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クルマ最終更新日:2016.06.20 公開日:2016.06.20

トヨタ、第84回ル・マン24時間レース決勝でまさかの…!

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5号車と6号車のランデブー走行。一時的に1-2体制もあった。

 現地時間6月18日15時に決勝をスタートした、第84回ル・マン24時間レース。日本からは、トヨタ自動車のワークスチームである「TOYOTA GAZOO Racing」(トヨタ)が、FIA世界耐久選手権WECシリーズに2台体制で参戦しており、第3戦として組み込まれているル・マン24時間に挑んだ(同チームの参戦体制などの詳細はこちら、予選の結果はこちら)。

 スタート前から雨が強く降っており、決勝はスタートして1時間近くをセーフティーカー先導での隊列走行となった。雨が上がり、路面が乾き始めて事実上のスタートが切られると、トヨタがル・マン必勝を狙って開発に開発を重ねた2016シーズンマシン「TS050 HYBRID」が圧倒的な強さを見せ始める。

燃費でライバルを寄せ付けなかったTS050 HYBRID

 TS050 HYBRIDは1周13km強のサルト・サーキットを14周できる燃費を見せ、同じく最上位クラスのLMP1H(ハイブリッド)に参戦するポルシェ・チームの「ポルシェ 919 HYBRID」が13周、アウディ・スポート・チーム・ヨーストの「アウディR18」に至っては12周と、ライバルを圧倒。

 たかだか1周の差と思われるかもしれないが、24時間で考えると、1回から2回はピットインの回数をライバルたちよりも少なくできるということ。ピットインでのタイムロスが1回1分から1分半であることを考えると、非常に有利である。走ってライバルに1分から1分半の差をつけるにはとても大変なことで、燃費の良さは耐久レースでは武器となる。

 しかも、トヨタは予選こそ雨に翻弄され、1・2番手をポルシェに持っていかれたものの、決勝でのペースはまったく遜色がないものであったことから、ライバル勢をさらに慌てさせることに。走ってトヨタに1分から1分半の差をつけるのが非常に困難で、あとはトラブルやもらい事故など、他力本願にすがるしかない状態となった。

 タイムがいい上に燃費が圧倒的にいいというTS050 HYBRID。30年余りに及ぶ挑戦の末にいよいよトヨタのル・マン初制覇か、という日本のモータースポーツファンが望む最高のラストが序盤の段階から見えてきたのだ。

 他車と接触したり、単独スピンでグラベルにはまりかけたりするなど、6号車の方に若干ひやりとさせる事態があったが、5号車の方は序盤に速度が上がらなかったこと以外はほぼ問題がない状態。ピットインのタイミングで1位をポルシェ2号車に譲ることはあるが、終盤は5号車、2号車、6号車のトップ3となる。トヨタ、悲願のル・マン初制覇まであと一歩と迫った。

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序盤の速度が上がらない以外は、ほぼノー・トラブルだった5号車。

→ 次ページ:
ついにトヨタがル・マンを制するか!?

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TS060は、他車との接触やスピンなどでポルシェ2号車に終盤は3ラップ遅れとなってしまう。

終盤も終盤になってまさかの…!!

 10分を切り、2号車は5号車と同一周回をキープしていたが1分半のタイム差があり、もうトヨタの勝利は目前と思われた時だった。なんと残り5分、あと2周すれば優勝というところで、5号車の最終ドライバーを担当していた中嶋から悲鳴のような無線がピットに飛ぶ。エンジンのパワーがない!

 速度が上がらず、しまいには止まってしまう5号車を抜き去っていく2号車。ポルシェは、2年連続、18回目となるル・マン総合優勝を果たしたのであった。2016年のル・マンは23時間55分、トヨタがレースを支配していたといっても過言ではないが、その手からまたもや勝利がこぼれ落ちていったのである。

 完走となるには、総合優勝車のチェッカーから6分以内にチェッカーを受ける必要があるのだが、5号車はそれがかなわなかったため、失格。それにより6号車が2位に繰り上がり、3位は今回は2台とも不調だった強豪アウディの8号車。複雑な気分で6号車の小林ら3人は主催者公式発表で26万人という大観客の祝福を受け、今年のル・マンは終了した。

来年も帰ってくるとトヨタ陣営のコメント

 中嶋は、最終ラップに息も絶え絶えの5号車をなんとか走らせ、マーシャルやファンからとても温かく迎えられた。終了後、感情が高ぶるなか、来年こそトロフィーを獲得しに戻ってくるとコメント。

 また6号車の小林は2位という結果を望んでいたものではないとし、満足していないとしている。

 そしてモータースポーツ好きで知られるトヨタの豊田章男代表取締役社長は、チームのメンバーやファンのことを思うと言葉が見つからないとしたが、ライバルチームに敬意を表すると同時に、トヨタが本当の負けを味わわせられたので、来年もWECとル・マンに帰ってくるとし、「負け嫌い」のトヨタを待っていてほしいとコメントした。

 長い歴史の中でもなかなか見られない、特に日本人やトヨタファンにとってはとても辛くて忘れられない、劇的な結末となった第84回ル・マン24時間レースであった。

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5号車失格で2位に繰り上がった6号車の小林可夢偉(中央)ら。

2016年6月20日(JAF MATE社 IT Media部 日高 保)

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外部リンク

ル・マン24時間レース公式サイト

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