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最終更新日:2020.02.23 公開日:2020.02.23

2月27日開通の横浜北線・馬場出入口は、首都高初の「らせん方式」

3年前に開通した首都高・神奈川7号横浜北線で、唯一工事中だったETC専用の「馬場出入口」が、2月27日(木)12時に開通することが発表された。それに先立って2月18日に報道公開が行われ、首都高の出入口で初めて採用されたという「らせん方式」の連絡路など、特徴的な構造が披露された。

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画像1。首都高・神奈川7号横浜北線のETC専用馬場出入口。2月27日(木)12時に開通。

 首都高・神奈川7号横浜北線(K7北線)は、横浜港北JCT(※1)から生麦JCT(※2)までをつなぐ高速道路として、2017年3月18日に開通した。延長約8.2km、そのうちの約7割にあたる約5.9kmをトンネル区間とする、往復4車線(第2種第1級)の高速道路だ。出入口は内陸部側(横浜港北JCTの東側)に新横浜(4方向)が、港湾部側(生麦JCTの西側)に岸谷生麦(きしやなまむぎ・4方向)がある(画像2)。

※1 横浜港北JCT:E83第三京浜と接続し、3月22日(日)16時開通の首都高・神奈川7号横浜北西線とも接続する
※2 生麦(なまむぎ)JCT:神奈川1号横羽線(K1横羽線)および同5号大黒線(K5大黒線)と接続する

画像2。K7号横浜北線の全体図。横浜港北JCT側に新横浜出入口があり、生麦JCT側に岸谷生麦出入口がある。馬場出入口はその間に位置する。

 2018年4月に首都高から発表された開通1年後の整備効果によれば、K7北線(新横浜出入口~港岸谷生麦出入口間)の1日の利用台数は約2万台だという。また、新横浜駅から羽田空港間の所要時間は約8分短縮して約35分に、新横浜から横浜港の所要時間は約6分短縮して約18分になり、アクセス性の向上にも寄与している。

2月27日開通するETC専用・馬場出入口とは?

画像3。馬場出入口は上下線それぞれに出入口があるフルIC。

 今回開通する馬場出入口(画像3)はK7北線3つ目となる出入口で、同線の中間付近に位置する。太田神奈川線(県道111号)に接続しており、上下線それぞれの出入口が用意されたフルICで、ETC専用だ(出口に関しては現金車も利用可能)。

画像4。馬場出入口の法隆寺交差点側からの入口アクセス路。右へのカーブのしばらく先に、画像1の地点に出る。

 馬場出入口はK7北線の建設時点ですでに計画されていたことから、連絡路と本線との合流部はあらかじめ想定して建設されていた。それにより、開通済みのK7北線に与える影響を最小限に抑えつつ、馬場出入口は建設を進めることができたのである。

画像5。左が料金所へ向かう法隆寺交差点側からの入口アクセス路で、右は下り線からの出口。

内路交差点側からのアクセス路は2020年内に開通

画像6。馬場出入口・内路交差点側からの入口アクセス路。こちらは現在工事中で、2020年内開通の予定。右側壁の向こうをJR横浜線が走る。

 なお入口に関しては、太田神奈川線の北西方向の法隆寺交差点側からと(画像4・7)、南東の内路(うつろ)交差点側(画像6)の2方向からアクセスできる予定だ。ただし内路交差点側からのアクセス路は、JR横浜線に近接していることから特に慎重に工事が進められており、開通は2020年内というスケジュールだ。それまでは、法隆寺交差点側からのアクセスのみとなる。

画像7。馬場出入口に接する太田神奈川線。法隆寺交差点側を見て。

料金所は3レーンあるうちの右側のみを当面は使用し、中央は非常用

画像8。入口料金所は3レーンあり、内路側の入口アクセス路が開通するまでは左のふたつは閉鎖される。ただし中央は非常用となっている。

 馬場出入口の料金所は3レーン用意されている(画像8)。ただし、内路交差点側からの入口アクセス路が完成していないため、当面は右側レーンのみが使用されることになる。中央は、誤って進入した現金車と、ETCカードをセットし忘れたクルマのための非常用だ。

