宮城に新たな東西軸が誕生!?「石巻河南道路」整備が進行中。将来は石巻港~酒田港が高規格でつながる?【いま気になる道路計画】
宮城県石巻市蛇田から北村までを横断する延長約7.8kmの国道「石巻河南(いしのまきかなん)道路」の工事が本格的に着手された。この道路の概要や開通のメリット、今後の工事計画について紹介する。
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石巻河南道路とは? 石巻市を変える道路整備プロジェクト
石巻河南道路の計画平面図。
「石巻河南道路」は、宮城県石巻市蛇田から北村までをつなぐ延長約7.8kmの国道だ。石巻市と山形県酒田市をつなぐ延長約160kmの道路構想「みちのくウエストライン」の一部として石巻市区間を担う。
道路規格は区間によって異なり、東側2.1kmの「現道拡幅」区間では歩道ありの4車線、残りの西側5.7kmの「バイパス」区間では歩道なしの2車線で整備される予定だ。設計速度は両者とも60km/hで計画されている。
2016年4月に事業化に向けた調査が開始され、2020年7月には現道拡幅とバイパス整備を組み合わせたルートで進める計画が決定。2025年9月28日に起工式が開催され、工事が本格的に着手された。
石巻河南道路に期待されるメリット
国道108号の道路状況。
石巻河南道路は地域の交通・物流・救急機能を大きく向上させる道路として期待されている。
石巻では、東日本大震災後に工業用地や市街地が内陸に移転したことにより、国道108号現道が使われる機会が増加した。しかし、現道は幅員の狭い区間や急カーブ、直角交差などが点在するうえ、物流道路として大型のトラックが多く流入する。そのため渋滞や交通事故の増加、救急搬送の円滑性の低下など、新たな課題が発生した。
石巻河南道路の整備によって、道路幅が広がり車両同士が余裕を持ってすれ違える環境が整うことで、渋滞や交通事故の要因である混雑が減少し、交通流がスムーズになることが期待されている。また、国道108号の渋滞を避けようと生活道路に入る車両も減り、地域の安全性も向上する見込みだ。
さらに医療面でも効果は大きい。石巻赤十字病院や石巻市夜間緊急センターへのアクセスは、国道108号現道を使わざるを得ないが、渋滞により円滑な搬送に支障が出ている。石巻河南道路の整備により病院への到着が約5分早くなると試算されている。緊急医療は1分1秒を争うため、数分の短縮であれど大きな効果があるといえるだろう。
国道108号は幅員が狭小で、追い越しも困難であり、救急搬送時の速達性確保や患者への負担が課題となっている。
産業・物流面では、国道108号現道は石巻港などの港湾施設と内陸地域や山形県庄内地方を結ぶ路線として重要な位置づけにある。しかし、幅員の狭い区間では大型車の走行速度を落とさざるを得なかったり、小さいトラックでの運搬が必要になるなど、物流全体に時間のロスや追加コストが発生していた。石巻河南道路が完成すれば、十分な幅員によって大型車の速度低下が改善し、物流効率の向上や輸送コストの縮減も見込まれる。
加えて、災害発生時には、沿岸部と内陸部を結ぶ緊急輸送路として機能し、救援物資や救助隊の移動を支える存在となる。東日本大震災を経験した石巻市において、災害に強い道路ネットワークは地域の安心・安全に直結する重要な社会基盤といえる。
このように、石巻河南道路の整備は単に「交通の円滑化」のメリットだけではなく、医療・産業・防災といった複数の分野を支える重要なプロジェクトなのだ。
石巻河南道路の施工スケジュール
石巻河南道路の標準断面図。
石巻河南道路の工事進捗はどうなっているのだろうか。
石巻河南道路では、2023年度に用地取得が開始され、2025年度時点では19%ほど取得完了している。2025年9月28日には起工式も行われ、用地取得済みの区間から道路建設が正式にスタートすると宣言された。用地がまだ確保できていない区間も、順次取得が進められることだろう。
気になる完成予定時期はまだ正式に発表されていない。しかし、すでに工事は正式に動き出しており、地域にとって期待のプロジェクトが本格的に進行しはじめたということは間違いない。石巻河南道路の完成予定時期は果たしていつになるのか、今後のアナウンスにも注目していきたい。
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