クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

道路・交通最終更新日:2022.08.10 公開日:2022.08.10

冠水路を走行したら、問題なさそうでも点検をしておこう!

2022年8月は日本各地で大雨による道路の冠水が発生した。やむを得ず冠水路を車で走行した場合、走行後には点検を行った方がよい。室内浸水やエンジン停止などのトラブルがなかったとしても、冠水路を走行すると車がダメージを受けた可能性はある。また、しばらく時間がたってから悪臭に悩まされることもある。そこで冠水路走行後の点検ポイントを紹介しよう。

記事の画像ギャラリーを見る

冠水路走行後に、そのままクルマを使ってますか?

冠水路を走行する車

冠水路を無事に通過できたけど、その後に点検しました? ©maykal – stock.adobe.com

 2022年8月は、日本各地で大雨による被害が発生した。車においても、道路が冠水したことによる水没や車内浸水などの被害が発生している。

 もちろん、やむを得ず冠水路を走行したが、エンジン停止や車内浸水などの重大なトラブルに見舞われず走行できたというケースも多々あると思う。しかし油断は禁物だ。冠水路走行時、あるいは走行後にトラブルが発生しなくても、クルマがダメージを受け、今後の不調やトラブルにつながる可能性はある。

冠水路の水は、ただの水ではない

冠水路の濁った水

泥や漂流物等が混じった冠水路の濁った水 ©ilyaska – stock.adobe.com

 そもそも冠水路に貯まっている雨水は、路上のさまざまなごみや汚れを含んでいる。河川の氾濫などで流れてきた場合は大量の泥や砂利、下水が逆流した場合は汚水、その他草木や流されてきたあらゆるものが含まれた水である。また高潮などが原因となっている場合は、塩分が含まれているケースもある。

 このような冠水路を走行すると、ボディ、エンジン、ミッションケース、ブレーキ、ラジエーターなどが濁った水に浸ることになる。それによってサビ・腐食の発生、不純物の侵入などが引き起こされて、深刻なダメージへ発展することもある。

 ちなみに、車へダメージが与えるような水の深さは、おおむね「20cm」からといわれる。20㎝の目安は、車道と歩道を隔てる縁石が水に沈んでいる、くるぶしより少し上くらいの深さだ。車種によっては、取扱説明書に走行できる水の深さを記載していることがあるので、一度確認しておこう。

 このような深さの水を走行後に可能性のあるトラブルの一例としては、ミッションケースへの浸水がある。フォードが行った実験によると、コンパクトカーのフィエスタを、時速7kmで水深450mmの冠水路を通過するテストを行ったところ、トランスミッションなどが収まるベルハウジングに200ミリリットルの水が入ってしまったという結果が出ている。一般的なコンパクトカーのミッションオイル容量は4~8リットルなので、約25%の不純物が侵入したことになる。このように内部に水が入ると、金属部品にサビが発生し、ゴム部・オイルに劣化が生じて、発進や変速時の異音、加速・減速・後退がスムーズに行えない等のトラブルを引き起こすことがあるそうだ。

車のトランスミッション

ベルハウジング内に浸水すると深刻なトラブルに発展する恐れがある ©THINK b – stock.adobe.com

 ほかにもブレーキ、ラジエーター、電装系が濁った水に浸かると、サビの発生や異物侵入から、ブレーキは効きが悪くなる、ラジエーターは目詰まりしてエンジン冷却水の水温が高くなる、電装系は接触不良を起こす、バッテリーへの充電が不十分になる等のトラブルの発生率が高くなる。

 さらに水に流れがあるような冠水路を走行した場合、バンパーなどの外装品に水圧が加わり、割れる、変形する、もしくは内側にあるボディと固定する部品が外れることもありえる。

外れたバンパー

冠水路の水圧でバンパー等が外れてしまうこともある ©norikko – stock.adobe.com

 このように室内浸水やエンジン停止などの重大なトラブルが発生せずとも、冠水路を走行するということは、その後に深刻なトラブルへ発展するダメージを車に与えている可能性があるのだ。そこで冠水路を走行した直後に確認すべきことと、天候が回復した後等に点検するポイントを次ページで紹介する。

