2021年03月14日 06:00 掲載

次世代技術 タイヤ用X線CT「4D-CT法」が約1000倍に高速化。ゴムの壊れる様子が克明に

住友ゴム工業、東北大学の2者は3月8日、住友ゴムが2015年に開発したX線CT3次元画像撮影技術「4D-CT(4次元X線CT)法」を大幅に改良し、それまでの約1000倍となる、およそ0.01秒という高速度撮影を実現したと発表。この性能向上により、実際のタイヤ使用時の速度で撮影してもぼやけることなく、ゴムにブリスターが発生して壊れていく様子が鮮明に撮影できるようになったとし、動画も公開された。

神林 良輔

 住友ゴム工業は、世界で最初の空気入りタイヤを製造した「ダンロップ」と、モータースポーツ活動からフィードバックしてタイヤを開発している「ファルケン」のふたつのブランドで知られるタイヤメーカーだ。

 そんな同社が2015年にタイヤ開発の一環として発表したのが、新素材開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」である。理化学研究所、高輝度光科学研究センター、日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構、J-PARCセンター、総合科学研究機構、東京大学との大型共同研究による成果だ。大型放射光施設「SPring-8」や、大強度陽子加速器施設「J-PARC」、当時はまだ運用中だったスーパーコンピューター「京」なども活用された、まさにビッグプロジェクトだったのである。

 ADVANCED 4D NANO DESIGNの基幹技術のひとつとして、タイヤの耐摩耗性能向上のために開発されたのが、タイヤのゴム素材のX線CT3次元画像を撮影できる「4D-CT(4次元X線CT)法」だ。X線CTは医療用途としてもお馴染みの、X線を利用して人体や物体の内部構造を画像化するコンピューター断層撮影技術である。

 タイヤが摩耗する主要因は、走行によってゴム中に発生する空隙(ボイド)だ。それを抑制するため、住友ゴム工業ではゴムにかかるストレスを低減させる新技術「ストレスコントロールテクノロジー」を開発。同技術を活かしたのが、耐摩耗性能を200%増にしたコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」である(画像1上)。

 そして、従来のタイヤと耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤを4D-CT法で撮影したものが画像1下だ。従来のタイヤ(左)ではボイドが大きいが、耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ(右)では大きなボイドがないのが確認できる。

(上)耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ。(下)4D-CT法で撮影されたゴム破壊の様子。黒い部分がボイド発生部分。

(上)耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ。(下)4D-CT法で撮影されたゴム破壊の様子。黒い部分がボイド発生部分。

 このような特徴を持つ4D-CT法だが、実は大きな課題もあった。1枚の3D画像を撮影するのに数秒を要するため、より詳細な画像を得るために撮影スピードの高速化が求められていたのである。

東北大の矢代准教授とタッグを組んで1000倍の高速化を達成

高速4D-CT法の装置概略図と3次元的にとらえられたゴム破壊が振興する様子。

画像2。高速4D-CT法の装置概略図と3次元的にとらえられたゴム破壊が進行する様子。

 そこで住友ゴム工業は今回、X線CTの撮影速度に関して世界屈指の技術を有する東北大学 多元物質科学研究所の矢代航准教授と共同研究をスタート。そして、従来の4D-CT法の約1000倍、約0.01秒での高速度撮影を実現した。

 この高速度撮影により、実際の走行時と同等のタイヤの回転速度でもぼやけずに撮影することが可能となった(画像2)。そして、実際に摩耗するときに近い状態でゴムが破壊していく様子を、連続的かつ多彩な角度から3次元的に観察できるようになったのである。動画1は、そうした高速度撮影された画像をつないだ動画だ。

動画1。高速4D-CT法で観察されたゴムの破壊が進行する様子。再生時間0分5秒。

 住友ゴム工業では今後、この技術を活用して耐摩耗性能に優れた、環境に優しいロングライフなタイヤの新材料開発を加速させるとしている。それと同時に、タイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」材料の開発にもつなげていくとした。

 また住友ゴム工業と矢代准教授との4D-CT法に関する共同研究も継続され、さらに高速度の撮影が可能となる「マルチビーム4D-CT法」の開発を進めていくとしている。それに加え、マルチビーム4D-CT法から得られるビッグデータの解析に向け、機械学習などの高度情報処理技術と融合させることで、高性能な材料開発を目指す計画だ。

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