2代目マツダ「FC3S型RX-7」。スポーツカーとは何か?
未だに根強い人気を誇る、マツダのロータリー車たち。中でも「RX-7」シリーズは熱烈なファンが多いことで知られている。今回は、2代目のFC3S型を取り上げる。
マツダ2代目「サバンナRX-7(FC3S型) GT-X」1987年式。オーナーの金子康夫氏の許可を得て、2017年11月25日に開催された「2017 トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑」にて撮影した。(個人所有のため、ナンバープレートは伏せています)
現行モデルが1台もなくなってしまったロータリーエンジン(RE)搭載車。しかし今もって根強い人気を誇っており、マツダのRE車の中でも特に「RX-7」は人気が高い。
これまで、当コーナーでは初代「SA22C型サバンナRX-7」(記事はこちら)、そして最終モデルの3代目「FD3S型RX-7(FD)」(記事はこちら)を紹介してきた。今回満を持して紹介するのが、2代目「FC3S型サバンナRX-7」(FC)だ。
近年のFCは、FDと共に人気コミック・アニメ「頭文字D」の影響で、クルマにそれほど興味がなかった人たちの間にも大きく浸透。同作品の影響もあって、2代目と3代目の区別をつけるべく、FC、FDという呼び方も定着した。
なお同作品でのFCは、トップ3の人気を誇るキャラクターである高橋涼介が搭乗。物語の序盤では、ライバルとして主人公のハチロクと死闘を演じた。
初代「SAC22型サバンナRX-7」。FCと同じ直線主体のデザインだが、サイズ的に明らかにFCよりも小さく、コンパクトなイメージ。
3代目「FD3S型RX-7」。FCからFDへのモデルチェンジは、同じ「RX-7」であるとは思えないほど、大きくイメージが変わった。初代とFCは直線が主体だったが、FDは曲面が多用されており、どちらかというと同じマツダなら「ロードスター」のデザインに近いといえるかも知れない。
「RX-7」とはどのように誕生したのか?
FCを正面から。エンジンフード(ボンネット)のエアインテークがドライバーの視界を考慮して、若干助手席側にオフセットさせた形で設けられているのがわかる。
初代「SA22C型」は、1978年の第二次オイルショック、国内では同年(昭和53年)の排気ガス規制という、ガソリン車に厳しい環境で誕生。マツダとしては、「コスモスポーツ」以来のRE専用設計のスポーツカーで、初の量産車だった。国内だけでなく、モータースポーツでの活躍などもあって米国でも大ヒット。7年半の生産が続けられたのである。
しかし、実はそんな大ヒットに浮かれることもなく、開発陣は初代の発売からわずか1年半後には2代目の開発をスタート。2代目には初代の名声を高めつつ、さらに純粋なスポーツカーとして進化を遂げることが求められたのである。
「頭文字D」で高橋涼介が乗るFCもボディカラーが白という設定。
FCを右側面から。なお、ドアに貼ってある102番とは、クラシックカー・フェスティバルのナンバー。同フェスティバルの参加車両は国内では数台しか現存していないような、非常にクラシックな車種が多いため、配付資料から車名や年式などがわかるよう配慮されていた。
導き出されたのは「心地よい緊張を感じられるクルマ」
左側面から。グレードは「GT-X」で、ビスカス式LSD、アルミボンネット、アルミホイール、リアスポイラーなどを標準装備している。なお、「GT-X」の下のグレードは「GT-R」だった。
開発陣は、単に初代を改良して「RX-7」を進化させるというだけでなく、深化も求めた。「スポーツカー研究会」を立ち上げ、スポーツカーとは何なのかという基本テーマを掲げた上で、クルマの歴史まで見つめ直す形で、2代目をどういうスポーツカーとするのかをまとめていったという。
さらに開発陣は、スポーツカーに限らず、参考になるのならありとあらゆるクルマに徹底的に乗り、その結果、スポーツカーとは何かという問いに対して、ある答えを導き出す。それが、「心地よい緊張を感じられるクルマ」だった。実際に出せる速度が遅いクラシックな車種であっても、乗って興奮できるクルマは多い。それは、そのクルマが「心地よい緊張を感じられるクルマ」だからであり、それこそがスポーツカーの大きな魅力であるとした。
そして、その魅力を実現するには、単に直進安定性がよくて最高速が高いというわけではなく、ドライバーが感性でもって乗ることのできる領域を十分に残しておく必要があると結論し、開発陣はその考えのもとに、FCを開発することができたのだという。
FCを真後ろから。1989年のマイナーチェンジ以降の後期型は、テールランプが丸くなる。
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スポーツカーを追い求めた答えとしてFC、いよいよ発売!