冠水路を走行した直後に確認すること

ブレーキペダルを踏む

走行直後は、まずブレーキの効きを確認 ©gnepphoto – stock.adobe.com

 やむを得ず冠水路を走行した直後は、いきなり通常速度の走行に戻らず、アクセルは一定で時速10km以下の低速のまま走行しよう。通過して直ぐにアクセルを緩めると、排ガスの圧が下がって、マフラーからエキゾーストパイプ内に水が入ってしまうからだ。水の侵入を防ぐには、低速走行のままで冠水部分から完全に車が脱出するまでアクセルは一定のままにしておくこと。そして完全に脱出したら、まずは何度かブレーキを踏み、効き具合を確認。ブレーキに泥や異物が付着・侵入すると効きが悪くなるので、注意深く確認をしよう。

走行後の点検ポイント

車のエンジンルーム

エンジンルーム内に浸水した跡を目視で点検 ©Aleksandr Kondratov – stock.adobe.com

 天候が回復した後にドライバーができる点検としては、水に浸った部分を目視で点検することだ。ブレーキ、外装、そしてボンネットを開けてエアクリーナーボックスからのびる吸気口、ラジエーター、バッテリー等を目視しよう。これらの部分に汚れがある場合はダメージを被っている可能性がある。

 その場合は整備工場やディーラーに車を持ち込み冠水路を走行したことを伝えてから点検を依頼すること。整備工場等はジャッキ、高圧洗浄機を備えていることが多く、通常では目の届かない車体の下回りもしっかりと点検と洗浄を行ってくれるだろう。

車の下回り

目の届かないボディ下回りの点検は整備工場に依頼 ©edojob – stock.adobe.com

 整備工場等に頼まずに、自分でコイン式や市販の高圧洗浄機を利用して下回りを洗浄するという手もあるが、ブレーキ、ラジエーター、バッテリー、電装系は繊細な部品で構成されている。そのような部品は高圧洗浄不可となっていることがある。それを見分ける知識のない状態で高圧洗浄をすると、さらなるダメージを加えてしまうかもしれない。

 またダメージを与えずに高圧洗浄できたとしても、ジャッキアップしないと発見できないような不具合を見逃すこともありえる。そのようなことからも、下回り点検は整備工場等に任せたほうが安心だろう。

しばらくしたら車内が臭い

車の車内

ドア以外からも車内に浸水する可能性のある冠水路の走行 ©New Africa – stock.adobe.com

 冠水路走行後に点検を行い、問題なく走行できたが時間とともに車内が臭くなるケースがある。これは車内のフロアや側面に何か所かある配線等を引き込むためゴムキャップされた部分から少量の浸水が発生したことが原因と考えられる。ゴムキャップが水圧に負け、濁った水が車内に入り込み、内装の下で腐敗し臭いが発生しているかもしれない。このような場合、シートや内装を取り外しての清掃・修理が必要となってくる。

 前述したように冠水路に貯まるのは濁った水であり、海水や泥が混じっている。そんな濁った水は、たとえ少量でも不快と感じる臭いを発する。しかもその臭いを完全に取り除くことは難しく、少量でも浸水による修理をした車は中古車として売買する際に「水没車」扱いとなるケースもある。この扱いだと、車を手放す際の買取価格にも影響してくるのだ。

 ここまで紹介したように冠水路を走行するということは、走行中のエンジン停止や室内浸水だけでなく、走行後も車へ深刻なトラブルを発生させ、水没車扱いとなるリスクも潜んでいる。

 もし冠水路を眼前にしたときは、そのようなリスクを背負ってまで冠水路を走行する必要があるか、よくを考えてみよう。そもそも記録的短時間大雨情報が出ているときは運転を控える、もしくは運転中に遭遇したら安全な場所で天候が回復するまで待つ等で、車と自身の安全を優先した行動をとることが大切だ。そしてやむを得ず走行した際は、早めの点検をぜひお勧めする。

冠水路の前で止まる車

無理して冠水路を走行する必要はある? ©Embrace of Beauty – stock.adobe.com

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(4月30日まで)
応募はこちら!(4月30日まで)