ウインカー、ハザードランプの使い方。菰田潔の合図の話
勘違いしやすいクルマの合図。間違った使い方をしていると周囲の交通に誤解を与え、危険なこともある。ここではそんな間違った使い方をされやすい合図を中心に解説する。
前々回はヘッドライト、前回はヘッドライト周りについての解説だったが、今回は誤解されやすい合図について考えてみたい。
ウインカー(方向指示器)
ウインカーは日常の運転では頻繁に使うcar to carコミュニケーションのひとつだ。これにも安全な使い方がある。
多くのドライバーの運転を見ていると、ウインカーを点けるタイミングが遅い。もっと早く出した方が安全になるだろう。例えば交差点で左に曲がるときには、減速を始める前、つまりブレーキをかける前に左ウインカーを点けるといい。周囲のクルマはウインカーを見て、次に減速するのが予想できるからだ。ウインカーを点ける前に減速すると追突を誘発する危険性がある。
車線変更でも少し長めに出すつもりで走った方が安全になる。道交法では3秒前に出すことになっているが、もっと手前で出しても良い。ウインカーは、周囲のクルマに対してこれから自分がどうしたいかという意思表示なのだから。
正しくウインカーを使えば事故が減るはずだ。しかし早いタイミングでウインカーを出すと前に詰めてきて入れてくれないということもありえるから(これについては狭量な人が多くて嘆かわしいのだが)、車線変更を始めてからウインカーという運転になり危険である。だから、相手のクルマがウインカーを点けたら無理のない範囲で入れてあげると、自分も周囲も安全である。
ハザードランプ
ハザードライトの本来の使い方は、止まってはいけないところに止まってしまい自車が障害物になっているときに点滅させるものだ。だから基本的に走りながら使うものではない。
挨拶で使うのは正しくない。サンキューハザードなどという言葉もあるようだが、ハザードランプを何回か点滅させるのがお礼だと思っているドライバーが増えてしまった。
無理やり割り込もうとするとき、最初からハザードランプを点滅させながら走ってくるクルマもある。先にお礼をすれば入れてくれるという理屈らしいが、これも間違っている。
タクシーが目の前に割り込んできたが、そのときハザードランプを点滅していた。割り込まれたドライバーはお礼なのかと思ったら、タクシーは客を乗せようと急停止したため、ぶつかったという事故がある。
いま誤解を招く合図の代表になっている。
お礼をするなら手で
お礼の基本は、自分の手を挙げるのがわかりやすい。これももしお礼をするのなら、という前提だ。運転に余裕がないビギナーなら手を挙げなくてもいい。
手を挙げてもスモークガラスで見えないという意見もある。そのとおりだ。だからスモークガラスは賛成しない。car to carコミュニケーションが取りにくいスモークガラスのクルマは、私も運転したくない。
後方へのお礼は、通常は左右座席の間付近で手を挙げるのがいいが、すれ違いで待ってもらった対向車に対してお礼をするなら、ハンドルの前あたりのダッシュボードの上で手を広げれば相手も見やすい。
2018年3月14日(モータージャーナリスト 菰田潔)
菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。 タイヤテストドライバーなどを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター / 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。