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ライフスタイル最終更新日:2016.11.14 公開日:2016.11.14

第2回 天神様の参道で姉妹が守る梅の園 ●梅守(うめもり)

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太宰府土産といえば梅ヶ枝餅ですが、参道沿いの「梅園(ばいえん)」をご存知でしょうか。
意外にも和菓子店が少ない太宰府で、お茶の先生方も頻繁に訪れるお店です。こちらのお菓子は、正統派に見えて実はとてもユニーク。縁起のいい「うその餅」、卵菓子と言えそうな「宝満山(ほうまんざん)」。ほかにも「飛梅(とびうめ)」や「東風梅(こちのうめ)」、「宝満山御干菓子」と、甲乙つけがたい個性的なお菓子ばかり。その中で今回ご紹介するのは、麩(ふ)焼き生地にこし餡を挟んだ「梅守」です。
麩焼きに和三盆糖の蜜を塗り、グラニュー糖を振って表現したのは雪景色。中央の梅の焼印は雪中の梅を表す、静かで控えめなお菓子です。昔からの食べ応えある大きさのものと、後にお茶席用に作られた、小ぶりで可愛らしい「ミニ梅守」。食べれば、麩焼きの食感としっかり練られたこし餡とで、シンプルな作りの中にお菓子の楽しさが詰まっているようなお菓子だと感じます。

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昔ながらの単純な原材料で手作りしたい、と父の代からの店を守るのは、田崎晶子さんと森田礼子さん姉妹。田崎さんの三女の佐藤真理さんも製造に加わって、女性たちが支える賑やかな店内は、まさに梅の園といったところです。

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梅守は、菓銘が梅ということもあって、箱入りを買うと次々と梅の意匠が現れます。4個入りの手ごろな大きさの箱は、梅園の文字と梅の花、ミニ梅守の箱には小さな梅の花型のシールが貼ってあります。
蓋を開けると、明るい水色に白抜きの梅の花の柄の栞(しおり)が。一つずつ包んだ紙には、大きな紫色の梅の花がくっきりと入っています。
私はこの大振りな包みがとても好きなのですが、たっぷりとした大きさのお菓子の豊かさと、それを包む厚手の紙のバランスが何とも良いのです。お菓子が大切に守られている気がするからです。たくさんの梅に包まれたお菓子なのです。

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うその餅

こちらも名物の「うその餅」。四角く小さな求肥(ぎゅうひ)に、しその風味をつけたそぼろを纏(まと)わせ、箱にぴっちり詰めてある姿は、知っていても不思議に驚きのある姿です。
このお菓子にはおまけが入っていて、それも何とも楽しみ。福岡で知られた工芸のひとつに博多人形がありますが、その博多人形の小さな「うそ」が、和紙に包まれているのです。指の先ほどの小ささながら土の質感が良く、丁寧に絵付けされた鷽の顔がユーモラスで、お守りにしたくなるような佇まいです。鷽をお題にした川柳も入り、何かと楽しいお菓子です。
この鷽人形、新年明けて2月までは木彫りになるそうです。私はまだ土の鷽しかもっていないので、次は冬の季節に買いに行かなければ、と思っているところです。
この個性的な鷽は、太宰府天満宮の「鷽替え神事」のシンボル。1月7日の夜に木彫りの鷽を交換して、その年の幸福を祈願する催しです。「替えましょ、替えましょ」の掛け声とともに木彫りの鷽を取り替えて、これまでの悪いことをその年の吉に取り替えるんだそう。1月7日に太宰府に行きたくなりました。

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飛梅

梅園には、梅の花そのものの形をした、「飛梅」という小さな干菓子もあります。この名前、いかにも天神様らしいもの。細長い箱を開けると、ふわりと納められた包みがたくさん。二色の花型の干菓子は、お抹茶はもちろん、濃いめに淹(い)れたお煎茶によく合いました。一番長く楽しめる、太宰府らしく梅園らしいお土産でもあります。

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細長い箱のお菓子をもう一つ。一つ一つが個性的なので、梅園といえばというお菓子を選ぶのは難しいのですが、シンプルな佇まいですが、卵菓子と呼びたい棹物の宝満山は、梅園のお菓子の中でも一番個性的と言えるかもしれません。
材料は卵、砂糖、寒天、水あめと極めて単純です。しっとりと甘い美味しさのお菓子ですが、この宝満山を食べる度に和菓子の不思議を考えます。
そもそも和菓子は、小豆を中心として砂糖と寒天、あるいは米粉などの材料のバランスの違いで種類ができているとも言えると思います。和菓子の特徴は、材料の単純さと製法の工夫で作り上げられる様々なお菓子というわけですが、この宝満山のように、和菓子の領域だけに納められないようなものを知ると、お菓子の世界の果てしなさを感じるのです。
しかもさらに工夫があって、宝満山をほどよく乾かした干菓子タイプも感心する美味しさです。

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梅園菓子処

 梅園の店舗は太宰府の駅からすぐの参道にあり、梅ヶ枝餅や土産物店に囲まれています。特別に目立つというわけではありませんが、ふと見ると、入って右側に小さな床の間があり、季節毎に生けられた花と掛け軸が、じっと眺めずにいられない空間になっています。
これは田崎晶子さんが欠かさず作り続けている、お菓子を引き立てる空間です。お花と掛け軸の記録は、梅園のHP内の季節の花写真をぜひご覧ください。

ところで、お話を聞いて予想と大きく違ったことがあります。梅園の創業は戦後。この参道は歴史的建造物が多く、それに加えて梅園のお菓子が歴史を感じさせるせいか、てっきり江戸の昔から続いているのだと勝手にイメージを持っていました。ところが、約70年のお店でした。それは決して短い年月ではありませんが、お菓子の奥ゆかしさとシンプルな佇まいから来る落ち着きは、それよりずっと長い歴史を感じさせたのです。
予想が外れたこともなぜだか嬉しく、手作りを当たり前としたお店が当たり前のようにいい存在感でそこにあることで、太宰府の参道の景色がこれからも同じように続いていく安心感があります。

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毎月25日は天神様の日。今まで知らなかったのですが、25日だけはいつもの白い梅ヶ枝餅に加えて、よもぎ入りの緑色のお餅が売られるそうです。そう聞いたら、25日に行くしかありません。なるほど、どのお店でも二色のお餅がどんどん売れていきます。そんな特別な梅ヶ枝餅があったとは。これからも、つい25日に行ってしまいそうです。

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まだ日が高いうちに訪ねた太宰府も、のんびりと過ごすうちに日が暮れてきました。
九州の旅の一日、太宰府に足を向けてみませんか。

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●梅園
福岡県太宰府市宰府2-6-16
℡092-922-4058 【営】8:30~18:00
http://www.dazaifu-baien.jp/

写真・文=長尾智子

料理家。雑誌連載や料理企画、単行本、食品や器の商品開発など多方面に活動。和菓子のシンプルさに惹かれ、探訪を続けている。『毎日を変える料理』ほか著書多数。

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