1985年10月にFC発売
FCを右斜め後方から。下に掲載した初代とはサイズこそ異なるが、デザイン的には通じるものがあるのが見て取れる。
「スポーツカーとは何か?」を追い求めたその解答は、FCとなって1985年10月に発売された。
FCは初代と比較して大型化・重厚化したというイメージが強いが、実は初代後期モデルと比較すると、サイズ的な差はそれほどない。逆に全長は10mm短くなっているぐらいで、全幅が20mm、全高が5mm増えた。ホイールベースも10mm長くなっただけである。
デビュー時のインパクトが強かった初代の前期モデルはもっとコンパクトなため、おそらくはそれと比較しての大型化・重厚化という印象だったのだろう。実際、初代の前期モデルと比較すると、FCは全長で25mm、全幅で15~40mm、全高で10mm増えている。
またボディ表面に関しても、初代と比較すると凹凸がより少ないデザインとなった。
初代を右斜め後方から。テールランプのデザインなどはFCには踏襲されていないが、全体的な印象としては同じ「RX-7」であることがわかる。
FDを後方から。リアのデザインも曲面を多用しており、直線的な初代およびFCと比較すると趣が異なる。
REエンジンは「13B」に変更!
クラシックカー・フェスティバルの参加車両は一部を除いて神宮外苑から銀座までを往復する一般道でのパレードを実施し、さらにその中の40台弱が神宮外苑の聖徳記念絵画館前に特設されたクラシックカーサーキットでもデモランを行った。FCは「スポーツカー1」として、328GTS(フェラーリ)や911S(ポルシェ)などと共に走行。
そして大きく変わったのが、エンジン。初代はRE「12A」を搭載していたが、空冷インタークーラー付きツインスクロールターボチャージャー装備の「13B」に変更された。13Bの最高出力は、前期モデルではネット値で185psで、1989年のマイナーチェンジではターボが改良されて205psへとアップした。これにより、パワー・ウェイト・レシオも6.54kg/psから5.72kg/psとなっている。なお、同値の5.0kg/ps切り達成は、FDに持ち越されることになる。
サスペンションはフロントがストラット式で、リアは初代のリジット式から、独立懸架型のラテラルロッド付きのセミトレーリングアーム式に変更された。このリアサスには4輪操舵(4WS)技術の応用である「トー・コントロール・ハブ」が採用されており、セミトレーリングアーム式の欠点を補うようにしてあった。
なお、撮影したモデルは1987年式なので前期型となる。1989年以降のモデルが後期型とされ、テールランプが丸形のデザインに変更されるなど、後方からの眺めが大きく変更された。
その後、FCは「RX-7」初のオープントップモデル「カブリオレ」をラインナップに加えるなどした後、1991年10月にFDにバトンタッチ。しかし、その後もFCの開発は続けられ、「カブリオレ」の最終仕様「ファイナルバージョン」が1992年10月に発売されている。
また、米国ではモータースポーツ活動を初代から引き継いで活躍し続け、IMSAシリーズにおいて初代からの通算で100勝という大記録を達成した。
「FC3S型RX-7」のスペック
【サイズ・重量】
全長×全幅×全高:4310×1690×1270mm
ホイールベース:2430mm
重量:1210~1270kg
【エンジン】
型式:13B(2ローター)・インタークーラー付きターボ
総排気量:654cc×2
最高出力:136.1kW(185ps)/6500rpm
最大トルク:245.1N・m(25.0kg-m)/3500rpm
コックピット。
2017年12月5日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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