2016年06月13日 12:40 掲載

ニッポンの皆の衆 あるゆずの村。土佐・北川村の物語
文=中丸謙一朗


●美しき自然の村に乗り込んだ男

 今回の物語の舞台は、高知県東部の山あいの村、人口約1400人の北川村である。

 北川村はゆずの名産地。かつては県内一の生産量を誇 っていた。いまでもその恵みは村の隅々にまで感じられ、経済的にも気風的にも豊かでのんびりとした雰囲気に包まれている。

 北川村の主な観光資源は、「北川村モネの庭・マルモ ッタン」(フランスの画家・モネの絵画を模した景観が楽しめる西洋式庭園)と幕末の志士・中岡慎太郎の館。人気の「北川村温泉」は、残念ながら、ただいまリニューアル準備中である。

 ここ北川村中心部には一軒も居酒屋がない。村役場の周辺に「なんでも揃う」酒屋さんが一軒あり、昼食どきにはお弁当も買える。鉄道の駅もなく、仕事関係の宴席には、村に隣接した海沿いの奈半利町にまで足を伸ばすことになる。

 たしかに、都会的文明生活の面ではやや劣るけど、北川村は美しい自然でいっぱいだ。ふと、耳を澄ますと聞こえる川のせせらぎや鳥の声。かわいい幼稚園児の遊び声。そんなのどかな村に、最近になって、単身乗り込んできたのが、北川村副村長・鈴木康正さんである。

 鈴木さんは前職である高知県観光振興部から、新村長のもと、請われるかたちで北川村にやってきた。

 東京で知己を得ていたわたしは、彼が北川村に赴任したと聞いて、図々しくもさっそく会いに来た。鈴木氏との再会のご挨拶を済ますと、慣れない土地での新生活の労も見せずに、北川村の魅力を喜々として語り始めた。

 どうやら、(以前おうかがいしていた)広島球場まで足を運んでまでする熱狂的な「カープの応援」はしばらくの間封印らしいが、ひとつここで、鈴木さんにお聞きした北川村の物語をひもといてみる。

 それは、先に紹介した「北川村モネの庭・マルモッタン」誕生の物語である。

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