重要無形民俗文化財の小瀬鵜飼。ユニークなPR施策で魅力を発信!
小瀬鵜飼の様子。かがり火を焚いて、ヒモを首に巻いた鵜でアユを捕まえる。
日本の伝統漁法である小瀬鵜飼が西日本豪雨の影響で2週間開催できず、約120万円の損害を被っている。小瀬鵜飼を運営する関遊船株式会社は、9月からの盛り返しをはかるため、関市ビジネスサポートセンターのサポートを受けてさまざまなPR施策を新たに着手した。その中でも「方言ホームページ」と「オリジナルコーヒー」が秀逸で注目を集めている。
小瀬鵜飼とは
鵜飼をイメージしたイラスト。公式サイトやポスターに使用されている。
本題に移る前に小瀬鵜飼を紹介しておこう。小瀬鵜飼は、長良川(岐阜県関市小瀬)で毎年5月11日から10月15日まで行われている鵜飼。鵜匠が乗る鵜船と観光客が乗る屋形船が一緒に川を下り、間近で鵜匠の手縄さばきや鵜がアユを捕る姿が見られる。
鵜船の船首で焚かれるかがり火によって驚いて動きが活発になったアユを、鵜匠の「ホウホウ」という掛け声に合わせて鵜が水に潜って捕らえる漁法。鵜の喉にはひもが巻かれており、ある大きさ以上のアユは完全に飲み込むことができなくなっていて、鵜匠はそれを吐き出させる。
国の重要無形民俗文化財に指定されていて、全国12か所にある鵜飼のなかで、小瀬鵜飼と長良川鵜飼の鵜匠だけが宮内庁式部職鵜匠として国家公務員の身分が認められている。
そんな伝統ある小瀬鵜飼は、例年の乗船客数は約9,000人。ところが今年は西日本豪雨の影響で500名を超えるキャンセルがあり、まだ乗船客数5,000人と少ない(9月19日現在)。乗船客数1万人を目標に、集客アップのために新たなPR施策を始めたという。
方言を使った公式ホームページでアピール
小瀬鵜飼公式ホームページの方言ページ。方言での力の抜けた表現に親近感が湧く。
小瀬鵜飼は、岐阜県を舞台にしたNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の人気により、岐阜県の方言が注目を集めていることに目を付け、公式ホームページ内に新たに「方言ページ」を設けた。
方言は50年以上他の地域には住んだことがない「生粋の岐阜県民」が監修している。9月以降の平日の集客が課題で、地元の人に鵜飼を身近に感じて共感してもらい、利用促進に繋がることを目指している。
方言で紹介されたページを見ると、岐阜県民ではない筆者でも、温かな気持ちと親近感を感じる。そんなホームページに載っている方言を紹介していこう。
「ほんとの鵜飼を見におんせぇ」
トップに大きく書かれたワード。おんせぇとは「おいで」という意味。岐阜県民でなくとも懐かしさを感じる表現だ。田舎のおばあちゃんが、「たまには顔出せよ」と言っているような親近感が感じられる。
「乗りてぇ人(じん)はこっちから」
人と書いてじんと読む。沖縄県の方言で島人(しまんちゅ)と読むように、他の地域にも違う読み方があるのか気になってくる。ちなみに関市の人は関の人(せきのじん)。響きがカッコイイ。
「まんだ予約できるかもしれんよ」
「空席確認はこちら」と書かれるよりも、なぜか電話したくなる。普段ビジネス言葉ばかりを見ている自分の心がほぐれていくようだ。
方言ページだけじゃない新しい取り組み
「カフェ・アダチ」でのコーヒー焙煎の様子。「鵜飼ブレンド」は1ボトル(約10杯分)5000円(税込)。
また乗船客に対しては、鵜飼乗船客しか味わえないオリジナルブレンドコーヒー「鵜飼ブレンド」の販売を9月1日から開始した。
人気喫茶店「カフェ・アダチ」(岐阜県関市)とコラボレーションし、自社焙煎機で強く焼きこんだ深煎り豆(キリマンジャロとケニアAA)をブレンドし、苦味と甘味、香りが強く濃厚な味わいを実現した。小瀬鵜飼の特徴である漆黒と静寂に映えるかがり火の世界観をコーヒーで表現したという。小瀬鵜飼でしか味わうことができないコーヒーという今までにない楽しみを提供する。
ちなみに方言では以下のように語られている。
「おまはんた、小瀬の喫茶店のカフェ・アダチは、よーしっちょんさるやら? カフェ・アダチとセキビズとかんこーして、コーヒー作ったんやて! 名前は、鵜飼ブレンドっていうんやて。かっちょえーやら? 静かで真っ暗けの中で、かがり火だけでやる小瀬鵜飼のえーとこを、珈琲で表現してくんさったわ。一回飲んでみんせぇ」
「おまはんた」と初めての言葉で呼びかけられているにも関わらず、自然に言葉が入ってくる。
また広報担当者は、「はよ、小瀬鵜飼見におんせぇ。すーしーなってきて、あったけぇ鵜飼ブレンドがどえれぇうめえで」とこれまた方言を使ってコメントしてくれた。親近感がすごいのだ。「うん。飲んでみる」と返事せずにはいられない。
小瀬鵜飼のインスタグラムで発信されている長良川の風景。
このほかにもフェイスブック、インスタグラム、そしてブログでの情報発信を新たに開始。インスタグラムでは、「インスタ映え」な夕焼けに染まる長良川と観覧船や鵜飼の風景、乗船風景などを発信している。詳しくは下記公式サイトを参照のこと。