フォーミュラE公式テスト、日産e.damsのブエミが好タイム
日産のワークスカラーが施された日産e.damsチームの「Gen2フォーミュラEカー」のテストでの様子。ドライバーはエースのセバスチャン・ブエミ。また日産e.damsチームは新たにロイヤル・ダッチ・シェルPLCとのパートナーシップを締結。マシンのフロントノーズの「ABB」のロゴのすぐ後ろやリアタイヤのエアロパーツなどに、黄色地に赤い縁取りをした貝殻形ロゴマークが追加された。
EVのF1こと、ABB FIAフォーミュラE選手権。2018年12月15日のシーズン5(18-19シーズン)開始を前に、日本時間10月17日(水)から19日(金)まで公式プレシーズン合同テストが開催された。開催地はスペイン・バレンシアのサーキット・リカルド・トルモだ。注目の日産e.damsチームは、フォーミュラEのシーズン2王者であるセバスチャン・ブエミがシェイクダウンテストを担当した(マシンの詳細はこちら)。
今回は2台のシェイクダウンテストが行われた。本来、ブエミはカーナンバー9で、セカンドドライバーのアレックス・アルボンには22が与えられているが、ブエミはファンサービス的に日産伝統の”23号車”のカーナンバーが記された「Gen2フォーミュラEカー」を走行させた。また3日目にはアルボンではなく、オリバー・ローランド(英国・26歳)もステアリングを握っている。ちなみにアルボンは、今回のテストでは走行していない(ドライバーラインナップについてはこちら)。
日産e.damsチームのナンバー1ドライバーで、シーズン2王者のセバスチャン・ブエミ。トヨタが2018年のル・マン24時間レースで優勝した際のドライバーのひとりでもあり、日本に縁のあるドライバーだ。
「Gen2フォーミュラEカー」はどんなマシン?
サイドからだと”23″の数字がよくわかる。23とは、もちろん”ニッサン”の意味。スーパーGTなどでもワークスチームのNISMOのマシンはチャンピオンナンバーの1以外の時は23号車だ。
フォーミュラEのシーズン5では、全11チームの22名のドライバーが第2世代マシン「Gen2フォーミュラEカー」を使用するが、モーター、インバーター、ギアボックスは各チームが独自開発したものを採用可能だ。日産e.damsの「Gen2フォーミュラEカー」も日産のノウハウが入ったそれらが搭載されている。
またシーズン4まで参戦していた、日産とアライアンスを組むルノーが持つノウハウも共有し、シーズン5に活かせるものを採り入れていくという。さらに、日産e.damsのレース活動を担当するのがワークスのNISMOであることから、これまで世界中で行ってきたレース活動で得られた、タイヤマネジメントのノウハウなどもレース戦略の中に採り入れていくとしている。
またバッテリーの高性能化により容量が2倍になったことから、シーズン4までとは異なり、レース中にひとりのドライバーがマシンを乗り換える必要がなくなる。1台のマシンで最初から最後まで戦うことになるのだ。「Gen2フォーミュラEカー」の基本マシンスペックは出力250kW、時速0-100kmのタイムが2.8秒、最高速度は時速280kmとなっている。
F1に代表されるフォーミュラカーでは大型リアウイングが一般的。しかし、「Gen2フォーミュラEカー」にはそれがない。大きな乱流を生み出さないための工夫で、F1に比べれば、後続車がスリップストリームに入りやすいデザインとなっている。
日産e.dams&ブエミはテストでどれだけの成果を出せた?
コーナーを攻める日産e.dams「Gen2フォーミュラEカー」。
初日、ブエミは8番手タイムとなる1分18秒100をマーク。このタイムは、同サーキットで開催されたシーズン4(17-18)のプレテストにおける最速タイムよりも3.722秒も速かった。「Gen2フォーミュラEカー」はタイヤも新スペックに改められており、トータル性能が大幅に上がったことが確認されたのである。
2日目にブエミは一時トップタイムをマーク。最終的に同日の最速タイムから0.131秒遅れの1分17秒473をマークし、この日のテスト全体で4番手となるタイムを記録し、まずまずの順位となった。
そして3日目は、「Gen2フォーミュラEカー」初のウェットコンディションに。ブエミはシーズン1から参戦しているが、フォーミュラEでのウェットコンディションは初体験だという。ウェット時のマシンの挙動を確認できたことを「とても重要なこと」とコメントしている。
ウェットコンディションでの走行。ブエミはシーズン3では2戦欠場しているが、シーズン1から出場しており、ほぼ連続出場。しかし、4年間で43戦参加して一度も雨に降られたことがないというのは、かなりの晴れ男ではないだろうか。
最終的に3日間合計で日産e.damsチームは247ラップを走行。パワートレインとエネルギーマネジメントの開発を進められたという。ブエミは「パワートレインを開発する上で重要なテストとなりました。今はこのチームと迎える最初のレースをとても楽しみにしています」とコメントしている。
ちなみに今回のテストで最速タイムを記録したのは、BMW I アンドレッティ モータースポーツの28号車に乗るアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ。1分16秒977をマークした。3日間を通してBMW I アンドレッティ モータースポーツが好調だったことから、日産e.damsチームのジャンポール・ドリオ監督もシーズン5の競争が激しくなると予想している。今回、アルボンがテストに参加できなかったことは痛手といえ、「開幕前にできるだけ早くステアリングを握る機会を与えられるようにし、サウジアラビアでの開幕戦に備えたい」とした。
開幕戦は、2018年12月15日。サウジアラビアのリヤドで開催となる。フォーミュラEに初めて参戦する日本メーカーとして、また36万5000台超という世界で最もEVを販売しているメーカーとして、日産の負けられないレースがいよいよ始まる。
戦う男の鋭い眼光を放つブエミ。2日目に総合4番手タイムをマークしたとはいえ、予断を許さない状況である。
2018年10月26日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)