不便な「那覇市街地アクセス」を3つのバイパスで快適に! 空港&新都心への「4車線&立体交差化」はどこまで進んだ?【いま気になる道路計画】
沖縄県那覇市の中心街は、沖縄自動車道から遠く離れており、信号渋滞などでアクセスが不便である。その課題解決のために、「那覇空港自動車道」「国道329号の高規格化」「那覇インターアクセス道路」という3つの高規格道路の計画が進行中だ。それぞれのルートと、進捗状況を見ていこう。
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不便な「那覇市中心街」へのアクセス。東西方向のバイパスが整備中!
「那覇空港自動車道」の概要。
沖縄県の主要南北軸「沖縄自動車道」は、空港や中心街のある那覇市から、宜野(ぎの)湾やコザを経て、北部中心街の名護市までをつなぐ約60kmの高速道路。本島内の周遊・物流・緊急輸送などに無くてはならない重要なインフラだ。
しかし、1987年に那覇市~名護市が全線開通したものの、「那覇IC」は肝心の那覇市中心街や那覇空港から離れた内陸部に位置している。那覇中心街にある沖縄県庁から那覇ICは約6kmも離れており、首里城のある首里地区の南端部にあるのだ。
そのため、那覇ICから各方面へのアクセス性が悪いため、空港方面は「那覇空港自動車道」、中心街は「国道329号の高規格高」、新都心方面は「那覇インターアクセス道路」と、3つの高規格道路の整備計画が進められている。それぞれの計画概要と整備の進捗状況を見てみよう。
1:那覇空港自動車道
工事が進む小禄道路。
「那覇空港自動車道」は、那覇市街を避けて南側を回り込み、南風原(はえばる)、豊見城(とみぐすく)を経て、瀬長島(せながじま)の入口付近から北上して那覇空港へ到達する自動車専用道だ。
総延長は約18kmで、那覇ICの東側に位置する「西原JCT」から海岸線に到達する手前の「豊見城・名嘉地(なかち)IC」までの12.1kmが開通済みとなっている。ここは、2008年に暫定2車線で開通した後、2015年に4車線で完成を果たした。開通により、糸満方面のアクセス性が格段に向上した。
しかし、那覇空港までは未だ繋がっておらず、那覇空港自動車道を降りた後は、国道331号を北上する必要がある。そこで「豊見城・名嘉地IC」から那覇空港に向かって整備中なのが「小禄(おろく)道路」だ。
・小禄道路(整備中)
小禄道路のルートは、豊見城・名嘉地ICから高架で海沿いまで出て、国道331号をまたいだ後に北上し、瀬長島の入口付近に「瀬長IC(仮)」が設置される。そして、航空自衛隊那覇基地に沿って北上し、沖縄都市モノレール「赤嶺(あかみね)駅」付近で「赤嶺トンネル」874mによって那覇基地の下を通過。最後に国道332号とモノレールの東側を並行して「那覇空港IC(仮)」まで到達する計画だ。
総延長は5.7kmで、国道331号「小禄バイパス」を拡幅するわけではなく、別の高規格道路として建設される。
気になる工事進捗だが、用地取得は99%でほぼ完了。懸念点となっていた米軍敷地の返還手続きも進み、あとは高架やトンネルの完成を待つのみだ。
現場では橋脚が立ち並び、橋桁も次々と伸びている。赤嶺トンネルは2022年春に上下線とも貫通済み。2025年の事業再評価でも特にコメントが無く、まさに順調そのものという状況である。
2:国道329号の高規格化(南風原バイパス&与那原バイパス)
南風原バイパスの概要。
那覇~南風原~与那原(よなばる)の主要東西軸となる「国道329号」の渋滞が激しいため、高規格バイパスによって信号交差点を立体交差で通過し、ノンストップに近い移動を可能にする事業が進められている。
また、東西軸としての機能だけではなく、那覇空港自動車道の「南風原北IC」にも直結しており、那覇ICに代わって国際通り方面へのダイレクトアクセスを担うことも期待されている。
「那覇東バイパス」「南風原バイパス」「与那原バイパス」という3つの区間で構成されており、総延長は12.7km。そのうち「那覇東バイパス」は既に完成済みだ。
・那覇東バイパス(4車線完成)
1999年に4車線で完成済み。国際通り裏の明治橋から上間交差点までの延長4.7kmの区間。その先は、那覇糸満線として那覇IC・首里・古島・那覇新港へつながる環状ルートを形成している。
・南風原バイパス(暫定2車線で開通、4車線化&立体化の工事中)
那覇東バイパスの先、「識名大橋」から東進し、「南風原北IC」につながる延長2.8kmの区間。2019年までに「真地(まあじ)交差点」から「南風原IC」までの約2kmが暫定2車線で開通した。残る識名大橋から真地交差点までの0.8km区間は、設計調査や用地買収が進められている。
暫定開通済みの区間では、4車線化&信号交差点の立体交差化、立体本線部の整備が進められている。2025年3月時点の用地取得率は86%で、東側工区では高架橋の橋桁が伸び、西側では調査設計が実施中だ。
・与那原バイパス(暫定2車線で開通、4車線化&立体化の工事中)
南風原北ICから与那原中心街を北に迂回し、「西原町小那覇」までつながる延長4.2kmの区間。2022年に暫定2車線で全線開通した。現在は西半分の与那覇工区で4車線化の調査設計等が進められている。4車線化とともに信号交差点は高架橋でスルーできるようになり、ノンストップ移動が可能となる予定だ。
3:那覇インターアクセス道路
「那覇インターアクセス道路」の概要。
「那覇インターアクセス道路」は、沖縄自動車道「那覇IC」から「那覇新都心」を結ぶ延長約5kmで計画中の高規格道路。「那覇新都心」は、「おもろまち地区」を中心にショッピングセンターや博物館、新興住宅街などが集積している。さらに臨海部は那覇新港が設置され、国際コンテナターミナルやクルーズ船乗り場を備えるなど、再開発によって都心化されたエリアだ。
現在の主要東西軸は県道82号(那覇糸満線)が4車線でつないでいる。ここは、首里~古島(ふるじま)ではモノレールが頭上を走り、高低差を一気に下るダイナミックな風景も特徴的な区間。信号が連続していることや、中長距離交通と生活交通が混在していることで渋滞が深刻になっている。
「那覇インターアクセス道路」は事業化に至っておらず、事業化への第一歩となる「計画段階評価」を国に始めてもらうため、地元・沖縄県によって整備効果や実現可能性の整理が行われているところだ。2022年には地域アンケートが実施され、8割の住民が「道路が混雑している」「病院への緊急搬送に不安がある」と回答。地域課題が浮き彫りになっている。
国による計画段階評価が始まれば、改めて地域アンケートが数回行われ、概略ルートが決定される。それを元に都市計画決定と環境アセスメントが完了すれば、いよいよ事業化を待つ段階となるのだ。
通常、概略ルートは3案程度に絞られるが、新都心~那覇ICについてはモノレールの高架があるほか、首里城公園が立ちはだかっているなど課題が多い。南側からアプローチする「那覇中環状線ルート(おもろまち駅経由)」も浮上してきそうだ。
このように那覇中心街のアクセス性を改善するため、大きく3つの高規格道路の計画が進行中だ。「小禄道路」や「南風原バイパス」「与那原バイパス」は、順調に整備が進められているので、それらが一段落すれば「那覇インターアクセス道路」にも順番が回ってくるかもしれない。バイパス整備が目白押しの那覇市の道路計画に引続き注目していきたい。
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