 誤って進入した現金車も、ETCカードをセットし忘れた場合も、非常用レーンに進んでインターホン(画像9)で係員と話をし、身分証明をして後日払いとすることで通してもらえる。開通直後はETC専用と知らずに現金車の誤進入が多くなることも考えられることから、少なくとも内路側の入口アクセス路が開通するまでは中央レーンを非常用とするという。

画像9。各ゲートにはインターホンが設置されており、誤進入時の対応パンフレットなども用意される予定。

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馬場出入口の建設ではどんな技術が?

コンパクトな敷地内に通すため、馬場出入口の4本の連絡路は急カーブかつ急勾配に

 続いては、馬場出入口の構造的な特徴や建設時のポイントなどについて。馬場出入口の周辺は丘陵地帯であり、法隆寺交差点側の入口アクセス路の左側は崖となっている。一方の内路交差点側の入口アクセス路のすぐ脇をJR横浜線が走っており、広い敷地を確保するのが難しい土地だ(画像10)。そのため馬場換気所の敷地も利用して、新国立競技場(約250m×約340m)の約40%(約220m×約115m)というコンパクトな敷地内に作る必要があり、入口アクセス路や連絡路が急カーブのらせん構造をした特異な出入口となったのである。こうしたらせん方式は、首都高ではC2中央環状線と3号渋谷線が接続する大橋JCTで採用しているが、出入口では初採用だという。

画像10。馬場出入口の空撮画像。広い敷地を確保するのが難しい土地で、さらにJR横浜線(画像左側)も通っているなど、制限の多い地域に建設されている。

 また首都高では、C2中央環状線の西側区間でトンネル(地下)方式の高速道路を建設した経験を持つが、これだけコンパクトな敷地で地下52mの本線へ向けて連絡路を4本も建設するのは初めてだったそうである。敷地のコンパクトさと本線の深さにより、4本の連絡路の最小曲線半径(R、※3)と最大縦断勾配(i、※4)は、以下の通りとなった。

●Aランプ(下り線:第三京浜・横浜港北JCT方面への入口連絡路):R=80m、i=7.4%
●Bランプ(下り線:K1横羽線・K5大黒線・生麦JCT方面からの出口連絡路):R=50m、i=7.6%
●Cランプ(上り線:K1横羽線・K5大黒線・生麦JCT方面への入口連絡路):R=51m、i=8.1%
●Dランプ(上り線:第三京浜・横浜港北JCT方面からの出口連絡路):R=109m、i=7.5%

※3 最小曲線半径:そのカーブ(の最も急な箇所)が、何mの半径の円の一部(円弧)として描かれているかを示し、Rで示される。値が小さいほど、急カーブとなる。
※4 最大縦断勾配:その道路(の最も傾斜の大きい箇所)が、どれだけの坂道であるのかを示した値で、%や‰(パーミル=千分率)で表される。値が大きいほど高低差が激しい。例えば8.1%の場合は、10m進んだとき、スタート地点と比較して81cmの高低差があることを示す。

画像11。料金所を抜けた先で、連絡路が別れる。左が横浜港北JCT方面の下り線へのAランプで、右が生麦JCT方面の上り線へのCランプ。色で識別できる。

 4本の連絡路のうち、最大縦断傾斜が最もきついのが8.1%のCランプだ(画像11・12)。しかし、その傾斜でも地下52mの本線までは容易に到達できないため、最小曲線半径R=51mというタイトならせんを描くことで、本線まで到達させた。Cランプは全長360mあるが、実際に歩いてみると、傾斜の度合いはちょっとした山道だ。また、先を見通せない急カーブのブラインドコーナーが続くので、安全運転を心がける必要がある。

