クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2017.06.24 公開日:2017.06.24

語り継ぎたい国産メーカーのクルマと技術たち前編:1950~60年代編

np170622-01-01.jpg

純国産乗用車第1号といわれるトヨタ「トヨペット クラウン RSD型」。なお、トヨタの現役車種最古参は、「ランドクルーザー」で、前身の「ジープBJ」が51年発売と最も古い。次いで、トラックの「トヨエース」の前身の「トヨペット・ライト・トラックSKB型」が54年で2番目。クラウンは全車種中で3番目。

 5月24日から26日までパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2017」。そこで特別展示された、1950年代から90年代までを彩った国産の名車やエポックメーキング的なクルマたちを、テクノロジーの視点から2回に分けてご紹介。前編は、1950~60年代の普及し出した時期の国産車たちだ。

1955年:トヨタ「トヨペット クラウン RSD型」

 「もはや戦後ではない」という時代、通産省(当時)が欧米の自動車メーカーとの技術提携を推進する中、トヨタが純国産にこだわって開発したのが「トヨペット クラウン RS型」だ。国産車の出発点といわれる記念碑的1台である。

 テレビ(白黒)、洗濯機、冷蔵庫の家電「三種の神器」による消費者意識の高まる中、クラウンはデザイン、乗り心地、耐久性など、日本で使うには、すべてのバランスが取れた純国産車として話題を集めたという。

 観音開き式のドアを採用しており、RS型は「観音開きのクラウン」の愛称で呼ばれた。

 なお、紹介するRSD型はRS型をベースにして、ボディ周りと内装を豪華にして55年の末に登場した。

【スペック】
全長×全幅×全高:4285×1680×1525mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1210kg
エンジン:R型(水冷直列4気筒OHV)
排気量:1453cc
最高出力:35.8kW(48HP)/4000rpm
最大トルク:98N・m(10kg・m)/2400rpm

np170622-01-02.jpg

トヨペット クラウン RSD型。トヨタはこのRSD型のラリー仕様で、日本車として初めて本格的な海外のモータースポーツにも参戦した。「第5回豪州1周ラリー」で1万kmを19日間かけて走りきり、日本車のクォリティの高さを海外にアピールした。

→ 次ページ:
次は軽自動車規格で初のヒットとなったあのクルマ!

1958年:富士重工業(現SUBARU)「スバル360」

np170622-01-03.jpg

日本独自の軽自動車規格のヒット車第1号となったスバル360。今回展示されたのは、62年発売の「スバル360デラックス」だ。なお、58年発売の最初期のモデル「K111型」は、2016年に日本機械学会から「機械遺産」として認定された。

 まだクルマの価格が高く、普及が進まなかった50年代。通産省が55年に発表した「国民車構想」を受け、富士重工業が58年に発売を開始したのが、4人乗りの軽自動車(356cc)である「スバル360」である。

 富士重工業は戦前・戦中の航空機製造メーカーである中島飛行機の流れを汲んでおり、その技術がスバル360にも活かされた。航空機のボディに採用されている、卵の殻の原理を応用した「モノコック構造」が採用されたのである。

 モノコックボディは、外部からの圧力を表面に均等に分散させる仕組みを持った丈夫な構造が特徴。そのため、重量物となるフレームを必要とせず、軽量化に大いに貢献した。

 スバル360は軽自動車でありながら小型車に劣らぬ性能や乗り心地を実現させ、日本の道路事情にはとてもマッチしたクルマとして大ヒットし、70年に生産終了するまでに約39万台が生産された。

【スペック】
全長×全幅×全高:2990×1300×1360mm
ホイールベース:1800mm
車両重量:385kg
エンジン:強制空冷2サイクル直列2気筒
排気量:356cc
最高出力:13.2kW(18PS)/4700rpm(ネット値)
最大トルク:31.4N・m(3.2kg・m)/3200rpm(ネット値)
最高速度:時速約90km

np170622-01-04.jpg

スバル360デラックスを正面から。スバル360は最終的には36万5000円という価格まで値下がりし、クルマを一般大衆に普及させた1台となった。

→ 次ページ:
続いては大衆車といえば、この1台!

