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