【CEATEC2016特集】未来型コネクターは非接触式!
このごついのは何!? と思いきや、車載用ECU防水コネクターなのだ。
10月4日から7日まで、幕張メッセで開催された日本最大級の総合家電展示会「CEATEC2016」。
オートモーティブ系のBtoB製品の展示を行っているエレクトロニクス系の企業も多数あり、タイコ エレクトロニクス ジャパンもそのひとつ。同社は、接続技術に関して世界的に知られているTEの日本法人であり、車載用の各種コネクターも展示していた。
車載用のコネクターの中にはとてもゴツイのが!
同社の車載用コネクター製品の一例。注目は右下。
日本車におけるTE製コネクターの採用率は非常に高く、例えばトヨタは現在は同社製のもののみを採用している。そのほか、ホンダなども搭載しており、それだけ同社のコネクターは信頼度が高いというのがわかる。
現在のクルマは電子化が進んでいるため、データの送受信量も多いことからピン数を多くする必要があるのだ。
さらにクルマという加減速や遠心力が加わる上に路面からの衝撃などもある機械において、確実に接続し、その一方で整備時などではきちんと取り外せることも求められることから、画像にある車載用ECU防水コネクターのような大型化が進んでいるのである。
磁界共鳴により非接触でも送受電などが可能!
同社の最先端の接触技術で、非接触方式の「ARISO」。
また同社の技術として興味深かったのが、「非接触式」接続技術の「ARISO(アリソ)」だ。
ARISOは「磁界共鳴」と呼ばれる物理現象を原理としている技術。非接触で電気を伝える方法としては、昔、理科で習ったファラデーの法則を使う「電磁誘導」が有名だが、今回の技術は最近注目されている「磁界共鳴」を使ったもの。ごく簡単にいうと、振動している音叉の近くに別の音叉を置くと振動が伝わるが、それと同様に磁気の波も共鳴して伝わる特性を使って、電気を非接触で伝える技術である。電磁誘導に比べて長い距離でも伝えることができ、ズレにも強いのが特徴だ。今回の「ARISO」では、最大距離で7mm、最大傾き角度で35度、最大ズレ許容範囲で5mmまでの送受電およびデータの送受信を行える。送信側と受信側の間に水や油、塵などがあっても有効である。
使用用途として最も適しているのは、ケーブルで送受電や送受信を行うと、ねじれてしまうようなケースだ。
例えばロボットアームにおいて、手首から先がぐるぐると回転するような仕組みになっているとしよう。手首から先にも指のモーターを動かすのに電力やデータを送りたかったり、指先のセンサーからのデータを本体内のコンピュータで受け取りたかったりというような場合に、ケーブルがねじれてしまう心配のないARISOは有効というわけだ。
非接触式というと、水が漏れ出てしまうように、電気やデータがちゃんと伝わらなさそうなイメージがあるが、ARISOはそのようなことは “もちろん” ないそうである。
仕様は以下の通りだ。
最大コンタクト間距離:7mm
最大傾き角度:35度
最大ズレ許容:5mm
使用周囲温度:-20~55度
入出力電圧:24V DC
入出力電力:500mA(給電容量12W)
信号数:2チャンネル/8チャンネル
信号タイプ:GPIO(General Purpose Input/Output)
IP規格:IP67
ディオラマを用いた、ARISOのデモ。
ARISOは送受電も送受信も可能!
ARISOはブースにおいては、Nゲージのディオラマを用いた体験デモンストレーションが用意されていた。ボタンを押すと、コントロールボックスから電力がARISOを通じてディオラマに供給され、街の電灯が点り、自動車と鉄道模型が動き出すというものだ。
その逆の流れとして、ディオラマのTEジャパン本社ビル屋上のソーラーパネルに当たる光の量を調整すると、発電量増減の信号をソーラーパネルからARISOを通じてコントロールボックスにフィードバック信号として送信。コントロールボックスの発電量モニターのLEDを、発電量に応じて点灯させるという仕組みにもなっていた。
振動にも強いことから、こうした非接触式の接続技術が車載用コネクターとして採用される日も来そうである。
2016年10月21日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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