札幌の町を守る巨大ダムをめぐろう!
雄大な自然、美味しいグルメには事欠かない北海道だけど、ダムも魅力的なものが数多く設置されている。有名な観光地だけでなく、ダムをめぐるドライブもオススメしたい。
●今月のオススメダム
豊平峡ダム(アーチ式コンクリートダム/北海道札幌市南区)
石狩川水系豊平川上流に1972年に竣工した、堤高102.5mのアーチ式コンクリートダム。北海道内に2基しかないアーチ式コンクリートダムのひとつで、札幌市の発展を支え見守ってきたダムである。
北海道では希少なアーチ式コンクリートダム
北海道でもダムめぐり!
札幌の市町地を流れて石狩川に合流する豊平川には、上流に2基の巨大ダムが建設され、北海道の道庁所在地である下流の町を守っている。1972年に竣工した高さ102.5mのアーチ式コンクリートダムである豊平峡ダムと、1989年に竣工し、高さが北海道で2位となる117.5mの重力式コンクリートダム、定山渓ダムだ。札幌市中心部から車で1時間ほど、「札幌の奥座敷」と呼ばれる定山渓温泉近くに設置されている2基のダムは、連携して治水と利水にはたらいているのだ。今回はその2ダムを中心に、1日で見てまわれるダムめぐりコースをご紹介したい。
北海道で最大のアーチ式コンクリートダム
札幌市内を出発し、まずは国道230号を南下。まずは、と書いたものの、この国道230号は定山渓温泉に向かっているので、あとは道なりに進めばダムの近くまでたどり着くので安心だ。1時間ほど走ると定山渓の温泉街に入るけれど、もう少し上流へ進み、その名も「定山渓」という交差点を左折、あとは「豊平峡ダム」の看板にしたがって車を走らせると、巨大な駐車場にたどり着く。豊平峡ダムは環境保護のためにマイカーで直接乗り入れができず、およそ1km手前から徒歩か、ハイブリッド電気バスに乗り換えて向かうのだ。
マイカーは進入禁止で電気バスに乗り換え
電気バスに乗って数分、長いトンネルを抜けるとそこが豊平峡ダムだ。バスを降り、さっそく堤体へ向かって高さ102.5m、昭和47年の完成以来下流の町・札幌を守っている、北海道で最大のアーチダムの迫力を味わおう。
北海道で堤高100mオーバーのアーチ式コンクリートダムはここだけ
豊平峡ダムでは6月1日から10月いっぱいまで、堤体の下の方についているバルブから観光放流を行っている。毎年夏にはこの放流の真横まで行くことができる見学会が開催され(ただし今年は悪天候のため中止)、そこで見られる迫力の光景はダムマニアでなくとも心奪われるはず。 また、ここは紅葉の名所でもあり、秋になると赤と黄色の景色に白い放流がよく合う。
見学会では観光放流を真横から見ることができる
また、建設時にダムの脇に掘られた作業用トンネルが年間を通じて気温や湿度の変化が小さいのに目をつけ、地元企業とコラボしたワイン等の貯蔵実験を行うなど、話題に事欠かないダムだ。
豊平峡ダムを堪能したらハイブリッド電気バスに乗って駐車場に戻り、定山渓ダムに向けて出発だ。定山渓の温泉町から道道1号に入り、途中の交差点を「定山渓ダム下流園地」方面へ。しばらく進むと突然目の前に巨大なコンクリートの壁が出現する光景はかなり衝撃的。
巨大だけど赤い放流ゲートがチャームポイント
ここは定山渓ダム建設時のプラント跡に整備された公園で、駐車場はもちろん、噴水や遊歩道、そしてダムの資料館もある。また、堤体の上は駐車場がないが、資料館の脇から伸びる階段を登ると高さ117.5mのダム天端に行くことができる。この階段はかなりきついけれど、全身でダムの巨大さを体感できる。
資料館は充実した展示でオススメ
苦労して登りきると公園が一望できる
定山渓ダムは高さが北海道内で2位。しかし1位のダムはほとんど通年立ち入り禁止なので、会いに行けるダムとしては道内最大である。この巨大な壁は見に行く価値がある。
最後は小樽市の水がめ
さて、札幌を出発して2基のダムをめぐってきた。このあと札幌に戻るのなら来た道ではなく、定山渓ダムのダム湖である「さっぽろ湖」の湖畔を通る道道1号を北上しよう。 2車線の走りやすい道をおよそ25km、峠を越えて小樽方面に下って行くと、道路沿いに湖が現れる。オタルナイ湖と言って、小樽市の水がめである朝里ダムのダム湖である。
峠を下ると青い湖が現れる
道道から少し逸れるとダムを見下ろす展望台がある
朝里ダムは堤高73.9mの重力式コンクリートダムで、高さと比較して幅が390mと広いのが特徴。天端から下流を眺めると、ダムの下流では道道1号が大きくループして、その先に石狩湾が広がるダイナミックな光景が見える。
ダムの上から見えるダイナミックな景色
高さと比較して幅が広いのが特徴
さて、朝里ダムを出発してループ橋を抜けると小樽の市町地も目と鼻の先だ。今回は1日かけて3基のダムをめぐるコースをご紹介したけれど、道は走りやすく(ただしスピード超過と取り締まりに要注意)、どのダムも個性的で飽きないダムばかりなので、北海道に行ったらぜひめぐってみてほしい。
今回のダムカレー
朝里ダムカレー(北海道小樽市)
カレー専門店が地元のダムをモチーフに考案した。ごはんとカレーは別盛りで提供され、自分でお皿にカレーを注ぐ、お客様参加型のダムカレーだ。チキン、ポーク、ビーフ、ラム、海老の5種類から選べる!
問い合わせ先/小樽アバンティ ℡0134・54・0141
ダム写真と文=萩原雅紀
●1974年東京都生まれ。偶然出会ったダムの魅力に取り付かれ、98年から本格的にダムの撮影を開始。以降、ライフワークとして「ダムめぐり」を続ける。著書に写真集「ダム」、「ダム2」など。ダム人気の火付け役となった。これまで訪れたダムは400か所以上。最新刊は「ダムに行こう!」(学研プラス刊)