2月27日開通の横浜北線・馬場出入口は、首都高初の「らせん方式」
3年前に開通した首都高・神奈川7号横浜北線で、唯一工事中だったETC専用の「馬場出入口」が、2月27日(木)12時に開通することが発表された。それに先立って2月18日に報道公開が行われ、首都高の出入口で初めて採用されたという「らせん方式」の連絡路など、特徴的な構造が披露された。
首都高・神奈川7号横浜北線(K7北線)は、横浜港北JCT(※1)から生麦JCT(※2)までをつなぐ高速道路として、2017年3月18日に開通した。延長約8.2km、そのうちの約7割にあたる約5.9kmをトンネル区間とする、往復4車線(第2種第1級)の高速道路だ。出入口は内陸部側(横浜港北JCTの東側)に新横浜(4方向)が、港湾部側(生麦JCTの西側)に岸谷生麦(きしやなまむぎ・4方向)がある(画像2)。
2018年4月に首都高から発表された開通1年後の整備効果によれば、K7北線(新横浜出入口~港岸谷生麦出入口間)の1日の利用台数は約2万台だという。また、新横浜駅から羽田空港間の所要時間は約8分短縮して約35分に、新横浜から横浜港の所要時間は約6分短縮して約18分になり、アクセス性の向上にも寄与している。
2月27日開通するETC専用・馬場出入口とは?
今回開通する馬場出入口(画像3)はK7北線3つ目となる出入口で、同線の中間付近に位置する。太田神奈川線(県道111号)に接続しており、上下線それぞれの出入口が用意されたフルICで、ETC専用だ(出口に関しては現金車も利用可能)。
馬場出入口はK7北線の建設時点ですでに計画されていたことから、連絡路と本線との合流部はあらかじめ想定して建設されていた。それにより、開通済みのK7北線に与える影響を最小限に抑えつつ、馬場出入口は建設を進めることができたのである。
内路交差点側からのアクセス路は2020年内に開通
なお入口に関しては、太田神奈川線の北西方向の法隆寺交差点側からと(画像4・7)、南東の内路(うつろ)交差点側(画像6)の2方向からアクセスできる予定だ。ただし内路交差点側からのアクセス路は、JR横浜線に近接していることから特に慎重に工事が進められており、開通は2020年内というスケジュールだ。それまでは、法隆寺交差点側からのアクセスのみとなる。
料金所は3レーンあるうちの右側のみを当面は使用し、中央は非常用
馬場出入口の料金所は3レーン用意されている(画像8)。ただし、内路交差点側からの入口アクセス路が完成していないため、当面は右側レーンのみが使用されることになる。中央は、誤って進入した現金車と、ETCカードをセットし忘れたクルマのための非常用だ。
誤って進入した現金車も、ETCカードをセットし忘れた場合も、非常用レーンに進んでインターホン(画像9)で係員と話をし、身分証明をして後日払いとすることで通してもらえる。開通直後はETC専用と知らずに現金車の誤進入が多くなることも考えられることから、少なくとも内路側の入口アクセス路が開通するまでは中央レーンを非常用とするという。
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馬場出入口の建設ではどんな技術が?
