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クルマ最終更新日:2021.03.04 公開日:2021.03.04

ホンダ・レジェンド、世界初のレベル3自動運転車に|自動運転の現在地(後編)|清水和夫が徹底解説「クルマの未来」第2回

自動運転のレベル2、レベル3って一体なにがスゴイの? モータージャーナリスト清水和夫が次世代モビリティについて優しくひも解く新連載。第2回は「自動運転の現在地(後編)」をお届けします。

文・清水和夫

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自動運転の現在地(前編)|清水和夫が徹底解説「車の未来」<新連載>第1回ホンダ・レジェンドのインテリア。自動運転車だからといってコクピット周りが大きく変わることはない。

運転の責任はドライバーにあり

【前編はこちら】

 正式に自動運転と呼べるのはレベル3からである、ということを前回解説させていただいた。ただしレベル3の場合、走行中に自動運転の走行条件を満たさなくなったら、ドライバーが運転操作を代わることになっている。走行中に、人とシステムの間で運転操作の主体が移譲されるわけだ。そういったことも含めて、どんな法令や保険が適用されるのか気になるところだ。当然、これまでの制度を変える必要があった。

 まず、いままでの法改正のプロセスから説明するが、2018年に法制度の整備大綱を発表し、2019年に道路運送車両法と道交法の改正を交付、20204月1日に正式に施行された。WP29といわれる国際基準が施行されるのが20211月なので、日本は法改正で世界をリードしたことになる。

 国土交通省令である道路運送車両の保安基準から見てみると、現状、その内容は、高精度地図が整備された高速道路で渋滞時に時速60km以下での自動走行レベル3を前提としている。ODDと呼ばれる運行設計領域(センサーなどの走行条件)から外れたり、自動運転システムが対応できなくなると、ドライバーに運転操作を交代するようクルマ側から要請される。

 ここで、もしドライバーが運転交代に応じないときは、クルマ側で自動で緊急停止させる措置(ミニマム・リスク・マニューバー)が起動し、最低限の安全性が確保される。具体的には運転交代の警報が鳴ってから10秒後にこの措置が実行されることと法令で定めている。

 また警察庁が所管する道路交通法ではどんなことが規定されたのか。そこにも触れておきたい。まずコンピューター・システムが操作する自動運転も、従来からの「運転」という概念に含めることとし、自動運転中でもドライバーには安全運転義務があることを明確化した。

 ここは分かりにくいが、ドライバーは安全運転だけではなく、事故が起きたときの被害者救護義務もあることが明記され、さらに運転中の作動状態を記録するデータを保存することも道交法は求めている。ここまでがドライバーのレベル3での役割だが、ここからはレベル2とレベル3の技術的な面での違いについて考えたい。

自動運転の現在地(前編)|清水和夫が徹底解説「車の未来」<新連載>

レベル3における自動運行装置の国際基準について国交省が発表した資料。レベル3の作動条件は、高精度地図が整備された高速道路で渋滞時に時速60km以下で走行していることと規定している。

自動運転の現在地(前編)|清水和夫が徹底解説「車の未来」<新連載>第1回

レベル3を実現したホンダ・レジェンドに備わる自動運転のための装置

レベル3のメリットとは?

 さきほど、レベル3では高精度地図を装備することが前提となると述べたが、自動車のハードウェアも高度な技術が求められる。例えばパワー・ステアリングなどの重要な機能は電源喪失などのリスクに備え、二重系の安全性が求められている(冗長性)。さらにドライバーをモニターするシステムも不可欠である。つまりレベル3を満足するには、より高度な安全性とドライバーの監視機能が車に求められている。

 最後にレベル3はどんなメリットあるのか考えてみたい。今のところ、高速道路の渋滞を想定しているので、時速60km以下では追突のリスクが大幅に軽減され、車間距離が一定に保たれるので渋滞緩和にも貢献するだろう。

 今回認定されたホンダの場合、高速道路の渋滞を想定し、時速30km以下になったときに自動運転が利用でき、時速50kmを超えるとレベル3はキャンセルされ、レベル2として運転することになる。このようにレベル2と3を上手に使うと、ドライバーの疲労低減にもなるとともに、レベル3ではドライバーはスマートフォンや車載TVなどを使用することも可能になる。

オールジャパンの体制が重要

 私は7年間にもわたるSIPなどの政府系会議の議論に参加してきたが、ルール作りと技術開発では時代を先取りすることがいかに大切なことなのかを主張してきた。またSIPのようなオールジャパンの開発体制が極めて重要だと思っている。自動運転が目指す社会的価値を見つめ、それを実現するための取り組みは、今後も続いていくだろう。今回の自動運転車の実用化はその長い道のりの第一歩であるが、偉大な一歩であると感じている。

清水和夫
武蔵工業大学電子通信工学卒
1981年からプロのレースドライバーに転向
1988年本格的なジャーナリスト活動開始

日本自動車ジャーナリスト協会会員(AJAJ)
日本科学技術ジャーナリスト会議 会員(JASTJ)
NHK出版「クルマ安全学」「水素燃料電池とはなにか」「ITSの思想」「ディーゼルは地球を救う」など

国家公安委員会速度取締り見なおし検討委員(終了)
NEXCO東道路懇談委員・継続中
国土交通省車両安全対策委員・継続中
内閣府SIP自動走行推進委員(2014~2019/6)
経済産業省・国土交通省 自動走行ビジネス検討会委員
経済産業省・国土交通省 自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究
検討会・継続中

清水和夫主宰 無料動画サイト ダイナミックセイフティテストなど
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

清水和夫監修 政府系自動運転のYouTube。
https://sip-cafe.media/

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