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クルマ最終更新日:2016.07.22 公開日:2016.07.22

2億1500万年前の巨大隕石落下で多くの生物が絶滅

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2億1500万年前に落下してきた巨大隕石によってできたとされる、カナダの「マクガニアン・クレーター」。(c) NASA

 小惑星クラスの巨大隕石の落下といえば、地球規模のビッグ・カタストロフ。この瞬間に落ちてきたら人類は短期間で絶滅する可能性すらある、大災害である。

 確率は極めて低いものの可能性はゼロではなく、過去に起きた例で有名なのが、約6600万年前に現在のメキシコ・ユカタン半島の海辺のチュクシュルーブ村近辺に落下した、直径10~15kmと推定される巨大隕石。隕石というよりも、もはや小型の小惑星だ。

 この落下は地球環境に大打撃を及ぼし、恐竜を初め多くの生物を巻き込んだ「白亜紀末の大量絶滅」を引き起こしたという。そのとき、全生物の約70%が滅んだという。逆をいえば、この衝突がなければほ乳類が台頭することもなく、人類も誕生しなかっただろうとされる。

 その落下の証拠は、現在では地上からでは確認できないのだが、およそ180kmという、世界第3位の直径を持つ巨大クレーターが海底や地下深くに残っている。

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現代の科学技術で浮かび上がった、海底や地下に残る「チュクシュルーブ・クレーター」。(c) courtesy V.L. Sharpton, LPI

 この落下の瞬間の衝撃はマグニチュードでいうと11もあったという。通常の地震では考えにくい数値になってしまうのだが、宇宙から加えられた一撃は想像を絶するエネルギーを発生させたようだ。津波もその高さは数100mから数kmにまで達したといわれ、衛星軌道からでも見えたことは想像に難くない。

地球は巨大隕石の爆撃にさらされてきた!

 こうした生物の大量絶滅をもたらすような巨大隕石、小型の小惑星の落下は確率的には1億年に1回程度の頻度で起きるとされる。

 とても少ないように思われるが、地球の年齢が45~46億年とされることから、単純計算で45、6回は落下していることになる。実際、地球上にも風化や造山運動などの影響がありながらも現存している大小さまざまなクレーターがあり、チュクシュルーブ・クラスの小惑星の落下による巨大クレーターもいくつかある。

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日本の研究チームが解明した2億1500万年前の落下の衝撃!

約2億年前の三畳紀末にも生物の大量絶滅が!

 一方、全生物の多くの種が同時期に絶滅する大絶滅は、白亜紀末の大量絶滅も含めて5回と数えられている(現在は、人類による6回目が進行中という見方もある)。しかし主要因がほぼ断定されているのは、時代的に最も新しい白亜紀末の大量絶滅ぐらいで、あとはまだわかっていない部分も多い状況だ。

 今から2億~2億3700万年前の、時代区分でいうところの「三畳紀後期」にも、生物の大き目の絶滅が3回起こっており、ひとくくりに「三畳紀末の大量絶滅」として、5つの内のひとつに数えられている。白亜紀末の大量絶滅のひとつ前の出来事であり、合計して全生物の約76%が滅んだという。

三畳紀後期に大きな絶滅が3回起きた

 三畳紀後期に起きた3回の絶滅の内、ジュラ紀との境目である2億年前の最後のもの(現代から見て最も新しいもの)が大規模な火山活動による大気組成の変化やそれに伴う気候の変動が原因とされる。

 また2億500~600万年前の2回目のものは、海洋中に溶け込んでいる酸素が極端に低下してしまう「海洋無酸素化」によるものだという。ただし、火山活動も海洋無酸素化も、その発生した仕組みなどは詳しくわかっていない。

 2億1500万年前の最初のもの、つまり最も古いものがその時期に落下したとされる隕石の影響なのか、たまたま時期が重なっただけなのかも、これまでわかっていなかった。

 原因となった可能性のある巨大隕石は、2億1500万年前のちょうどその時期に落下。カナダ・ケベック州コート・ノール地域にある、直径がおおよそ100kmに及ぶ「マクガニアン・クレーター」を作り出したとされている。

 しかし、これまでのところ白亜紀の大量絶滅のように、生物への影響を詳細に研究できる直接的な証拠が見つかっていなかった。

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宇宙から撮影されたマクガニアン・クレーター。1ページ目の画像とは角度が異なる。(c) STS-9 Crew, NASA

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: 2億年前に落ちた巨大隕石のそのサイズは?

2億年前の隕石は最大で8km弱もあった可能性が

 そうした中、2012年になって九州大学、熊本大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の共同研究チームにより、地球環境に大打撃を与えられるサイズを持った小惑星であった直接的な証拠が、岐阜県坂祝(さかほぎ)町の木曽川沿いや、大分県津久見市江ノ浦の地層から発見された(この発表は2013年になってから行われた)。

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2億年前の巨大隕石の落下で形成された証拠の粘土岩が発見された地域。熊本大学のリリースより抜粋。

 マクガニアンの小惑星はチュクシュルーブのものより小型と推定されているが、それでも直径が最小で3.3km、最大だと7.8kmになる計算だという。重さは最大で5000億トンに及ぶ。

 東京都庁舎は地上部12万トン、地下部20万トンということで、32万トン(大成建設のWebサイトより)。つまり、最大で東京都庁舎156万2500棟分が塊となって一気に降ってきたというわけだ。

 これだけのものが宇宙から音速の何倍もの速度で降ってきたら、十二分に、地球環境と生物に大きな打撃を与えられるだろう。このように、隕石がどれだけ巨大だったかということを、つまりは破壊力を持っていたかということを、日本の共同研究チームが明らかにしたのである。

 ちなみに、2013年にロシアに落下し、多数のけが人や建物の被害を出した「チェリャビンスク隕石」は、推定で直径がたったの17m、重さ1万トンである。あれは天体スケールで見た場合、「かわいい」レベルなのだ。

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ロシアに墜落したチェリャビンスク隕石をとらえた写真。(c) Marat Ahmetvaleev

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研究が続けられて新たな発見が!