1966年:トヨタ「カローラ KE-10型」

np170622-01-05.jpg

トヨタ「カローラ KE10型」。スバル360もクルマを普及させた1台だったが、「大衆車」といえばやはりカローラだろう。

 「カローラ」は66年10月の発売以来、現在でもその名は引き継がれており、トヨタで最も成功したクルマといわれる。当時、800ccクラスのエントリーモデル「パブリカ」と、1500ccクラスの「コロナ」の中間に位置する1000ccクラスとして開発された5人乗り小型セダンだ。

 すべてに対して合格点の80点以上を求めて開発が進められ、その結果として「プラスアルファ」が生まれ、カローラのさまざまな魅力になったという。例えば、新設計の水冷4気筒1077cc「K型」エンジンは、同クラスのクルマの平均排気量より「プラス100ccの余裕」として好評を博した。

 そのほか、当時主流だったベンチシートに3速コラムシフトというスタイルではなく、セパレートシートに4速フロアシフトを採用したり、国産車として初めてフロントサスペンションにマクファーソンストラット式を採用したりするなど、いくつもの新技術が採り入れられた1台だったのだである。

【スペック】
全長×全幅×全高:3845×1485×1380mm
ホイールベース:2285mm
車両重量:710kg
エンジン:K型(水冷直列4気筒OHV)
排気量:1077cc
最高出力:44.1kW(60PS)/6000rpm
最大トルク:83.4N・m(8.5kg・m)/3200rpm

np170622-01-06.jpg

カローラを後方から。2ドアで、ボディはセミファストバックのスタイリングが採用された。

→ 次ページ:
続いては、世界初のロータリーエンジンを搭載車

1967年:マツダ「コスモスポーツ」

np170622-01-07.jpg

低い車高とロングノーズが特徴の「コスモスポーツ」。特撮ドラマの「帰ってきたウルトラマン」で、防衛隊「MAT」の専用車両「マットビハイクル」のベース車両として使われた。

 67年に発売されたマツダ「コスモスポーツ」は、同社が世界で初めて実用化した「(ヴァンケル式)ロータリーエンジン」を搭載した量産車だ。

 ヴァンケル式ロータリーエンジンは、ローターハウジング内を三角形のおむすび型をしたローターが高速回転する仕組みだ。しかしエンジンの開発を始めた当初は、ローターの3つの頂点に取り付けられた「アペックスシール」がハウジングの内面を傷だらけにしてしまうことが実用化の妨げとなっていた。いわゆる「悪魔の爪痕」と呼ばれた異常摩耗(波状摩耗)の「チャターマーク」のことである。

 61年からスタートしたエンジン開発は長い試行錯誤の末、最終的には日本カーボンの協力を得て、遂に完成を見る。「パイログラファイト」という高強度カーボンの新素材にアルミを特殊な方法でしみ込ませるという複合材型のアペックスシールによって、問題が解決されたのだ。

 ロータリーエンジンのメリットのひとつがコンパクトさだが、コスモスポーツはそれを活かした低い車高と現代でも通じる斬新なスタイリングが特徴の1台となった。そのスタイリングに加え、高い走行性能が当時の世界中のスポーツカーファンに衝撃を与えたのである。

【スペック】
全長×全幅×全高:4140×1595×1165mm
ホイールベース:2200mm
車両重量:940kg
エンジン:10A型(ヴァンケル式ロータリー)
排気量:491cc×2
最高出力:80.9kW(110PS)/7000rpm
最大トルク:130.4N・m(13.3kg・m)/3500rpm
最高速度:時速185km
0-400m加速:16.3秒

np170622-01-08.jpg

コスモスポーツを後方から。華麗なスタイリングが目を奪う。発売は67年だが、世界初公開となったのは63年10月に開催された「全日本自動車ショウ(現:東京モーターショー)」。当時の松田恒次社長がプロトタイプで会場に乗り付け、多くの人々に衝撃を与えたという。

2017年6月23日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

関連記事

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(3月31日まで)
応募はこちら!(3月31日まで)