トヨタ、自動運転実験用プラットフォーム2.0を公開
レクサス「LS600hL」ベースの自動運転実験車の改良版。各所に突き出ているのはセンサー類。
トヨタは3月3日、自動運転やAIなどの研究開発を行っている米国の子会社Toyota Research Institute(TRI)が、米国カリフォルニア州ソノマで開催したイベント「プリウス・チャレンジ」において、新型の自動運転実験車(自動運転の実験用プラットフォーム)を披露したことを発表した。
同実験車はレクサス「LS600hL」をベースにしており、2013年のCES(米国家電見本市)で披露された自動運転実験車の改良版だ。そのため、「プラットフォーム2.0」とも呼ばれる。
ルーフやボンネットなどに自動運転の実験のための各種センサーを装備可能で、付け替えも柔軟に行える構造になっている。装備可能なセンサー類は先代の1.0から拡充されており、ライダー(光検出・測距)、レーダー、カメラなどだ。
高精度地図情報がないエリアで自動運転するには?
センサーが拡充された理由は、今後自動運転が実用化された場合、高精度の地図情報が存在しないエリアでも自動運転機能が利用できるよう、高精度地図情報に過度に依存しないシステムを構築する必要があるためだ。
自動運転を行うには、何よりもまずクルマ自身がどこを走っているのか、現在位置を把握する必要がある。高精度地図が利用できる場合、その地図情報にGPS情報などを加味することで自車の正確な現在位置を導き出しやすくなる。さらに高精度な地図情報なら目的地までの正確な経路も設定できるし、選択された経路でのオートナビゲーションも行えるというわけだ。
それに対してGPSが使えなかったり、低精度の地図情報しか利用できない場合、さらには地図情報がまったくない場合は、センサー情報で周辺環境の特徴などを捉え、クルマがいる環境や条件を推定する必要が出てくる。そのため、それぞれ特長の異なる複数のセンサーを組み合わせ、他車や歩行者などを検出する必要があるわけだ。
それには、センサーの性能の高さに加え、得られた情報を正確に解析する技術なども求められる。2.0はその点が考慮されており、先代の1.0から演算能力が高められ、マシンビジョン(ソフトウェアも含めた、機械による周辺環境の認識システム)が強化されているという。
走れば走るほど賢くなっていく?
また、強化された機能には機械学習能力もある。ドライバーが運転をした際の習慣を学べるなど、クルマ自身がデータを収集して必要な情報を蓄積していけるようになっている。
さらに、コネクティッド(他車との通信接続)技術も視野に入れられている。今後の同技術の進展に応じて、他車と情報を共有するような仕組みも考慮されており、2.0は走れば走るほど賢くなっていくとしている。
今後、TRIでは同実験車を用いた実証実験で得られるデータを活用し、「ショーファー」(完全自動運転)と、「ガーディアン」(高度運転支援)の研究開発に役立てていく計画だ。
なおTRIのギル・プラットCEOによれば、交通事故死傷者の低減に役立つということから、ガーディアンの方がショーファーよりも早い時期に幅広く展開されていくことが予想されるとコメントしている。
また英語ではあるが、こちら(トヨタUSA ニュースルーム)でその走りなどを動画で見てもらうことが可能だ。
2017年3月10日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)