小惑星落下の影響は30万年も続いた!

 その後、熊本大やJAMSTECに、新たに高知大学、東京大学、新潟大学、千葉工業大学を加えた共同研究チームによって、どの程度の打撃が地球環境に与えられたのかという視点から研究が続けられた。

 そしてこの7月8日に、化石で有名な海洋生物の「アンモナイト」、動物プランクトンの「放散虫」、原始的な脊椎動物の「コノドント」(正確には、コノドントとは、その原始的な脊椎動物の歯の微化石を指す)の多くの種の絶滅を引き起こしたことが判明したと発表された。

 今回の研究では、化学分析を用いて三畳紀後期の海洋表層における、食物連鎖の基礎となる植物プランクトンの数(正確には植物プランクトンが生み出す有機化合物のことを示す「基礎生産量」)と、動物プランクトンである放散虫の数(正確には「生産量」)の変動パターンの検証が行われた。

 その結果、小惑星の落下から数万年にもわたって植物プランクトンの数が著しく低下していたことが判明。

 その影響で、当然ながら植物プランクトンをエサとする放散虫の数も低下。しかし、植物プランクトンの数が落下以前のレベルに回復したあとも、約30万年間にわたって放散虫の数は元のレベルに戻らなかったこともわかったのである(下の画像)。

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時間の流れは下から上へ向かう。隕石の落下から30万年、回復が遅れている。熊本大学のリリースより抜粋。

 なお放散虫はもちろん完全絶滅したわけではなく、現在も生きている。このときの絶滅は、放散虫の多くの種が滅んだ、という意味だ。

古い放散虫が新しい放散虫に駆逐された

 また放散虫の多くの種が絶滅した理由は、実際には落下が招いた環境の激変によるものではなく、落下以前には存在しなかった放散虫群が出現し、衝突以前から存在していた古い放散虫群が滅ぼされたためとしている。

 落下後は、古い放散虫郡の21種中18種が滅んでいるが、落下による環境の激変が新しい種を出現させ、環境の激変で弱っていた古い種に追い打ちをかけるようにして駆逐したのだろう。上の画像では赤が滅んだ古い種、青が新しい種を示している。

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時間の流れは右から左。隕石の落下の直後に絶滅率が上昇しているのがわかる。熊本大学のリリースより抜粋。

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アンモナイトなどにはどの程度の影響が!?

 また、コノドントに関しては、カンブリア紀から約3億年にわたって生息していたが、この三畳紀末の大量絶滅で姿を消した。マクガニアンの隕石落下の影響を受けて種数が減り、そこに海洋無酸素化が起きたためにさらに種が減っていき、最後に大規模な火山活動がとどめを刺したという流れのようである。

 それからアンモナイトも隕石衝突で大幅に種数を減らした。そして、海洋無酸素化と大規模な火山活動で種数を減らしたが、それらを生き延び、完全に地上から姿を消したのは恐竜と同じで白亜紀末の大量絶滅のときだ。

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放散虫、コノドント、アンモナイトの種数が、隕石の落下で減っているのがわかる。熊本大学のリリースより抜粋。

 共同研究チームは今後、世界各地の三畳紀末の地層から、隕石の落下によって形成される地層の「インジェクタ層」を探索し、さらにどのような生物が落下によって絶滅の影響を受けたのか研究を行っていくとしている。

 同時に、隕石の落下が地球環境に与えた寒冷化や酸性雨など、さまざまな影響についても、地球化学的な視点から研究を進めていく予定とした。

近い内に次の巨大隕石が落下してくる心配は?

 1億年に1回のチュクシュルーブ・クラスの巨大隕石の落下の確率。恐竜絶滅から約6600万年が経過しており、確率的には徐々に高まっているといえる。

 ただし、キロメートル単位の巨大隕石は発見しやすいので、今のところは当分、地球を直撃する巨大隕石や小惑星はない。

 逆に怖いのが、非常に発見しにくい、それ以下のサイズのもの。実際、ロシアのチェリャビンスク隕石は完全にノーマークだったのだ。

 仮にその10倍程度の150~200mクラスでも、現在の観測態勢や望遠鏡の性能では相当地球に接近するまで発見するのが難しい。また、地上の望遠鏡のみの観測だと、太陽方向から接近してきた場合は直前までほぼ発見できない可能性もある。

 17メートルですらあれだけの破壊力を持っていたことからわかるように、その10倍もあったら、さすがに人類全滅はないにしても、都市を直撃するようなことになれば大惨事は免れ得ない。大洋に落ちた場合、多数の沿岸地域が津波による大きな被害を受けるだろう。場合によっては、一国が地図から消し去るようなことだってあり得るはずだ。

 近年、巨大隕石の脅威から地球を守るべく、日本を含めて各国の天文台が協力してスペースガードとして観測態勢を敷いているが、それでもまったく不十分だという。

 あまりにもスケールが大きすぎて、自分とは無関係に思えてしまうかもしれないが、人類の未来と毎日の暮らしを守ることを考えれば、もっと本腰を入れるべきテーマなのではないだろうか。

2016年7月25日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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外部リンク

熊本大学
海洋研究開発機構(JAMSTEC)

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