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最終更新日:2021.03.17 公開日:2021.03.17

5Gでスムーズな自動運転。対話型AI自動運転車いすを見てきた

5G時代における街づくりや地域の活性に関する展示会「Minatomirai 5G Conference」が2021年3月5日、パシフィコ横浜で開催された。そこにブース展示したNTTドコモは久留米工業大学が提供する「対話型AI自動運転車いす」の体験会を実施。体験会では、5Gを活用した高精細な映像伝達や遠隔操縦を用いた「リモート手助け」で、介助者なしでも移動できる最新技術を披露した。

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5Gを活用したタイムラグなしの遠隔操作

 「Minatomirai 5G Conference」でNTTドコモが展示、体験会を実施したのは、久留米工業大学が提供する「対話型AI自動運転車いす」だ。両者は、「対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ」の自律走行において、5Gを活用した「リモート手助け」の協働検討に関する覚書を締結、2018年より実証実験を進めている。それは、5Gを活用した高精細な映像伝送や遠隔操縦を利用して、介助者がそばにいなくても自動運転の車いすで自由に移動できる技術である。

出典:株式会社NTTドコモ

 自動運転車いすは単なる移動手段ではなく、行先を相談できるパートナーのようなモビリティであることから、「パートナーモビリティ」と命名された。本実験では、パートナーモビリティ、「エッジAI対応5Gデバイス」を搭載。「エッジAI」とは、高度なAI処理をデバイス上で実行できる技術のこと。5Gデバイスを活用することで、さらに高精細かつ高速度での処理が可能となる。

 このAI処理機能を用いた「障害物検知機能」により、通路にある障害物の認識および障害物までの距離を測定し、より安全性の高い自律走行を可能とする。そのほかの機能としては、遠隔地に伝送する映像に映り込んだ人物の顔にぼかしを加える「プライバシー保護機能」の実装も検討されている。

 これまでにも、自動運転車いすは空港や病院内など限られたエリアでの実証実験が行われてきた。しかし、AIによる自動運転のみでは、GPSを見失った際に自律走行できなくなることがあった。また遠隔操作においても従来の4Gではタイムラグが発生するため、瞬時の切り替えや操作などに不安があったという。さらに、人が多く集まる場所やデジタルマップが存在しない場所への誘導、通路の障害物回避などが難しいといった課題もあった。

 そこで、今回の実験では、5GNTTドコモが開発したクラウドダイレクト接続を利用することで、高精細で遅延のない映像伝送が可能となり、遠隔操縦の安全性と信頼性がさらに高められたという。例えば、利用者の体調不良時など緊急時には、瞬時にオペレーターがモニターから判断し、自動運転から遠隔操作に切り換えて対応することが可能となる。

 5Gの特徴は、周波数帯域の広さにある。この帯域幅が広いほどより大容量のデータを高速で通信することが可能になる。例えば、2時間の映画をダウンロードする場合、4Gと比較して半分以下の時間でダウンロードできる。一方で、5Gは直進性が高く、遮へい物があると電波が通じにくいという特性もあるが、NTTドコモの担当者によると、施設内の利用に限れば基地局を必要数設置することでその問題は解消できるとのことだった。

地図データにない場所へもスムーズな遠隔操作が可能

 体験会では、「WHILL Model C2」に「エッジAI対応5Gデバイス」が搭載されていた。「WHILL Model C2」は、利用者が乗車している時には歩行者に区分されるパーソナルモビリティだ。同機には、遠隔操作時でも周囲の安全確認がしやすいよう、前方用カメラ、360度カメラ、GPS、赤外線センサーなどが背後の高い位置に装備されている。

 利用者は、左側のアームレストに設置されたスマートフォンから、行き先設定や遠隔操作への切り替えを行う。名前やID登録をすることで、過去に利用した履歴から利用者の好みにマッチした店やイベントを紹介してくれるのだという。

 端末に話しかけて行き先を設定すると自動走行がスタート。ブース内の柱や壁などを避けて走行し、目的地に到着した。次に、地図データのない行き先として、特設イベントの「福岡物産展」を設定する。あらかじめ地図データがある場所に関しては、自動運転での案内が可能だが、特設会場などの際には遠隔操作に切り替わるのだ。遠隔操作においても、既存の柱や壁の回避はもちろん、突発的なアクシデント(通行人や障害物)にも遅延なく対応できるという。

 開発を担当する久留米工業大学交通機械工学科学科長でインテリジェント・モビリティ研究所所長でもある東大輔(あずま だいすけ)教授に今後の展望について話を聞いた。東教授は、なんと「ランサーエボリューションX」の空力デザインに携わった経歴の持ち主なのだ。「速さは大分変わりましたが、安全に利用者を目的地に運ぶという目標は変わりません。今後は、施設内のみならず公道での展開も考えています」と語ってくれた。

 今後、日常的利用が実現すれば、車いすの概念が変わっていき、外出に介助者が必要だった人たちなどの行動範囲も広まり、より暮らしやすい将来が期待できそうだ。

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