コンパクトな敷地内に通すため、馬場出入口の4本の連絡路は急カーブかつ急勾配に
続いては、馬場出入口の構造的な特徴や建設時のポイントなどについて。馬場出入口の周辺は丘陵地帯であり、法隆寺交差点側の入口アクセス路の左側は崖となっている。一方の内路交差点側の入口アクセス路のすぐ脇をJR横浜線が走っており、広い敷地を確保するのが難しい土地だ(画像10)。そのため馬場換気所の敷地も利用して、新国立競技場(約250m×約340m)の約40%(約220m×約115m)というコンパクトな敷地内に作る必要があり、入口アクセス路や連絡路が急カーブのらせん構造をした特異な出入口となったのである。こうしたらせん方式は、首都高ではC2中央環状線と3号渋谷線が接続する大橋JCTで採用しているが、出入口では初採用だという。
また首都高では、C2中央環状線の西側区間でトンネル(地下)方式の高速道路を建設した経験を持つが、これだけコンパクトな敷地で地下52mの本線へ向けて連絡路を4本も建設するのは初めてだったそうである。敷地のコンパクトさと本線の深さにより、4本の連絡路の最小曲線半径(R、※3)と最大縦断勾配(i、※4)は、以下の通りとなった。
●Aランプ(下り線:第三京浜・横浜港北JCT方面への入口連絡路):R=80m、i=7.4%
●Bランプ(下り線:K1横羽線・K5大黒線・生麦JCT方面からの出口連絡路):R=50m、i=7.6%
●Cランプ(上り線:K1横羽線・K5大黒線・生麦JCT方面への入口連絡路):R=51m、i=8.1%
●Dランプ(上り線:第三京浜・横浜港北JCT方面からの出口連絡路):R=109m、i=7.5%
4本の連絡路のうち、最大縦断傾斜が最もきついのが8.1%のCランプだ(画像11・12)。しかし、その傾斜でも地下52mの本線までは容易に到達できないため、最小曲線半径R=51mというタイトならせんを描くことで、本線まで到達させた。Cランプは全長360mあるが、実際に歩いてみると、傾斜の度合いはちょっとした山道だ。また、先を見通せない急カーブのブラインドコーナーが続くので、安全運転を心がける必要がある。
限界ともいうべきシールド工法の挑戦が行われた
連絡路の建設にはシールド工法(シールドマシンによる掘削工法)が採用された(画像14)。その理由は、開削工法だと地上から大きく掘り進むことになり、太田神奈川線の長期間通行止めなどが発生してしまうからだ。
今回のシールド工法によるトンネル掘削は、限界への挑戦ともいうべき条件で行われた。トンネル上端から地表面までの土砂の厚みを、専門用語で「土被り(つちかぶり)」というが、今回の最小土被りはBランプの1.3m。直径10.13~11.13m、全長10.2mの巨大なシールドマシンが、地表との厚みがわずか1.3mしかないところから発進する必要があったのだが、もちろんそれを成功させている。さらにBランプでは、急カーブ(R=50~70m)かつ急勾配(i=6.7~7.6%)が発進から約200m近く連続するため、その点もまた困難だったという。ゴールである本線との合流地点も、本線とBランプ間の厚みがわずか35cmという薄さで掘り抜いている。シールドマシンをより精密に操作することで、連絡路は完成に至ったのである(画像15)。
今回のシールドマシンは、急カーブかつ急勾配に対応できるよう、中央部で屈曲できる関節構造を持っている(画像16)。また曲線を描きながら地下へ向かっていけるよう、進行方向を細かく調整できる仕組みも持つ。シールドマシン後方には複数のアクチュエーターがあり、それぞれの力のかけ方を変更可能だ。それによって、カッター部分の向き(シールドマシンの進行方向)を定め、計画通りのコースを掘っていくことができるのである。
またシールドマシンは掘り進みながらセグメントというパーツをはめ込み、掘ると同時にトンネルの基礎構造を完成させていく。ただし、今回の連絡路は急カーブかつ急傾斜の部分が多いことから、カーブのインとアウトではセグメントのサイズを変える必要があった。そのため、曲線に対応可能な鋼製セグメントが使用されている。
連絡路のコーナー内側には避難用通路を用意
連絡路の制限速度は時速40kmのだが、急傾斜であることから速度が出やすい。しかも急カーブであるため、車両が速度超過でアウト側の側壁に衝突するような事故も起こりやすい構造といえるだろう。そうした万が一の交通事故、さらには火災事故などが発生した場合に備え、連絡路には本線同様に首都高の最新消火設備が備えられている。自動火災検知器が25m間隔で設置されているほか、死角がないようにテレビカメラも備えられ、押しボタン式通報装置と非常電話、消火器および消火栓は50m間隔で設置されている。また火災事故による有毒ガスなどが発生した場合は、天井に一定間隔で備えられた排気フリューが吸い込んで床版(路面)下の排気ダクトへと排気する仕組みだ。
そして独立避難通路は連絡路の側面に設けられている(画像17)。K7北線本線では床版下に避難空間が用意されており、一定間隔で用意された滑り台で逃げられるようになっているが、馬場出入口の連絡路はスペース的な問題でその仕組みを採用できず、側面に避難通路を設ける形となった。Cランプの場合はコーナー内側に設けられており、ここを通って地上に脱出することが可能だ。
馬場出入口は本線が地下にあるという難しい条件に加え、敷地の制限もある中で建設された。数ある首都高の出入口の中でもほかに例のない出入口である。こうした難しい条件でも完成させられるのが日本の建設技術の高さであり、それを実感させてくれるのが馬場出入口なのだ。