多摩川沿いに新バイパス!「狛江国立線」計画が進行中。甲州街道の抜け道になる東西軸、どこまで完成した?【いま気になる道路計画】
東京都内で、多摩川北岸をつなぐ新たな都市計画道路「狛江国立線」計画が進行中だ。実現すれば、甲州街道のバイパスとして東西移動を担うルートになりそうだ。具体的な計画内容や、現在の進捗を見てみよう。
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約15kmにもおよぶ「多摩川沿い道路」の全貌とは
都市計画道路3・4・3号「狛江国立線」の概要。
都市計画道路3・4・3号「狛江国立線」は、多摩川北岸エリアを東西に結ぶ一連の都市計画道路だ。喜多見駅の北側、狛江市東野川の世田谷区境付近を起点に、狛江駅・京王多摩川駅・稲城IC・是政駅・中河原駅を経由し、府中市の「四谷体育館東」交差点に接続した後、「いずみ大通り」として甲州街道(国道20号)方面へとつながる。
多摩川北岸エリアは地形起伏が多いという背景もあり、住宅地が密集して東西移動が困難だ。幹線道路は甲州街道しかないため交通が集中し、慢性的な混雑が発生することで生活に支障をきたしている。
狛江国立線は、そんな甲州街道のバイパスともなる存在。世田谷区の手前から国立までを一本の道路でつなぐ壮大な計画といえよう。
府中市内の「狛江国立線」では、事業化目前の区間がある。
そんな狛江国立線は、完成済み区間、未着手区間、事業化目前の区間が混在している。未完成区間のうち、最も進展している事業化目前の区間は、「府中街道~新府中街道(鎌倉街道)」の約2.6kmだ。
同区間のルートは、東京競馬場の南に位置する西武鉄道多摩川線「是政駅」付近から西進し、JR南武線をアンダーパス。そして、サントリーのビール工場南側を経て「かえで通り」と接続した後、新府中街道の関戸橋北詰へ直結する。全幅20mの2車線道路で計画されている。多摩川から2km北側の甲州街道まで、十分な東西道路がない府中市にとって、重要な道路となる。
2023年に東半分(府中街道~かえで通り)、2024年に西半分(かえで通り~新府中街道)が事前測量着手済みで、これが順調に進めば正式に事業化され、用地取得が始まる見込みだ。早ければ2025年度内に東半分が先行して事業化する可能性もある。
各地で「優先整備路線」指定も…現在の進行状況は
狛江国立線のアンダーパスの標準断面図。上部をJR南武線、武蔵野線が通る。
さて、先述した府中区間のほかにも、複数工区で計画は前向きに進行中だ。ひとつひとつ見ていこう。
・世田谷区境~岩戸北二丁目:優先整備区間だが未着手
・岩戸北二丁目~多摩川市民広場:開通済み
狛江市役所前から多摩川堤防まで抜ける「本町通り」「六郷さくら通り」として先行開通済みの区間。そこからさらに世田谷区境へ伸びる区間が、東京都の「第四次事業化計画」において、2025年度までに優先整備すべき区間に指定されている。この「第四次」の計画期間も終わりを迎えるが、いまだ着手される気配はない。
・多摩川市民広場~和泉多摩川駅~鶴川街道:一部完成
多摩川市民広場~小田急電鉄小田原線「和泉多摩川駅」までは「桜堤通り」として、住宅地内をクネクネと抜けていく現道を拡幅する区間。「第四次事業化計画」では優先整備路線に指定されていない。
和泉多摩川駅付近から西側は開通済み。歩道と路肩が広く確保されて走りやすい道路になった。鶴川街道(都道19号)との交差点は信号すらないが、多摩川原橋を渡れば「南多摩尾根幹線」として橋本方面へ直結する便利な区間だ。
・鶴川街道~稲城IC:未着手
鶴川街道から中央道「稲城IC」を結ぶ区間。「第四次事業化計画」の優先整備路線にも指定され、2025年度を目処に事業化される見込みだったが、まだ目立った動きはない。ここが開通すれば、和泉多摩川駅から稲城ICまでがまっすぐ接続する便利な路線となる。
この区間がなかなか事業化しない背景には、ルート上に建つ「調布市立第五中学校」の取り扱いがある。調布市は「公共施設マネジメント計画」において、2030年度をめどに第五中学校の建て替えを予定しており、この道路計画を念頭に新たな学校用地の確保を含めた測量・検討を進める予定なのだ。つまり、この区間の検討は、後回しになる可能性が高い。
・中央道 稲城IC~是政:開通済み
中央道の南側を並行する区間で、約25年前に稲城大橋有料道路の関連事業として開通済み。西武多摩川線をアンダーパスし、ボートレース多摩川へのアクセス道路としても機能している。
府中区間は事業化間近! 今後はどうなる?
狛江国立線のイメージ図。
・関戸橋~野猿街道:未着手
先述した「府中街道~新府中街道(鎌倉街道)」の西側に延長する区間。野猿街道まで直結して、その先は4車線の「いずみ大通り」へ接続する。
同区間は「第四次事業化計画」の優先整備路線に指定されているが、まだ事前測量も始まっていない。最大のネックは、京王電鉄京王線「中河原駅」の南側に位置する立体交差だ。鉄道会社との協議も必須であるため、どのような形態で整備するのか決まるまで、まだまだ時間がかかりそうだ。
このように、狛江国立線は府中市内で事業化目前というところまで進んでいる。いっぽう、各地では「第四次事業化計画」の優先整備路線に指定されているものの、10か年計画の終了があと半年に迫るなか、膠着状態のままとなっている。
果たして悲願の事業化を果たすのはいつになるのだろうか。また、残る区間は2026年からの「第五次事業化計画」の俎上に載せられるのだろうか。引き続き注視していきたい。
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