画像12。生麦JCT方面の上り線に接続するCランプの内部にて。画像中央に見える消火設備の設置の仕方から傾斜の度合いがわかる。

画像13。第三京浜方面へ向かう下り線への連絡路であるランプA。こちらもかなりの傾斜がある。

限界ともいうべきシールド工法の挑戦が行われた

画像14。Cランプの終点。奥に見えるのがK7北線の上り本線車線。連絡路と本線のシールドトンネルは直径や位置が異なるため、接続部が一目でわかる。

 連絡路の建設にはシールド工法(シールドマシンによる掘削工法)が採用された(画像14)。その理由は、開削工法だと地上から大きく掘り進むことになり、太田神奈川線の長期間通行止めなどが発生してしまうからだ。

 今回のシールド工法によるトンネル掘削は、限界への挑戦ともいうべき条件で行われた。トンネル上端から地表面までの土砂の厚みを、専門用語で「土被り(つちかぶり)」というが、今回の最小土被りはBランプの1.3m。直径10.13~11.13m、全長10.2mの巨大なシールドマシンが、地表との厚みがわずか1.3mしかないところから発進する必要があったのだが、もちろんそれを成功させている。さらにBランプでは、急カーブ(R=50~70m)かつ急勾配(i=6.7~7.6%)が発進から約200m近く連続するため、その点もまた困難だったという。ゴールである本線との合流地点も、本線とBランプ間の厚みがわずか35cmという薄さで掘り抜いている。シールドマシンをより精密に操作することで、連絡路は完成に至ったのである(画像15)。

画像15。連絡路掘削工事の様子。本線のトンネルまでシールドマシンが到達したときのもの。

 今回のシールドマシンは、急カーブかつ急勾配に対応できるよう、中央部で屈曲できる関節構造を持っている(画像16)。また曲線を描きながら地下へ向かっていけるよう、進行方向を細かく調整できる仕組みも持つ。シールドマシン後方には複数のアクチュエーターがあり、それぞれの力のかけ方を変更可能だ。それによって、カッター部分の向き(シールドマシンの進行方向)を定め、計画通りのコースを掘っていくことができるのである。

画像16。首都高・神奈川7号横浜北線の馬場出入口の連絡路を掘削するのに用いられたシールドマシン。

 またシールドマシンは掘り進みながらセグメントというパーツをはめ込み、掘ると同時にトンネルの基礎構造を完成させていく。ただし、今回の連絡路は急カーブかつ急傾斜の部分が多いことから、カーブのインとアウトではセグメントのサイズを変える必要があった。そのため、曲線に対応可能な鋼製セグメントが使用されている。

連絡路のコーナー内側には避難用通路を用意

 連絡路の制限速度は時速40kmのだが、急傾斜であることから速度が出やすい。しかも急カーブであるため、車両が速度超過でアウト側の側壁に衝突するような事故も起こりやすい構造といえるだろう。そうした万が一の交通事故、さらには火災事故などが発生した場合に備え、連絡路には本線同様に首都高の最新消火設備が備えられている。自動火災検知器が25m間隔で設置されているほか、死角がないようにテレビカメラも備えられ、押しボタン式通報装置と非常電話、消火器および消火栓は50m間隔で設置されている。また火災事故による有毒ガスなどが発生した場合は、天井に一定間隔で備えられた排気フリューが吸い込んで床版(路面)下の排気ダクトへと排気する仕組みだ。

 そして独立避難通路は連絡路の側面に設けられている(画像17)。K7北線本線では床版下に避難空間が用意されており、一定間隔で用意された滑り台で逃げられるようになっているが、馬場出入口の連絡路はスペース的な問題でその仕組みを採用できず、側面に避難通路を設ける形となった。Cランプの場合はコーナー内側に設けられており、ここを通って地上に脱出することが可能だ。

画像17。連絡路に設けられた避難通路。Cランプの場合はコーナー内側に設けられていた。


 馬場出入口は本線が地下にあるという難しい条件に加え、敷地の制限もある中で建設された。数ある首都高の出入口の中でもほかに例のない出入口である。こうした難しい条件でも完成させられるのが日本の建設技術の高さであり、それを実感させてくれるのが馬場出入口なのだ。

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