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公開日:2025.12.24

途切れた「伏見通り」が埼玉県内で延伸! 川越街道を越え「さいたま市」まで直結する壮大な計画の全貌【いま気になる道路計画】

4車線で整備された武蔵境通りの様子。

東京都多摩地域の主要南北道路「伏見通り」を北へ延伸し、さいたま市まで結ぶ道路計画が進められている。いったいどこを延伸し、どのような道路になるのか、計画の全貌とメリットを見ていこう。

4車線で整備された武蔵境通りの様子。

文=鳥羽しめじ

資料=東京都、埼玉県、新座市、朝霞市

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多摩地域の主要南北軸「伏見通り」の現在と将来

全線開通すればさいたま市~町田市までが繋がる。

全線開通すればさいたま市~町田市までが繋がる。

東京23区よりも西側、いわゆる多摩地域と呼ばれる広大な都市域では、道路網がとにかく貧弱で、東西軸・南北軸ともに「主要幹線」が不在となっているのが課題だ。

そのなかで南北軸として存在感を発揮しているのが「伏見通り」だ。西東京市・三鷹市・調布市を4車線で貫き、多摩川を渡って稲城市へ入ると「南多摩尾根幹線」として相模原市内へとつながる、長大なネットワーク幹線となっている。「調布田無線」など複数の都道に指定され、東京都の「多摩南北主要5路線」プロジェクトのひとつ「調布保谷線」の一部として整備されてきた。

三鷹~調布の鉄道と道路が乏しい「空白地帯」において、エリア外へ出るための救世主的な4車線道路となっている。連雀通り~旧甲州街道までは「武蔵境通り」の名称でも知られており、近年開通した東西軸「東八道路」と一体となり中広域移動にも役立つ。

伏見通りの2車線区間の様子。(c)Google

伏見通りの2車線区間の様子。(c)Google

そんな伏見通りには、調布市内の中央道下~甲州街道~旧甲州街道(京王線手前)の約1kmに「2車線区間」が残されている。住宅地が密集する地域において、多摩方面~西東京方面の交通流の強烈なボトルネックとなっており、際立った大渋滞区間だ。

ここはいつ4車線になるのだろうか。実は、都市計画上は幅員18mですでに完成済みで、拡幅を行う余地は無いのだ。

しかし、東京都の10か年計画「第四次事業化計画」(2016~2025年)において、この区間は「計画内容再検討路線」にリストアップされている。前後区間との車線数の整合について、つまりボトルネックの解消に向けて、水面下で検討対象となっている。

「第四次事業化計画」は今年度で最終年のため、2026年4月からは、新たな10か年計画となる「第五次事業化計画」が発効される予定となっており、東京都は計画策定の真っ最中だ。来たる「第五次事業化計画」において、この狭隘区間の4車線化が新規決定され、そして「優先整備路線」として認定されるかどうか。それが伏見通りの将来に大きな影響を与える注目のポイントとなっている。

埼玉県内の延伸計画も進行中

埼玉県内における伏見通りの延伸計画。

埼玉県内における伏見通りの延伸計画。

「伏見通り」は、保谷の北町地区を終端として途切れているが、実はさらに北への延伸も計画されている。

ここは、埼玉県新座市と東京都の都県境であり、東京都側が「骨格幹線道路網」として整備を進めてきた一方で、埼玉県側はようやく動きが本格化した状況だ。

新座市では「保谷朝霞線」として、朝霞市では「黒目川通線」として北上し、そして志木市宗岡で県道「さいたま東村山線」(いろは通り)に合流し、「秋ヶ瀬橋」で荒川を渡ってJR浦和駅へ直結するルートで計画されている。

具体的にはどんな進展があるのだろうか。工区ごとに整理しよう。

●都県境~産業道路(野寺・道場工区)【事業化済み】
都県境~産業道路までの計2工区(約1.7km)が事業化済みだ。南側の野寺工区は用地取得が始まったばかりで、取得率は26.6%(2025年2月時点)。北側の道場工区は、測量と基本設計の段階で、2026年度から用地取得がスタートする予定だ。

●産業道路~国道254号(馬場・畑中工区)【都市計画決定済み】
産業道路~国道254号(川越街道)までの2工区(約2.7km)は、2025年9月に都市計画が固まったばかりだ。もともと幅員20mの2車線として計画されていた道路を4車線化に変更すべく、2014年ごろから計画変更の検討が本格化。2018年から基本設計がスタートして、2025年に計画変更手続きが完了した。

なお、川越街道との交差点は、現在の立体交差「榎木ガード」を踏襲し、両方向へのランプ整備などで強化が図られる。

現在は、事業化を待つのみだが、埼玉県としては「まず産業道路までの整備に注力する」というスタンスである。9月の県議会でも「野寺・道場工区の進捗を踏まえ、事業認可について検討してまいります」といった答弁があった。

荒川から浦和方面にも直結! 最後の未開通部分とは?

保谷朝霞線の完成イメージ図。

保谷朝霞線の完成イメージ図。

●国道254号~秋ヶ瀬橋(黒目川通線)【検討中】
「黒目川通り」のバイパスとなる路線で、北朝霞駅・朝霞台駅の東側からのアクセス利便性向上にも期待がかかる。建設中の国道254号「和光富士見バイパス」とも交差する予定で、東西軸・南北軸の新たなジャンクションとなりそうだ。

●秋ヶ瀬橋~荒川【検討中】
前述した2025年9月の都市計画変更にあわせて、荒川までの残り約5.2kmが「2車線道路」と明記された。しかし、詳細は決まっておらず、まだ完全に不透明な状態だ。設計検討が進めば、改めて都市計画変更が行われていくことになるだろう。

地元・朝霞市は「誰がやるのか、新座市内は県が整備するけれど、朝霞市内では県なのか、市なのか、あるいは計画廃止なのか、そのへんをまず検討しないと」という何とも言えない立場を示している。

埼玉県はというと、前述のとおり「まず産業道路までの整備に注力する」というスタンスのため、南側から順番に整備を進めていく方針が伺える。全線開通を目指す全体方針が示されているわけでもないため、目立った動きはまだ先だろう。


このように、伏見通りの延伸は、埼玉県内において南から少しずつ整備が進んでいくと見られる。まずは産業道路までの本格着工、そして川越街道までの事業化、そのあとは北朝霞駅前などと工区ごとに小刻みに検討が進むことだろう。全線開通はかなり先のことになりそうだが、長い目で注視していきたい。

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