2021年02月24日 16:00 掲載

次世代技術 ソニーが満を持してドローン事業に参入。電気自動車「VISION-S」も走った!【CES 2021】

ソニー製ドローンがついに登場。業務用撮影に特化したという「Airpeak(エアピーク)」は一体何がスゴイのか。車の先端技術からデジタルガジェットまで幅広く精通するジャーナリストの会田 肇氏が解説する。

文・会田 肇

高速で疾走するVISION-SにAirpeakは追従して撮影できる能力を備えられた(出典:ソニー)

高速で疾走するVISION-SAirpeakは追従して撮影できる能力を備えられた(出典:ソニー)

ソニー製ドローン「Airpeak(エアピーク)」は何者か

 手軽に空撮ができる機材として幅広いニーズが生まれているドローン。そんな市場にソニーは、今年1月、オンライン開催されたCES2021でプロ機材として参入することを発表した。そのドローンとは、同社がAIロボティクス領域を推進する一環として開発するもので、ドローンプロジェクト「Airpeak(エアピーク)」と名付けられた。早ければ2021年春にも発売を予定しており、新たなプロ撮影機材として今後の発展に注目が集まる。

 CES2021で用意されたソニーのサイトでは、同社が開発中のEVコンセプト「VISION-S」の走行するシーンを、Airpeakで捉える動画映像が公開された。同社はこのドローンにカメラを装備した上で、αシリーズのフルサイズミラーレスカメラを搭載できるドローンとしては業界最小クラスになると紹介。多彩な動きにもダイナミックに追従でき、「新たな表現の可能性を追求しながらエンタテイメント市場へ貢献していく」とした。

走るVISION-Sの姿を捕獲

 この発表についてソニーは2020年11月にプロジェクトを開始したことを明らかにし、ホームページ上ではAirpeakのティザー広告を展開していたが、実物を公開したのは今回のCES2021が初めてとなる。なお、12月にはドローンユーザーからフィードバックを得るため、Airpeakの体験ができるプロフェッショナルサポーターの募集も開始している。

 このプロジェクトでソニーは、イメージング&センシング技術や、リアリティ・リアルタイム・リモートの「3Rテクノロジー」を活用することで、ドローンのさらなる発展や価値創出への貢献を志すとしている。その目指す方向は、いずれコモディティ化が進むとみられるホビー用途ではない。同社の一眼カメラ「αシリーズ」を搭載して撮影ができるプロ仕様機材としてAirpeakを位置付けたのだ。

オンラインで開催されたCES2021でAirpeakを紹介するソニーの吉田憲一郎会長兼社長CEO(出典:ソニー)

オンラインで開催されたCES2021Airpeakを紹介するソニーの吉田憲一郎会長兼社長CEO(出典:ソニー)

Airpeakはフルサイズ一眼カメラ「αシリーズ」を取り付けて飛行して撮影することができる(出典:ソニー)

Airpeakはフルサイズ一眼カメラ「αシリーズ」を取り付けて飛行して撮影することができる(出典:ソニー)

 驚くのはAirpeakの正確で機敏さに富んだ動きだ。一眼カメラであるαボディにレンズを取り付け、これにカメラを水平に保つジンバル機構を加えればその重量は軽く2kgを超えているはずだ。それにもかかわらず公開された動画映像では、高速で走るVISION-Sと併走したかと思えば、その位置からあっという間に俯瞰撮影に切り替わったりもする。雪で覆われた針葉樹が広がる峠道を颯爽と走るVISION-Sの姿も映し出された。そのダイナミックな映像はまさに見応え十分だった。

 現時点でAirpeakの詳しい性能などは公開されていないが、ここまでの動きを可能にしたのは、Airpeakにはそれだけの重量物を抱えながらも高速かつ安全に飛ばせる能力が備わっているということだ。さらに自在にコントロールできる優れた操縦性を備えていることで、高い汎用性までも兼ね備えていると見ていいだろう。コンセプトカーとして注目度が高いVISION-Sを登場させ、それを撮影することでその実力の高さをアピールする。これはある意味、ソニーが話題性のあるVISION-S効果にあやかったとも想像できる。

フルサイズ一眼カメラ「αシリーズ」とジンバルを組み合わせれば2kgを超える重量となるはず (出典:ソニー)

フルサイズ一眼カメラ「αシリーズ」とジンバルを組み合わせれば2kgを超える重量となるはず (出典:ソニー)

こんな至近での撮影も可能にしたAirpeak。正確なコントロールができなければ実現しない(出典:ソニー)

こんな至近での撮影も可能にしたAirpeak。正確なコントロールができなければ実現しない(出典:ソニー)

中国DJIと真っ向勝負。ソニーに勝ち目はあるか?

 ソニーの吉田憲一郎CEOは、CES2021で公開したビデオ映像でAirpeakを「冒険的なクリエイターのためのAIとロボティクスのデザインを統合した新製品。映像クリエイターが視覚表現のための新たなフロンティアを探求することを可能にする」と紹介している。これまでこの分野は中国資本のDJIがほぼ市場を制覇している状態にあった。特にドイツの老舗カメラブランドであるハッセルブラッドを傘下に収めてからというもの、DJIは積極的にドローンとカメラの親和性を高めてきた。ソニーはその分野に満を持して参入するわけだ。

峠道を走るVISION-Sの姿を臨場感たっぷりの動画で捉えられたのもAirpeakの機敏な動きがあったからこそ(出典:ソニー)

峠道を走るVISION-Sの姿を臨場感たっぷりの動画で捉えられたのもAirpeakの機敏な動きがあったからこそ(出典:ソニー)

フルサイズ一眼カメラ「α7Ⅲ」を取り付けたAirpeak(出典:ソニー)

フルサイズ一眼カメラ「α7Ⅲ」を取り付けたAirpeak(出典:ソニー)

 実はソニーがドローンに関わったのは今回が初めてではない。2015年8月に自動運転システムの開発で知られるZMPと共同で「エアロセンス社」を設立していた。そこでは自律飛行ができるVTOL(垂直離着陸機)とクラウドサービスを組み合わせた業務用途向けドローンの開発を目指した。そのスペックは測量や土木といった分野での飛行精度にこだわり、GPSがない状態でも正確に自律飛行できることを追求していた。今回の発表でソニーはその関係性について言及していないが、そうしたエアロセンスでの経験がAirpeakの高精度な飛行につながったと考えるのが妥当だろう。

機敏な飛行を支えるAirpeakのプロペラやモーターはソニーがオリジナルで開発した(出典:ソニー)

機敏な飛行を支えるAirpeakのプロペラやモーターはソニーがオリジナルで開発した(出典:ソニー)

Airpeak自体にもカメラを装備しているのがわかる(出典:ソニー)

Airpeak自体にもカメラを装備しているのがわかる(出典:ソニー)

 こうした背景を踏まえれば、Airpeakが単にカメラ用撮影機材だけにとどまることはないと思うのが自然だ。公開された動画映像ではオペレーターがカメラ映像を見ながらコントロールしていたが、今後、ソニーはAirpeakをロボティクス開発の一環として完全自律飛行も視野に入れている。そうなれば目視外での飛行も可能となり、過疎地への輸送や災害時での活躍も期待できる。Airpeakの高い操縦性と安全性は、その活用範囲を大きく広げた新たなドローンとしてその姿を見る日は近いのかも知れない。

Airpeakは今春より業務用途向けとして販売される予定だ(出典:ソニー)

Airpeakは今春より業務用途向けとして販売される予定だ(出典:ソニー)

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